たけのこ@マンガライターが2023年9月に読んで面白かったマンガ!
さてさて9月です。
9月キワキワまで暑かったのに、10月はいったら朝とか急に寒くなるっていう。秋、あなたはどこへいったの……みたいなショートショートを昔、書いたことがある気がしますが、あのときよりもずっと短いですね。
ていうか秋ありました?いやマジで。かなしい時代ですね。はぁ。
気を取りなおしまして。
わたしの9月はこんな感じでした。
まとめてみると今月はアクの強い作品が多いですね(笑 いいことです(笑 では個別いってみましょー!
『サバキスタン』2巻
ロシア発のグラフィックノベルです。大好き。面白いよ。
1巻では独裁者が支配していた国サバキスタンと、その支配からの脱却をはかった人々を犬に模して描き、2巻ではそこから時代がうつってその子供たちを描く。今月発売される3巻はどのような話になってくるのか気になりすぎます。
グラフィックノベルなのでとっつきづらいと思われる方もいると思うのですが、比較的読みやすいほうかと思います。お気軽に手にとっていだければ。
独裁国家の空気がイメージ通りというか……そのお隣の国ってこんな感じなのかなって思わされるリアリティがありますし、マンガでそんな壮大な話を読みやすく描いているというのがもう稀有です。
ダメだ長くなるからこのへんにしときます(笑
3巻も面白かったら、改めてどこかでちゃんと感想書きます。
『神田ごくら町職人ばなし』
これもねーーすっごいマンガでしたよ。
江戸時代の桶屋、刀鍛冶、紺屋、畳刺し、左官などさまざまな女性の職人を描いた作品集です。
職人としてのぶつかり合いみたいな物語的な面白さももちろんあるんですけど、なによりも白眉~と思わされたのは、細かくて魂のこもった「絵」の力です。
一番すごいと思ったのは畳職人かなぁ。
畳の目のひとつひとつが丁寧に描かれていてね。写真ならパシャリととれば写ります。でも絵はひとつひとつ描かないとそこに現れませんから。それを黙々と描きこむ情熱と努力と時間。
マンガがアートと言われてもそん色のない部分がここにあるかと思います。もうこの辺の絵の力が強すぎて、ほんとうにまばゆい光を放っていたマンガだったなぁと思います。
『鬼姫神社通り商店街』
そしてこちらもお気に入りの1作。
わたしの好みの絵柄というものがありまして、それがこの鬼姫のようなかわいらしくてキャッチ―な絵柄です。この手の絵柄で攻められるとそれだけで好きっ!ってなりがちな面はあります(笑
いやでも面白かったですよ。
神様の鬼姫を主人公にして、妖怪退治と街歩きと街ブラものを足して3で割ったような感じ。たぶんこれが、妖怪退治一辺倒だとわたしはそんなに好きじゃないんですよ。いろんな要素が混在していて、その世界感を作り出しているところに魅力を感じるんです。
だから神様である鬼姫様が、女の子の姿をとってひんぱんに街に乗りだしてきていることを町の人たちは知っているけれど見て見ぬふり(知らないふり)をしている、なんてそういう設定に心がおどります。作品としての世界感の強さです。
『うどんの女』2巻
12年ぶりの新刊でした。
えすとえむ先生は好きな先生で1巻も好きでしたし、2巻も良かったです。
「うどんの女」ってなんぞ?という感じでしょう。
1巻は学食で働く年上のヒロインに恋をするひとまわりしたの男の子という恋愛ものでした。2巻ではそのふたりも描かれますが、別主人公たちの恋愛模様を主に描いている感じですね。
学食という舞台であるがゆえか「好き」を表すのに「うどん」という表現が出てくるという奇怪っぷりが面白いと思ってます(笑 いやそこまで露骨じゃないんですし、うまく言えてないと思いますけどやっぱり奇怪な設定ですね(笑
『ゆうやけトリップ』2巻
これもおひさしぶりの2巻でしたね。
女の子ふたりで街にはびこる怪談の謎を探求してまわる物語。このタテにヨコに大きく広がる空間をみせてくる街がまず魅力的。
けわしい階段がたくさんあるし、なぞの縦穴というか火口?みたいなくぼみとか。タテに空間がひろいとSFみも出ていいんですよね。そこにびっしり住宅が建っている感じとか。このへんちょっと尾道っぽいなって思います。
そんな街にはびこる怪談も、だいたいはなんでもない勘違いだったりするんです。あんまり深刻にならない、「正体見たり枯れ尾花」みたいなゆるい空気がすばらしい作品なのですよ。
『犬とサンドバック』下巻
そして下巻も出ました『犬とサンドバック』。
刷り部数かなり少なくていきわたらないかも……という懸念を先生がしていました。実際Amazonでは前日の段階ですでに品切れ状態。どんどん紙でマンガを読むということのプレミア感が高まってきています。いいことじゃないですね。
上巻から続く年の差恋愛もので、離島を舞台にしてさわやかに締めてくれて楽しかったです。結局、あんまり悪い人がいなかったのも好みでした。
いっそ映画とかにでもなれば話題になるのでしょうけど、なかなかそうも簡単にはいかないでしょうか。
『カオスゲーム』3巻
『カオスゲーム』のなにが好きって、絵が好みなんですよ。
なんというか思春期にそめ上げられたアフタヌーンの血脈とでもいいましょうか。キャラの顔も、アクションとかコマの運びかたも好きなんですよ。
この辺、いったいわたしは誰の影響を考えているんだろうか……。
安永航一郎先生とか?(笑 アフタで連載してないじゃないの(笑 あと思い浮かんだのは『GUNSMITH CATS』とかの園田健一先生とか……もしくは藤島康介先生とかのイメージかもしれません。
あの辺のイメージがなんか掘りおこされるようで好きなんですよ。いや好き、というよりかは、「すりこみ」に近いなにかのような感じがあります(笑 いや単品としてももちろん面白いですよ(笑
『金魚屋さんのかりそめ夫婦』
『ヒロインはじめました。』の天倉ふゆ先生の最新作ですね。めっちゃいいですよ。
たがいの事情でいきなり契約結婚することになったふたりのラブストーリー。なかなかに唐突とは思いましたし、事情も謎があまり氷塊されないまま進むんですけど、とにかく見た目がいい(笑 そして距離が近い(笑
わー!とかきゃー!とか言ってるうちに1巻読み終えてしまうという恐ろしい作品でした(笑
『となりの百怪見聞録』2巻
そしてわたしの推しの先生のひとりである、綿貫芳子の最新作。
初老の小説家と、デザイナーのバディによる怪異もの。がつがつ妖怪を退治して回るような感じではなく、出会ってしまった怪異にしかたなく対処する消極的な感じ。こういう消極的な怪異ものは好きな作品多いです。
具体名でいうとコミカライズされた『営繕かるかや怪異譚』とか『百鬼夜行抄』とかでしょうか。
強い力をもってやー!と妖怪を退治する感覚よりも、恐ろしいものにはなるべく触れない、できることだけやってあとは逃げる。そんな心理のほうが共感しやすいのかもしれません。
勢いで対処できないだけあって、それだけキャラクターの良さがにじみ出るということでもありますしね。好きです。
『海の向こうからきた男』
そして最後はこちら。
これはちょっと悩みましたけど、ラブクラフトの前文が入っているのがわたしに刺さったので入れました(笑
海辺の街の怪異作品。忍びよる怪異のお話です。しかも怪異は人間のかたちをしているという。ラブクラフトと直接関係はないものの、そこからおおきなインスピレーションを受けていることは間違いないのでしょう。
怪異ものの始まりとしては百点満点で、今後も気になる作品なのでここで選んだ次第であります。
というわけでの10作品でしたー!
その他
惜しくも選べなかったのは『エロ漫画家おねーさんとお疲れリーマン』と『グッドモーニングレオン』ですかね。平屋に住む話とか、往生際の悪い話とかもめちゃくちゃ面白かったのですが、新規性とかを考えて割愛いたしました。
あと着々と買い集めることにした『藤子・F・不二雄SF短編コンプリート・ワークス』はやっぱりすばらしいですね。あのキャッチ―な絵柄で、グサグサに刺さる内容。最初、子供のために……とか思って買ったのですが、ぜんぜん大人のほうが楽しめる内容です。
続きも楽しみです。
そんな感じの9月でした。
10月はどんな月になっているでしょうか。