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呪いにかけられて。【エッセイ】

私は以前も『呪い』にかけられたことがある。
その時の呪いは、「『食洗器の洗剤が入っているビン』のフタが閉められない呪い」だ。

記事探したけど出てこなかなったから簡単に説明すると、「食洗器の固形洗剤を入れてあるビンのフタを閉められない」という恐ろしい呪いである。まんまやないか。

そちらの呪いは、現在のところ洗剤の種類が固形のものから液体洗剤に変わったことによりナリをひそめた。しかしそれこそが新たな呪いを引き寄せるきっかけであったと言ってもいいのだろう。

今、私を悩ませている新たな呪いはこれだ。

「洗濯機の水道の栓が開けられない呪い」である。


◇◇◇


栓など開けっ放し、という家庭が多いのではないだろうか。
洗濯機につながっているホースの栓……つまり、これのことだ。

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我が家も昔は開けっ放しだった。
しかしある時、なんの拍子だか水漏れが発生したのをきかっけに、妻が鶴のひと声をはっする。

「やっぱり毎回、栓はしめることにしよう」

ちなみに我が家では、どちらかというとこの手の”毎回”とか”毎日”、とかの頻度で気を使うことが苦手なのは妻である。
先日もカレンダーにはちゃんと予定が書いてあるのに、その日になって予定を確認することを忘れており大慌てしたらしい。

いろんなガジェットを使って、読み上げ機能を使ったらいいのでは……とか検討をしたものの、結局、「私が毎日読み上げる」という非常に原始的な方法で解決しよう、という話になった。もちろん給料は発生しない。

とにかく、そんな自覚がある妻なので、最初から自衛策はこうじていた。これだ。

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1枚目はスタートボタン。2枚目はわかりづらいけれど洗濯機のフタである。――なるほど。スタートを押すときには、「栓を開ける」。洗濯が終わりフタを開けるときには、「栓をしめる」。どちらも必ず動線にひっかかる場所だし、理にかなっている。いいじゃないか。

自分の弱いところを自覚し、それをシステムで補おうと自己研鑽するその姿はいつなんどきでも美しい。


……しかし、現実は非情なものだった。

そう。皆さんご存じのように、そうやってタカをくくった私自身が『栓を開け忘れてしまう』、という呪いにかかってしまったのだ。


◇◇◇


忘れたからといって洗濯物がなくなるわけでもない。泥水にさらされるわけでもない。その上、うちの洗濯機はちゃんと教えてくれるのだ。「栓開いてませんよ」って。

では何が問題なのかというと、教えてくれるまでに結構時間がかかるのだ。軽く20分くらいかかるのではないだろうか。洗濯機を回したつもりになってリビングでひと段落。テレビでも見始め、興が乗ってきてすっかり忘れたころにピピーッピピーッとくるのだ。

余裕があるときなら問題ないだろう。

しかし、我が家では基本的に洗濯を回すのは夜なのだ。私が家に帰り、お風呂を終え、すべての洗濯物が出そろった段階で回しはじめ、寝る前に干してから寝るのだ。私が家に帰る時間によるけれど、その日、最後の家事が「洗濯を干すこと」であることは珍しくない。

洗濯機を回すのは、その日最後にお風呂にはいった人と決まっている。洗剤を入れて、リビングに洗うものが残っていたりすればかき集め、「栓を開けて」、スタートを押す。そこまでがひとセットだ。

必然、毎日洗濯が行われる夜のそこそこ遅い時間。そこで20分をロスされると、子供を寝かせに行く時間がずれこみ、慌てるしバタバタもする。……かといって、すでに洗い出している洗濯物。明日でいいや、と放置することもできない。

それはまさに関ヶ原を分ける20分と言っても過言ではないのだ。


◇◇◇


同じようなものでいうと、「お風呂の栓は閉まっていますか?」というあの無機質な声も、頼むからもっと早く教えてよ、となる。もうだいぶ水がムダになってるよね、と文句の一つも言いたくなる。

とにかく、「栓が開けられない呪い」にかかった私は、昨日も栓が開けられず、妻にニヤニヤされながら「開けましたけど~?」とアピールされてしまった。


――呪いだ。私は呪いにかけられている。

たまにこうして、理由もわからずできないことが発生するたびに、私は呪いのせいにすることにしている。……そこで呪いのせいにするから治らないのではないか、という現実的な反論はやめていただきたい。悩んでいることは確かなのだから。

ああ今日は栓を開けられるだろうか……
湧き出たそんな不安な感情は、お風呂に入るとどこかへ流れ出てしまうために、今日もまた栓を開けられなかったりするのだ。そう。つまりこれはお風呂のせいだ。

そういうことにしておこう。
全部、風呂のせいなのだ。

――とか言っているそばから今日は妻が栓を開け忘れのでした。ちゃんちゃん。



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