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下っ端バイトはふりまわされる【ショートショート】【#161】

「おいお前! 何枚取れたんだ! もうはじまって1時間はたってるんだぞ!」

「えっと……40枚くらいです」

「てめぇなめてんのか! 50でやっとひとつあるかないかなんだぞ! ひとつ作っても200円にも満たねぇんだ! いくつ作ったらメシが食えるか考えて手を動かしやがれ!」

「そうは言われても……」

「あ? なんだ文句でもあんのか? 言ってみろよ」

「いや……その……、下のほうの葉っぱはもう取りつくされてて、木の上のほうまで登らないとろくな葉っぱが残ってないし……」

「じゃあ登ればいいだろ? みんなそうやってるだろ? それかもっと遠くまで足を延ばすか。それくらい頭働かせろよ。バイト代もらってんだろ! なんなら丸くするほうの作業にまわったっていいんだぞ。あっちのほうが楽は楽だ。まあその分バイト代は安いけどな」

「はぁ……」

「なんだ。まだ文句あんのか?」

「いや……だって、これって、――『キャベツ』なんですよね?」

「そうだ。お前だってスーパーとかで見たことあるだろう?」

「そりゃありますけど……いやキャベツって、だってその、地面に丸く植わってるものっすよね? 木になっている葉っぱを集めて、丸い形にして、はいキャベツですって言われても……」

「お前、まったくモノを知らねぇんだな。地面からキャベツが取れたなんてのはもう半世紀以上前の話。今はこれ! キャベツの木から1枚1枚集めるの。そんでそれ丸めるの。きれいにまとまったらはい完成。それが現代のキャベツなの」

「はぁ……」

「お前がどう思ってようがかまわねぇ。けどな、いつの時代でも現実ってのはきちんと見つめねぇと痛い目にあうもんだぜ。――わかったか? わかったら早く葉っぱ集めに行きやがれ。ウダウダ言ってるとキュウリをミドリにぬる仕事にまわすからな! あっちは単調な仕事だから結構きついらしいぞ~……」




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