高慢と偏見とゾンビ【レビュー】【映画】
『高慢と偏見』という小説がある。
18世紀末から19世紀初頭のイギリスの片田舎を舞台に、論理的構成と複雑微妙な心理の精確な描出を武器に、当時の女性の結婚事情や、恋の擦れ違いを描いた高名な恋愛小説だ。
そんな真面目な恋愛ストーリーに、
『ゾンビ出したら面白いんじゃない?』
と思ったやつがいた。結果、出来たのが今作『高慢と偏見とゾンビ』という映画だ。踊らされているようで悔しいけれど、ゾンビ出したおかげか非常に面白い作品である。
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恋愛話にゾンビを出すって言っても、コメディではない。
いたって真面目だ。それに、元の小説に「ちょっとゾンビ出してみようかな?」というレベルではない。
一歩外に出れば、ゾンビが跋扈し、ロンドンはゾンビによってほぼ壊滅状態。大きな壁を作ってやっとゾンビの進入を防いでいるだけの、「進撃の巨人」ならぬ「進撃のゾンビ」状態だ。
もちろん噛まれたらゾンビになるし、ゾンビによっては結構しっかり意思があって動きも含めてほぼ人間。というかそれただの人間じゃん。。とすら感じるヤツもいる。
大筋は確かに『高慢と偏見』なのだろう。でも比率で言ったら、『高慢2:偏見2:ゾンビ6』くらいの立派なゾンビ映画なのだ。
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今作の見所を一言で言えば、『強い女性』。これに尽きる。
序盤、街の晩餐会に行く際にドレスアップするヒロインたち。コルセットを縛り上げ、髪を整え、最後にブーツと太ももに剣を忍ばせる。このシーンが、「戦うヒロイン」であることを強烈に示唆する。
そして、実際に出てくるゾンビを、ばったばったと切り倒し、殴りつけ、頭を踏みつけ粉砕する。カッコいい。とにかくカッコいいのだ。
「演技はともかく、アクションはどうしても素人っぽく見えてしまった」なんてことは、邦画ではよくあることだけど、修練の賜物だろうか、はたまたカメラワークの妙なのか。まったく素人っぽさも感じさせずカッコいい。とにかく(以下略
剣術・武術・銃と、三つとも見せ場があって、それを19世紀のイギリスの装束をまとった女性たちが、惜しみなく披露するというのは、フェチズムの最深部を、素手でつかまれてガタガタ揺らされるような感覚にさえとらわれる。
そして、そういったアクションシーンの魅力は、あくまでも上乗せであるとあざ笑うかのように、ストーリーは『高慢と偏見』に忠実に、すれ違うラブストーリーをつき進む。
流石に既に評価された作品だけあって、これもまた見事。結局ストーリーのすばらしさが最後は持っていってくれる安心感。
ああ見てよかった。まだまだ映画は楽しいなぁ。
そんな気分に浸らせてくれくれる一品だ。
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正直タイトルは、ちょっとダサいと思う(笑
いや、ダサいってゆうか『高慢と偏見』にゾンビ足したから『高慢と偏見とゾンビ』ってゆうのは痛いほどわかるんだけど、そのおかげでやたらとB級感が出てしまっているといいますか……でも、わかるよ。高慢と偏見にゾンビ足したんだもんね……うん。そうとしか言いようがないのはわかる。
原題も「 Pride and Prejudice and Zombies」だからまんまだしね(笑
でも、このタイトルだけは個人的にちょっともったいない、と思ってしまったのもまた事実なのでした(笑
強い女性が好きな人はぜひ見てみてください!!
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