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【日本の防衛力強化議論に欠けている視点。】


先週は、日本の主権および国民の生命と財産を守るための要(かなめ)である「自衛隊」について、その「成り立ち」と「あるべき姿」について、私見を述べさせて頂きました。

今週も引き続き「自衛隊」ならびに「自衛官」の内情について、自論を述べさせて頂きたく存じます。

岸田内閣はウクライナ危機と東アジア情勢を踏まえ、

「日本の防衛力を抜本的に強化し、その裏付けとなる防衛費の相当な増額を確保する」(日米首脳会談)方針を示し、来年度予算編成の骨子となる、いわゆる「骨太の方針」にも行程を明示した上で方針を盛り込みました。

そのことについては賛否を含め、
政治の場でもメディアでも、
侃々諤々(かんかんがくがく)の議論が行われておりますが、私はその議論に「大切なもの」が、欠けてしまっている事を危惧しております。

それは、

「事に臨んでは危険を顧みず、身を持って任務の完遂に務め、もって国民の負託にこたえることを誓います」

と服務宣誓をして入隊し、
日夜、日本の防衛と国民の生命および財産を守ってくれている「自衛官」の実情や、待遇も含めた議論です。

どんなにAI(人工知能)が進展しようともその技術を扱うのはあくまで「ひと」です。

同様に、どれだけ防衛装備品を増強しようとも、
いざ有事が発生した際にその装備品をオペレーションするのは「自衛官」です。

岸田内閣では「人への投資」を最重要施策に掲げておりますが、防衛費の増額を論ずる際には「自衛官の待遇」についてもセットで議論せねばならないと痛切に思います。

例えば、皆様は自衛官の「定年退職年齢」をご存じでしょうか。

「公務員の定年(原則60歳)」は、来年度から順次延長され、2031年以降は65歳となります。

【人生の大半を国民に捧げる自衛官。】

では同じ「公務員(特別国家公務員)」である自衛官の定年年齢は何歳か、といえば、

今年(2022年度)から1年延長されましたが、
2・3曹は54歳、1曹から尉官は55歳、
2・3佐は56歳、1佐は57歳です。

そう、任務の過酷さが勘案され「早期退職制」が敷かれているのです。

いくら鍛錬された肉体と、厳しい訓練を耐え抜いてきた精神力があっても、この年齢で退官前と同様の給与水準で「再就職」するのは、そう簡単なことではありません。

もちろん、自衛官にも他の国家公務員と同様に年金は支給されます。

しかし、現役の期間が他の公務員より短い分だけ、
受け取れる年金額は少なくなります。

日本の自衛隊と同盟関係にある米国の軍人は、
退官した後は「恩給」と呼ばれる特別な年金が支給され、他にも様々な優遇を受けます。

人生の大半を命を賭けて国家・国民に捧げてきた退役軍人への手厚い処遇をアメリカ国民は尊敬の念を抱きながら受け入れているのです。

【一隅を照らした議論が必要不可欠です。】

しかし、我が国の自衛官は他の国家公務員と比して、十分とはいえないのが実情です。

さらに、いまだ「自衛隊違憲論争」があります。

私の地元でも、自衛隊そして、隊友会をはじめとする有志の皆様が日々「自衛官新規募集」のために汗を重ねてくださっておりますが、かつてと比すれば新規入隊者獲得は困難を極めております。

超少子化、そしてアルバイトの時給が1000円をうかがおうかという時代に、厳しい規律と訓練が求められる自衛官(一般候補生)の新規入隊時(一般曹候補生)の俸給は16万4700円…大相撲では新弟子獲得が困難となり、外国人力士が増えておりますが、国防はそうはいきません。

国民の皆様の手で、自衛隊を国の最高法規である憲法にしっかりと位置づけた上で、自衛官の皆様に相応の待遇を保証することは、日本の「防衛力強化」にとって不可欠だと私は思っております。

一隅(いちぐう)をしっかり照らしながら、防衛議論に参画いたします。

義家ひろゆき

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