想い続けた10年に、(twilight 10th Anniversary Deluxe Edition/haruka nakamura)

twilight
①(日の出前・日没後の)薄明かり;夕方,たそがれどき;微光
③ぼんやりした意識状態

――ジーニアス英和辞典 第4版より引用

何がきっかけだったんだろう。haruka nakamuraを、そして『twilight』を知ったのは。


ただ、Amazonで収録曲を試聴した瞬間、すっかり虜になってしまったことは覚えている。自分が知らなかった音楽、知らなかった世界……。


2010年発売の『twilight』。僕が出会ったのは、2年後の2012年。オリジナル盤はすでに廃版になっていて、中古でもそれ相応の価格がした。当時学生だったぼくには、手が出せる価格じゃなかった。


どうしても欲しい、それにこのまま時間が過ぎれば、さらに高騰してしまうんじゃないか……。そんな風に足踏みしていた僕が、ある日Amazonを開いたときだった。


2013年、『twilight』のリイシュー盤発売。ボーナストラックが追加され、生まれ変わった『twilight』を、僕はすぐさま購入した。途中で途切れてしまう試聴の数十秒のその先を、やっと知ることができる……。


twilight。日没後から、夜が来るまでの時間。その時間は、1曲目の『夕べの祈り』をかけた瞬間、ゆっくり動き始めた。


以来現在に至るまで、『twilight』は世界を押し広げてくれた存在として、今も大切にしている。夜を怖いものだと思っていた僕を、「夜は優しいもの」だと教えてくれた。


そして、2020年。『twilight 10th Anniversary Deluxe Edition』発売。オリジナル盤発売から10周年を記念して、未発表曲8曲が新たに収録された。そして、2010年のオリジナル盤に付属していたアートブックも、今回追加された。(リイシュー盤は、CDのみ。)


僕は、試聴部分をくり返し聴き、いつの日かCDを手に入れることを夢見た学生時代を思い出した。『twilight』が、また新しい表情を見せてくれる。日没後の続きを、ぼくに教えてくれる……。


『twilight』には、「夕方」「たそがれどき」以外に、「ぼんやりした意識状態」という意味がある。『twilight』を聴いているときの自分は、まさしくそんな状態だ。


CDを再生し、部屋の明かりも点けず、ただ音楽に耳を傾ける。自分の輪郭も何もかも溶けていき、夕ぐれの空気と溶け合っていく感覚……。

揺らいで
浮かんで
瞬いていて
未来へ
固い手
繋いでいて

――『twilight』より引用

夜が来るまでの間、僕は思いを馳せる。


過去へ。


未来へ。


そして、現在へ。


10年前に愛したものを、今も変わらず愛していることを、嬉しく思う。

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twilight(10th Anniversary Deluxe Edition)/haruka nakamura(2020年)

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