Sleep,How long?(From Dusk Till Dawn/Quiet Moments)

1日は、夕方から始まる。と、思っている。

僕は働いているので、5時には起きて、9時半には外に出ている。もちろん、朝のだ。じゃあ、お前にとって1日の始まりは朝じゃあないか、といいたくなるかもしれない。まあ、たしかに。じゃあ、いい換えるね。僕には、1日の始まりが2つある。1つは、〇〇(本名)として。〇〇でいるときは、××であることを強要されている。(××とは? 例えば、いい子でいること。例えば、従順であること。)ゆえに、僕は日々擦り切れている。擦り切れるっていうのは、とっても痛い。だから、ずっと〇〇でいると、痛くて痛くて、涙が止まらなくなる。

けれど僕には、〇〇からふっと解放される時間がある。それが、From Dusk Till Dawn.日没から、夜明けまで。もう1つの、1日の始まり。そのときの僕は、自由だ。誰に何をいわれるでもない。誰に何を求められるでもない。〇〇でも××でもない、僕が僕でいられる時間だ。……なんていえるのは、僕が1人で生活しているからだろうけど。でも、夜はやさし。長短はあるかもしれないけど、それは平等に与えられているはずなんだ。僕が、僕になる。あなたが、あなたになる。そんな時間が、きっと。

昔から、夜が好きだった。それから、夕方も。夕方は、もうすぐ夜になることを知らせてくれるから。つまるところ、僕は夜が好き。

夜は怖い、という人も少なからずいる。その気持ちは、わからないでもない。夜っていうのは、暗いからね。暗いとね、よくわからなくなるから。昼に見えていたものも、聴こえていたものも、何もかも。だから、不安になるんだと思う。

でもさ。夜は、何も見えなくなる? 何も聴こえなくなる? そんなことは、無いだろう。夜にしか見えないものがある。夜にしか聴こえない音がある。

時々、僕は瞑想する。瞑想といっても、暗がりの中、あぐらをかいてじっとしているだけなんだけど。でも、それで充分なんだ。夜が内包しているものを感じ取るには。それをいい表すのは、ちょっとむつかしい。だから、ここに記すことはできない。けれど、そうするまでもないかもしれない。なぜなら、夜はすぐそばにいるから。僕には僕の、あなたにはあなたの。だから、今日気付かなかったとしても、また明日、きっと会えるよ。そのときは、ようやく会えたねって、接吻すればいい。そうすれば、あなたは『あなた』に戻ることができるはずだから。

夕ぐれから、夜が明けるまで。
僕が、僕になる。
あなたが、あなたになる。
From Dusk Till Dawn.
夜は、やさし。


註:「夜はやさし」は、F・スコット・フィッツジェラルドの長編小説。

From Dusk Till Dawn/Quiet Moments(Various Artists)(2014年)

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