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「ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね」

11/21。

5:30起床。

天気は晴れ。





昨日何をしたのか、一つ一つ思い出してみる。まず、直近の記憶。昨晩の夕食は……何だったっけ? ほら、もう思い出せない。


完全に忘れてしまったわけじゃない。ただ、思い出すのに時間がかかるだけ。それはそれで、ぼくを不安にさせるけど。(ちなみに、昨晩の夕食を思い出すまで、15分かかった。)


ぼくは、少々忘れっぽい。


元々そうだったわけじゃない。色んな薬を飲み始めてからだ。まるで、フリスクみたいに。


それは、主治医の先生に相談したときに発覚した。


「おそらく、この薬のせいですね」


先生はいった。


「この薬には、忘れっぽくなる副作用があるので」


その薬を処方されてから、もう何ヶ月も経っていた。「処方する前に、説明してくれてもいいじゃないか……」とふてくされたけど、「じゃあ、無くしてください」とぼくはいった。


たしかに、その薬を飲まなくなってから、記憶力はそれなりに戻った。本当に、薬のせいだったのか……。自分が薬にコントロールされていることを、いやでも実感した。


けれど、その薬が処方されなくなってから、不眠がひどくなったので、結局また飲むことになったけど。そしてぼくは、健やかな眠りと引き換えに、記憶力を少し失った。


日常生活に支障が出るほどじゃない。でも、楽しかったことも悲しかったことも、すぐに思い出せないのは、ほんの少し寂しい。


「しょうがないよ」


”ぼく”は、ぼくにいい聞かせる。


「これがないと、生きていけないんだから」


ぼくは、その度に”ぼく”に訊き返す。


「本当にそうなのかな」


”ぼく”は、何かをこらえるように唇を噛む。


「本当に、そうなんだよ」


本当なのかどうかは、ぼくにもわからない。でも、薬を飲まないと、また不眠になることはたしかだ。


ぼくは、少々忘れっぽい。日々、色んなことを忘れていく。でも、完全に忘れてしまうわけじゃない。ただ、思い出すのに時間がかかるだけ。それだけなんだ。


そもそも、全てを覚えておくことは難しいんだ。自分が大切だと思ったことだけ、忘れずにいればいい。だから、大丈夫。大丈夫……。


この日記も、ぼくの記憶の一つだ。「毎日書いていて、よかったな」と思うよ。


そして、これを読んでくれている君にも。ありがとう。





「僕だけが、鳴いている」


これは、
ぼくと、ドッペルゲンガーのドッペルさんの話。


連載中。


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