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ボクは動物ではありません。架空動物です『ポニイテイル』★49★

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少女はほのかな白色の光で目を覚ましました。

「こんばんは、あどちゃん」

それはとても不思議なひびきの声でした。
小さな馬が1頭、目の前にいます。からだが雪のように白く、たてがみとしっぽとひとみの色が金色でした。この学校で会ったおぼえがまったくない子馬です。

学校にはたくさんの種類の動物がいますが、じっさいに動物が人間に話しかけてくるなんてことは、当たり前だけど一度もありませんでした。

「よく眠っていましたね。冬眠しているのかと思いました」

今は夏なのに。子馬なりの冗談でしょうか。目の前にいる子馬の口はまったく動いていません。空はすっかり暗く、バルコニーには金色のしっぽを持つ子馬のほかに、生物の姿はありませんでした。ただ白い子馬の体だけがほのかに明るくて、まわりをやさしく照らしているばかりです。

「キミが、ウチに話しかけているの?」
「そうです。ボクが話しています」

そうですと返事をしたはずの子馬の口は、やっぱり動いていなくて、その金色のひとみはデッキチェアに寝そべる少女ではなく、バルコニーのはしにあるジャンプ台の方へ向けられています。顔がこっちを向いていないし、口も動いていないのに、話かけられているというのは、とてもヘンな感じがするものです。
あどの口をついて出たのは、まるでプーコみたいな質問でした。

「動物なのに、話せるの?」
「ボクは動物ではありません。架空動物です」
「カクウ動物?」
「はい。架空動物は子どもと頭の中で話をすることができます。とくに空想が得意な子とは、話がしやすいのです」
「がっかりする前に先に聞いておくけど、これは……夢?」
「夢ではありません」

ポニイは小さくクビをかしげました。
あどはデッキチェアから飛びおりました。ポニイの金色の尾が左右にゆれています。

「頭、なでていい?」
「どうぞ」

12歳の少女がなでると、子馬は長いクビをぐんとうしろに向け、その目をじっと見ました。

「ボクはユニコーンの、ユニです。よろしく、あどちゃん」

その金色のひとみは、金貨のようにピカピカ輝いていました。


『ポニイテイル』★50★につづく

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