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ペガサスが部屋にやってきた!『ポニイテイル』★56★

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窓の外の空は青すぎるんじゃないかと不安になるほど青く「もうすぐ夏休みだぞ! 夏休みが勝負だぞ!」とプレッシャーをかけられているようなまぶしさでした。

今ごろあどちゃんは何をしてるかなぁ

日曜日。こんなにいい天気。
朝早くから始めた受験勉強は計画通りに進んでいて、お昼ごはんを食べ終えたプーコは、午後の勉強にそなえて1時間だけ部屋のベッドで昼寝をする予定でした。

「明日、学校どうしよっかな」

これまではあえて時間を気にしなかったけれど、受験までの勉強の計画を細かく立ててみると、学校でぼんやりしている時間が急に惜しくなってしまったのです。あどちゃんにはホント悪いんだけど、あのデッキチェアに寝ころんでいくら西の空を眺めていても、合格する自分の姿なんてちっとも思い描けない。

プーコが目覚ましをかけ、ベッドに横になり、流れる雲を眺めていたときのことです。窓から部屋の中へ入道雲のように白いクビが、ニュウッとさしこまれました。

「はぁ、はぁ。プ、プーコだな、やっと見つけたぞ!」

とても不思議な声でした。耳を通らず、頭の中で直接鳴りひびきます。乱暴な言葉づかいのわりに、高くてかわいらしい子どもの声——なんと、2階の窓から部屋へ、いきなり子馬が入ってきたのです! その胴体は雪のように白く、たてがみとしっぽとひとみが銀色でした。学校にはたくさんの馬がいますが、こんな種類の馬はプーコは一度も見たことありません!

「ボクにしては、ふぅ。キミをさがし出すまでにずいぶんと時間がかかっちゃったな……いったい今は、何年何月何日何曜日、何時何分何秒だい?」

プーコはいきなりのことに声が出ず、カベのカレンダーを指さしました。過ぎた日にちには赤のマジックで、×じるしをくっきりつけているのです。

「7月4日か。ふふん。まだまだダイジョウブだな」

子馬はぐるりと体を回し、プーコに背を向けました。プーコの目は子馬の白い背中に釘づけになりました。その馬の背中に銀の翼をみとめたからです! 背に翼を持つ馬ときたら……そう、ペガサスです。 

ペガサスが部屋にやってきた!

扇風機がウーンという音を立てています。

毎年のことだけれどプーコの誕生日の前後は暑いのです。今年は難しい勉強をしているので、なおいっそう暑く感じられます。扇風機の風が子馬にあたると、子馬はいきなり扇風機に前足をのばして、回転するファンの部分に足を入れようとしました。

「あぶない!」

プーコはベッドから跳ね起き、あわててペガサスの前足をぎゅっとつかむと、ペガサスは「いたい、いたいよ! はなして!」と、口を動かさず、悲鳴をあげました。

「キミ、さっきから、動物なのに、なんで話せるの?」
「いたい、いたいよ! もう!」

そう言う子馬の口は動いていなくて、プーコの手をふりほどいたその子馬の銀色のひとみは、扇風機の次に遊ぶものはないか探しているようでした。

「キミは……いったい……誰?」
「え? ボクのこと知らないの?」
「ぜんぜん知らないけど……ゴメン、前にどこかで会ったかな?」
「おかしいな、架空動物の世界でボクはメチャメチャ有名なのにな。しかたがない、出会った記念に特別に教えてあげよう。ペガ。銀色の翼を持つペガサス、ペガさ!」

出会ったときに自分の名前をいうのは当然のような気がしましたが、おこられそうなのでプーコは黙っていました。ペガは前足を2本あげて後足だけで立ち上がり、翼を大きく広げてポーズをつくっています。

「カッコイイ?」


『ポニイテイル』★57★へつづく

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