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13歳、懲役6年。-第11話-

〜いざ高校寮へ〜


 ついにその日は来た。待ちに待った寮引越しの日だった。
 わたしが高校に上がると、ノジマはいなくなっていた。
 高校の寮監は、中学の寮とのバーターだったり退職だったりで三年間でちょこちょこ代わった。しかし総じて言えることが、寮監が少し優しくなっているということだった。
 (その当時は気づいていなかったが、中学生に対しては、中学生に必要な指導の仕方や加減、高校生には高校生の見守りや、主体性の尊重などを重視した指導法があり、寮監はそれを完璧にやってのけていたのだ。)


 ルールが緩くなることは無いが、できることが増えた。給湯器が設置されており、集い後にラーメンや焼きそばを食べることができるようになったのだ。また一階ラウンジには大学や受験情報収集のためのパソコンがあり、休みの日は動画なども観ることができた。



 そして中学との大きな違いが、個室で学習することができるのだ。あの殺伐とした白が基調な学習室に行く手間も、真冬の道中の寒さも、高校からはしなくてよくなったのだ。(これはでかい。)
 個室学習時は、手元を教科書や参考書で見えなくして、部屋を跨いでオンラインゲーム対戦をしていた。なにより自分の部屋にいられることが一番だった。



 また高校寮には独自の遊びの文化があった。ワンハンドキャッチと呼ばれる単純なキャッチボールだ。
 毎晩夜の集い後に、ラウンジに集まり輪になって行う。コートはラウンジの4畳サイズのカーペット。そして、使うのはボールではなく、とてもリアルで実寸台の心臓のスポンジ質の模型だ。(なんである?)
 ワンハンド、つまり使えるのは利き手と逆の手のみで、下投げのみのパス回しだった。わたしたちはその心臓一個だけで毎晩汗をかくまで遊んだ。




 消灯時間もかなり伸びて、皆集い後も11時くらいまでは、ラウンジでラーメンを食べたり、テレビを見たり、ワンハンドキャッチをしたり、喋ったりしていた。


 しかし寮監の中身が変わった訳ではないので、ゲームやケータイなどの違反物持ち込み、寮規則違反は、より厳しく取り締まられていた。

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