咲かざる者たちよ(第二十九話)
気づけば夜が更けていた。喜多山が遺した手帳を読み終えたヤエは、立ち上がって伸びをし、窓に近づいた。ヤエはつい数時間前に喜多山が亡くなったことが、信じられなかった。切なさが疲労感となり、窓に映る自分の顔に浮かび上がっていた。ヤエは、雪が降り積もりうっすら白くなった道を見て、父を想った。父が他界したのは三年も前の出来事であるにもかかわらず、それが喜多山の死と重なり、悲しみが鮮明に蘇った。無性に母の顔を見たくなったヤエは、階段を静かに下りて一階へと向かった。そこには雑誌を広げたま