見出し画像

オンラインハンズオンセミナー開催の裏側その2~方針転換編~

前回のその1は沢山の「スキ」をいただきありがとうございます。
閲覧数との比率としては非常に高く、少しはお役に立てたのかもしれないと思っております。
この記事から読まれている方は、続きとなりますのでよろしければこちらからどうぞ。

前回はイベント開催の準備として共催、講師、会場探しを経て、イベント集客ページを公開したところまで書きました。こちらが実際のイベントページです。

イベントページの冒頭にも書かれている通り、このイベントは当初オフライン=通常のハンズオンセミナーとして予定していましたが、途中でオンライン開催に切り替えたものです。
ちなみに「ハンズオンセミナー」というのは、「hands-on」つまりキーボードに手を載せながら、実際の操作をしてみながら学ぶ、IT系のイベントでは比較的ポピュラーな形態です。

イベント公開を行ったのは2月14日。開催日が3月7日なので、通常の公開よりも大分押していましたが、それでも公開日から1週間で応募は29名と定員をほぼ満たす勢いで埋まりました。そのうち10名はスタッフでしたが、スタッフを除く定員は20名を予定していましたから、残席1というところまですぐに埋まったのは、RPAという旬を捉えたテーマだったのだと思います。

一方で、社会情勢は日に日に不穏さを増していきました。そしてとうとう、2月26日には開催地である北九州市の方針として「市が主催するイベントは原則延期、市以外が主催するイベントについてもイベントの特性を踏まえ、中止または延期を検討」という方針が示されました。

今回の記事では、どの様な検討を行った末に「北九州初のオンラインハンズオンセミナー」を開催するに至ったかを紹介します。

開催地である北九州市の方針への準拠

今回のイベントで最優先で考慮すべきは参加者の安全確保です。それに加えて、北九州市に共催をいただいている以上、市の方針には最大限の配慮が必要と考えました。これはおもねるという事ではなく、行政は行政として参加者の安全安心を第一に考えている中で出された方針である以上、万が一の事態を招いてしまっては共催に応じていただいた担当者に迷惑をおかけするのは申し訳ない、という事もあります。
北九州市の方針と示されていたのは前述の通り「市以外が主催するイベントについてもイベントの特性を踏まえ、中止または延期を検討」ですが、より詳細に言うと以下の通りです。

検討に当たっては、イベントの特性から考えられるリスクの度合いや
安全対策の実施の可否等を踏まえた上での検討を要請。
・参加者の特性(高齢者等が占める割合が高い 等)
・会場の状況(屋内外、開催時間、規模、緊密度、ビュッフェ形式の
会食の有無 等)

一つ一つ見ていくと、「参加者の特性」については問題ないように思えました。IT系のハンズオンセミナーという事で、元々ノートPCを持込にしていたこともあり、高齢者の占める割合は低いものと予想されましたし、結果的にも平均年齢は(見たところ)30代前半~中盤くらいだったと思います。
次に、会場の状況としては、屋内のイベントスペースでキャパシティの半分程度、という事はありつつも「間違いなく大丈夫」とは言えないと考えました。少なくとも、イベント終了後の懇親会は中止とせざるを得ないと判断しまし、また、オンライン開催への切り替え検討を進めることとしました。

オンラインの方式について

オンライン開催と言っても、実際のところは色々なパターンがあります。
①主催者もスタッフも講師も参加者も個々に参加する完全オンライン形式(Web会議方式)
②主催者・スタッフ・講師は会場にいて参加者のみオンラインから参加する形式(ウェビナー方式)
③主催者・スタッフは会場にいて講師と参加者はオンラインから参加する形式(オンライン中継方式)

当初は②の形式で検討を進めることとしました。理由としては、オンラインイベントとしては過去経験がないハンズオンセミナーでもあることから、主催者・スタッフ・講師の意思疎通が図りやすい形式を選ぶことでリスクを軽減するためです。いきなりスタッフも含めて全員オンライン、というのはハードルが高すぎると感じましたし、講師のサポートも現地なら柔軟に対応できるのではと考えたのです。
とはいえ、スタッフも有志でお手伝いいただいている方々なので、その手当として「マスクは主催者側から配布」という形にしました。

この方式を基本方針として、3者いる講師(北九州市・福岡管区気象台・UiPath株式会社)に打診したところ、当初は全てOKをいただき、一安心。
…が、日が進むにつれて、状況は悪化していきます。
まず、UiPath社からは「社の方針として、イベント参加は延期もしくはオンライン参加」と連絡がありました。福岡管区気象台からは「オンライン参加も検討したいが、環境が整わない場合は動画提供とさせてほしい」という連絡がありました。誤解の無いように明記しておきますが、それぞれの担当者はとても協力的で、一度引き受けた話は何とか進められないかと、誠実にご対応いただきました。その中で情勢にあらがってコンプライアンスに反してでもお願いする、というのは主催者としては要請できるものではありませんでした。

結果としては、上記の②と③の中間、講師の一人は現地、一人は中継、一人は動画配信と、三者三様、そしてその後にはグループワークも控えているという、オンライン方式としてはテンコ盛りでハードルの高い道となったのです。

オンライン開催のツール

これは元々、使用経験もあった「zoom」一択でした。zoomの特徴は下記サイトに詳しいのですが、大きく7つの特徴があります。

その1:1クリックでつながる
その2:1クリックで録画できる
その3:接続が安定している
その4:50人まで同時接続可能 (※現在100人まで同時接続可能)
その5:ブレークアウトルーム
その6:スマホからもつながる
その7:ものすごく多機能で使い方無限大

特に「その5:ブレークアウトルーム」機能の効果は他のツールとは一線を画しています。
どの様なものかというと、簡単に言えば「オンラインミーティング上でグループワークが可能」という事です。(詳細は下記サイトをご覧ください)

今回のイベントがハンズオンセミナーである以上、スタッフ=サポーターによる支援が必須となります。この時に全員が閲覧しているオンライン画面で個別のやり取りを多対多で行うのは現実的ではなく、少なくともスタッフ一人に対し参加者が複数名、という形は取らざるを得ませんでした。(当初はメインルームと1対1のサポート部屋みたいな形で分けようと思っていましたが断念しました。詳しくは後述)

また、zoomは無料利用の範囲でも非常に高機能ではありましたが、多人数の接続では40分の制限があり、有料版を選択しました。有料版の機能としては、時間制限の解除だけではなく、参加者のマイク一括ミュート設定/解除をはじめ、オンライン開催で必要となる機能が多く備えられているので、強くお勧めできます。無料版で何とかならないか、と考えていた時期もありましたが、今では有料版にしてよかったと心から思います。

参加者への事前確認・準備呼掛け

元々ノートPC持参としていたものの、オンライン開催のためには参加者の自宅等にインターネット回線があることと、パソコンにマイクとカメラが備えられていることが条件となります。また、zoomと、ハンズオンで使うRPAソフトウェア(UiPath)は事前に準備しておいていただく必要がありました。

これらの条件にも強弱はあり、zoomを使う以上マイクとカメラは必須でした。一方、インターネット回線は、途中でオンラインへ変更するというこちらの都合ですので、何とかならないかと考えた結果、「感染症拡大予防が出来る人(マスクが準備出来る等)のみ当日現地参加可」としました。この検討結果として参加者に示したのが以下のフロー図です。

RPA活用オープンデータハンズオンセミナー開催に向けて

更に、当日の午前中に事前の接続確認の時間を設けるなど、その他の連絡事項も資料にまとめ、申込者に共有したのが以下です。

イベント会場のインターネット回線帯域

主催者・スタッフは現地に集まる、という方針にした中で懸念したのが「同じ会場からWeb会議につないで大丈夫か?」という事でした。
当然のことながらWi-Fi回線は共有ですので、場合によってはスタッフ側の声が聞き取りにくいなどの事象が発生するケースも想定されます。
この点は会場提供いただいたCOMPASS小倉のスタッフとも確認を行い、講師用の優先接続PCを貸し出していただいたり、Wi-Fiルータの仕様を再確認いただくなど、最大限のサポートをいただきました。

4回にわたるリハーサル

ここまでの検討で概ねの環境は整えられる、という机上の空論は成り立ちましたが、本当に当日上手く行くかはやってみなければ分からない、という心配もあり、都合4回にわたるリハーサルを実施しました。

1回目のリハーサルはスタッフメンバー内の数人だけで、主にzoomの使い方に関する検討を進めました。この中では「オンラインのハンズオン形式だとオフラインのハンズオンと違って逐次サポートが難しく、”シナリオの一通り説明”⇒”自習時間”の繰り返しにせざるを得ない」というのが分かりました。

2回目のリハーサルは実際のハンズオン講師を務めていただくUiPath様とのリハーサルで、1回目のリハーサルのフィードバックと、当日の流れの共有を行いました。

3回目のリハーサルは、UiPath様からハンズオンシナリオ(資料)をいただいたうえで、実際に自分たちで予習してみる、というのを、私が別に主宰している「SaaS研究会」のもくもく会の中で実施しました(もくもく会の参加者が今回のイベントのスタッフメンバーだったという事もあり…)。資料に沿って予習してみたものの、RPA未経験者には結構ハードルが高いというのが分かり、質問が多数出ることが予想されたため、当初考えていた「メイン部屋+1対1のサポート部屋」という方式は断念し、スタッフメンバー1名に対して3名程度の参加者を割り振る。さらには参加者の属性(プログラミング経験者or非経験者)も事前に情報収集することでバランスよく割り振る、という事にしました。

4回目のリハーサルは、スタッフ全員に無理を言って当日開始の1時間前に来ていただき、実際の会場での通しリハーサルを実施しました。同じ会場にいてWeb会議をするからには声の混線がありそう、という事で「ヘッドセット持参推奨」とはしたものの、振り返ってみると持っていない人の分は主催側で用意しておくべきレベルでした。どうしても盛り上がってくると声は大きくなりがちで、ヘッドセットではなく通常のPC内蔵マイク/スピーカーだと離れて座っていても他スタッフの声を拾ってしまうケースが多々ありました。(特にハンズオンの自習時間)

増えていくキャンセルと、新規申し込み者

これは検討事項ではないのですが、オンラインの方針を示した後にキャンセルは続出するであろうことは予想していたものの、新規参加申し込み者が増えたことは非常に興味深かったです。
北九州市開催にもかかわらず、福岡市や大分県、遠くは関東からの申し込みもありました(関東の方は前日キャンセルになりましたが)。会場キャパシティの制限がなくなったことにより定員を少し増やしたのですが、結果的には当初の定員よりも数割増しの参加申し込みがありました。ちなみに今回のイベントの統計は以下の通りです。

画像2

キャンセルの様子は見えないのですが、オンライン開催方針を打ち出した2月29日以降も継続的に参加申し込みがあることが分かります。

オンライン開催の検討を振り返って

振り返ってまとめてみると、情勢に翻弄されつつ何とか前に進めてきたなぁ、というのが感想です。終わってみてから振り返る分には良いものの、開催前は「これが終わったら俺、検討内容をnoteにまとめるんだ…」とか死亡フラグを立てていました。

今回の情勢により別な立場で企画を進めてきたイベントは中止になったのですが、こちらのイベントは何とか開催出来て、スキルアップをさせていただいたのは間違いありません。これも理解を示していただいた共催・後援・協力の皆様、強引なお願いにも対応いただいたスタッフの方々、方針転換にもかかわらず参加いただいた皆様のおかげと、あらためて感謝します。

恐らく今、日本全国で(もしかしたら世界中で)「今度やろうとしていたこのイベント、オンラインに出来ないの?」という無茶ぶりを受けている現場の方の一助になればと思います(出来れば無茶ぶりする方にも見ていただき、気軽に言わないでほしいなぁ、というのが本音です(;^_^A)

さて、今回の記事はオンライン方針転換に伴う検討事項でしたが、次回は当日の実際の様子や、終わってみての振り返りなどを共有できればと思います。なるべく早く書こうとは思っていますので、少々お待ちくださいませ。

この記事が参加している募集

イベントレポ

いただいたサポートは、地域の課題をITの力で解決するITコミュニティ「Code for Kitakysuhu」の活動や、北九州市内のテイクアウト情報を提供するサービス「北九州テイクアウトマップ」の運営に充てさせていただきます。