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蜜と毒

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世界は、甘くそしてときに毒がある花のよう。 わたしが見えた世界を、そのときの感情に乗せて文章にしています。
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自分の芯に触れるとき

自分の芯に触れるとき

真冬の寒空の下で雪がしんしんと降る季節になった。
現実世界から隔離されたような、世界にたったひとり自分しかいないのではないかと錯覚するような、そんな静かで厳かで、まるで自然の牢獄に閉じ込められたような感覚になる真冬の夜に、わたしは自分自身に出逢った。
その時のことを徒然なるままに書き記そうと思う。

息が凍り皮膚に痛みを覚えるほど凍てつく真冬の夜に、わたしは失恋をした。
真冬の寒い夜に別れ話をしな

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明日への願い

明日への願い

明日がやってくることは、本来奇跡なのだと思う。

遙か昔、家を作る技術がなかった時代には、動物に食べられたり寒さや暑さで死ぬことがきっとあったのだろう。
怪我をしても治す技術がなかったり、病気や感染症に罹患しても治す技術がなかったりして、生き延びられなかったこともきっとあったのだろう。
詳しくは知らないけれど。

現代でも、風邪をひいて高熱を出して寝込む夜や、嘔吐で苦しんでいる夜や、手術をした日の

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夏の終わりに空舞うこいのぼり

夏の終わりに空舞うこいのぼり

祖父が住む街がダムで沈むという話を聞いたのは、10歳頃のときだったように思う。
炭鉱の街で昔は多くのひとで栄えていたようだ。そのときの面影が残る町には、昭和の面影が残る木造の古びた住居が多く残されていた。
ひとはもうほとんどおらず、過去の思い出の中で生きる廃墟がひたすらわたしを儚い気持ちにさせる。
なつかしの昭和というDVDを実習先で観たときに、父がここでこのような環境で育ったのかと思ったら不思議

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交差する場所

交差する場所

どんなときにしあわせを感じるのか、わりと真剣に考えてみた。
たとえば、好きなひとから唐突に元気?とか会いたいというメッセージが来て嬉しくなったとき、こどもの寝顔をみてほっこりしたとき、うまくいかないかもしれないしわかってもらえないかもしれないと悲観していたことが始めてみたら案外うまくいってほっとしたとき、失敗してひたすら落ち込んで無力感に苛まれて殻に閉じこもっているときに、その失敗したできごとが実

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