民泊の増加は家賃上昇、地域経済の衰退を引き起こす?―ハワイの民泊と地域経済へのインパクト#1

 このシリーズでは、ハワイの住宅問題/家賃高騰問題に関して取組む団体、Hawaii Apple Seedによる、バケーションレンタルの家賃及び地域経済に関するレポート(2018年3月22日公開)を紹介する。

ホームレスの多いハワイ

 観光ガイドブックのイメージからは想像できないかもしれないが、ハワイのまちを歩くと、ホームレスの姿を見かけない日はない。というよりは、もはや風景の一部である。実際のところ、ハワイは人口あたりのホームレス人口が米国内一と言われている。2016年ごろからワイキキではホームレスの締め出しが始まり、観光客が集まる地区においては、少なくとも目立たなくなってきたかもしれないが、その居住地域が少しずつ西のチャイナタウン寄りになってきているという噂も聞く。(チャイナタウン近くにはホームレスシェルターがある。)

 ホームレスだからといって収入がないわけではない。私の過去の職場はまさにホームレスシェルターの眼の前にあったのだが、朝7時半ごろに出勤すると、作業着や蛍光色のTシャツ(ハワイの工事現場作業者の典型的なユニフォームだ)を来た人々が迎えのトラックを待っていた。ホームレスには家族もいる。このような家庭の子どもたちはビーチから学校に通っていたりする。ホームレスとは、お金がないことではない。「(家と公的に認められるような)家がない」ことなのである。
(近年ではホームレスよりも、ホームレスネス:Homelessness=家がないこと、その状態、という単語を使うことが多くなってきた。)

上がり続ける住宅コスト

 ホノルルの家賃上昇は著しい。私が滞在していた2010年にはワンルームで1月の家賃の相場が$600~900(約6万~9万円)という感覚だったものの、2012年あたりからは$800~1,200かそれ以上(約8万~12万円)というように変わってきている。ワードやカカアコ地区における大規模な開発やモノレールの建設を見込んだ駅周辺の再開発、アラモアナショッピングセンターなど周辺のコンドミニアム開発等、色々な要因が考えられる。実際ハワイに行けば、開発が進み、以前はなかったような高層建築が次々と姿を表していることに気づくだろう。

 住宅はどんどん建設されているわけであり、供給数が足りないから家に住めないというわけではない。単純に住める価格の家の供給が足りていないのである。現在増加している住宅やコンドミニアムの殆どは富裕層向けであり、ハワイの多くの人々にとっては手が届かない価格に設定されているのだ。買い手は、ハワイ内の裕福層はもちろん、州外(あるいは国外)の人々である。投資目的、別荘、そしてバケーションレンタル用の物件として購入されているため、高く売れるのである。そして、その価格は市場価格となるため、もちろんその周囲の地価や家賃も上がっていくこととなる。

今回紹介するレポートについて

 今回紹介するレポートはその中でもバケーションレンタル増加の影響について報告したものである。バケーションレンタルのバケーションレンタルは、主に個人が短期間のみ物件をレンタルする(バケーション:休暇の間だけの仮住まい)ということだ。日本では「民泊」と行ったほうがわかりやすいかもしれない。

 このレポートを作成したHawaii Apple Seedは、ホノルルを拠点とする社会的平等のために活動する団体である。住宅問題は現在の主なトピックの一つであり、これまでも度々シンポジウム等を行っている。レポートの内容は以下のようなものである。

・ハワイにおける住宅事情
・必要な人に住宅が供給されていない
・ハワイの経済的困難
・ハワイにおけるバケーションレンタル物件(VRU)の現状
・経済へのネガティブインパクトとは
・マウイにおける例
・他都市におけるVRU規制状況
・提言

 それでは、次の記事からレポートの中身を見ていこう。

>次の記事:旅する楽園、住む地獄

※Youtubeビデオは参考まで。ただし、この動画の中で紹介されているワイアナエのホームレスコミュニティの話は面白いし、まさに「仮設」コミュニティだ。(彼らは屋根を持つし、区画を持っているが、こういうのは「家」とみなされていないところもまた面白い。)このワイアナエの例はハワイの歴史的な土地との関わりと、ネイティブハワイアンとホームレスネスの問題をも示唆している。(ハワイのホームレスの3分の1はネイティブハワイアンだという)。この話はまた別の機会に。


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