一日一句【菜根譚】#22 『寧空勿溢,寧缺勿全』過剰を避け、節度を保つ
《菜根谭》の「寧空勿溢,寧缺勿全」は、過剰を避け、節度を保つことを重んじる哲学的な概念です。このフレーズは、次の2つの部分に分けることができます。
「寧空勿溢」:空であることを選び、溢れることを避ける
「寧缺勿全」:不足であることを選び、完全であることを避ける
「空」とは、物理的に空であることを意味するだけでなく、心が空であること、欲望や執着がないこと、また、単純さや質素さを意味します。一方、「溢れる」とは、物理的に溢れることだけでなく、欲望や執着が過剰になること、また、複雑さや贅沢さを意味します。
「寧缺勿全」も同様に、物理的に不足していることだけでなく、心が不足していること、また、不完全であること、しかし、それが逆に豊かさや完全さの源になることを意味します。
このフレーズは、過剰や完璧を求めることの危険性を警告し、節度と簡素さの重要性を説いています。また、不完全さの受け入れを通じて、真の満足感と完全さが得られることを示唆しています。
この哲学は、伝統的な中国の知恵と一致しています。中国の古典文学には、過剰や完璧を求めることの危険性を説くものが多くあります。例えば、孔子は「過猶不及」という言葉で、過剰も不足もよくないこと、中庸を保つことが重要であることを説いています。また、老子は「無為自然」という言葉で、自然のままに生きること、無理に何かをしようとしないことが重要であることを説いています。
この哲学は現代社会にも通じるものがあります。現代社会は、物質的な豊かさと技術の進歩によって、過剰な欲望や競争を生み出しています。このような状況において、この哲学は、私たちに過剰を避け、節度を保つことの大切さを教えてくれます。また、単純さ、節度、そして不完全さの受け入れを通じて、真の満足感と完全さを得るためのヒントを与えてくれます。
具体的な例としては、以下のようなものが挙げられます。
仕事や勉強において、完璧を目指すのではなく、まずは目標を達成することを目指す。
物質的な豊かさに追い求めるのではなく、シンプルな生活を楽しむ。
人間関係において、完璧な相手を求めるのではなく、ありのままの相手を受け入れること。
この哲学を実践することで、私たちはよりシンプルで豊かな人生を送ることができるでしょう。
一日一句【菜根譚】#23「就一身了一身者,方能以万物付万物」自己理解と宇宙万物、そして権力と責任のバランス - 現代日本政治への応用
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