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なにかをうまく伝えられたらいいのだけれども、そんな簡単にはいきませんというか。
表現というのは受け取る側の気持ちがすべてなので、発信者が「思ったことを100%伝える」というのは無理なんですよね。
同級生ならわかってくれる?
親なら?
配偶者なら?
そして、思いが絶対に伝わらないことに気づいてしまったとき、絶望するのか?
あるいは、あがくのかについては、人によって動きが違うわけですけれども。
「そんなもんだよ」
と言える人だけが残る世界なのかな、制作者っていうのは、と思うようになりました。
そもそも誰かにわかってほしい、と思うのはエゴなんですけれども。
広告をやってるデザイナーは、わりと早い段階で気づきます。
いっこも読んでくれないんですよ、プロデューサーが。
意図もコピーも、さっぱりです。
プロデューサーはコンシューマーを見てますから。
まずそのハードルを超えなくちゃいけないので、数撃つ流れになります。
プロデューサーを超えないとクライアントに届きません。
クライアントに届かないと、コンシューマーにはもっと届きません。
結果、デザイナーとコピーライターの睡眠時間がなくなったりしました。
ホントに読まれないんです。
で、もろもろのハードルを超えて世に出ましたら、
内容を読まないコンシューマがなんだか怒って電話かけてくる。
「ここに書いてあるやん」
とか言うと、もっと怒る。
それで発電できるんじゃないかと思うくらい怒るんですよね。
あ、怒りすぎると死にますので気をつけましょうね。
なのでクールダウンなトークをするみたいです、お客様相談室は。
そんな感じの話をひと通り聞きましても、
「知らんがな」
って思うようにならないとしんどいので、実は人の心が失われているかもしれないぞ、とか思います、ええ。
こちらの思いはさておき、それでは止まらないのが人の気持ちというものでして。
でも、こちらは介護士ではないので、相手に寄り添う気持ちはゼロです。
ここを押したらこんな感じで反応する、くらいのデータしかとってません。
誰かと共有できるほどの再現性がないからです。
とはいえ、お客さん(クライアントね)の傷にはしたくないので、できる限りがんばって「伝わるようにする」ことを考えるのです。
ただ、なんというか。
接客スキルの高さだけがトラブルを解消することがわかっちゃってるので、
デザイナーができることってたかが知れてるなー、なんて嘆いてみたりもします。
最近「デザインの敗北」っていうワードを見かけたんですよ。
それって、デザインじゃなくて、コミュニケーションの敗北なんだよな。
「聞く気のない相手にどこまでがんばって説明するのか?」
という命題は、共有できる範囲が限られてるなと。
そんなことを思いました。
デザインって。わさわざ説明したらダメなんで。
オチを説明する落語っておもしろくないでしょ?
さて。
「聞く気がない相手」って書きましたけれども。
「どこかのすごい演奏家が駅で曲を奏でても、誰も気づかないし見向きもしなかった」というお話があったらしいんですよね。
あれといっしょかな、って。
ホールにわざわざ聴きに行くから人にメッチャ響くわけです。能動的に「聴きに行ってる」っていうのがポイントなんですよね。
そこらへんを歩いてるすごい演奏家のパフォーマンスに気付けるかって言われたら……葉加瀬太郎さんくらいじゃないだろうかって思うんですよ、一般的には。
わかりやすくないと、人は反応しないんです。
興味なければ読まないし、聴かない。
ましてやコピーなんて、デザインなんて、よっぽど影響力をもたせる荒っぽい毒を入れないと受け入れてくれない。
だって、トイレでフレンチのフルコース出されても、味なんかわかんないと思うんですよ。
三ッ星のシェフならそんなハードルも軽く乗り越えてくるかもしれんですけどね、知らんけど。
相手に甘えまくるコンシューマを満足させる必要があるのか?
それを考え始めた瞬間、広告系デザイナーのポジションはなくなります。
だけど、どうしても、考えずにはいられない。
つらいなあ。
厳しいなあ。
って思うんですが、どうしようもない。
なのでGRPを高くする。露出を多くする。
心を殺してリーチを稼ぐ。
それが規定演技なのよね。
とか、思ったりしています。
noteだって、リーチを稼ぐにはキャッチーなワードが必要なんですよ。
自分を偽ってなにかを表現したいって思いますか?
たぶんそんなことないですよね。
自分の思うままに。
Let it be. だと思うんです、表現者は。
![](https://assets.st-note.com/img/1696605766060-52jF3eJ4wk.jpg?width=1200)
表現の夜明けが訪れたらいいよね、なんて思いながらアップしたこの写真は、じつは夕暮れです。
言っても伝わらないけど、最低限でも言っとかなきゃ伝わんないことって、ホント多いんですよね。
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