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映画『ゲロッパ!』のチケット受付時に現れた不思議なキャラクターの正体とは

一時期、会社の企画にて地元の方々を対象に、無料のタウン映画会を開催していたことがありました。新聞の折込広告で告知して、電話やFAXにてチケットの申し込みを承ります。なるべく多くの方に楽しんで頂けるよう、予め市内の一番大きなホールを借りていますが、さすがに『オペラ座の怪人』の時はあまりに反響が大きく、丸一日電話が鳴り止まなかったことを思い出します。

今回は、井筒和幸監督作品の人情コメディ映画『ゲロッパ!』の受付をした時のエピソードを語りたいと思います。
ちなみに映画のタイトルである「ゲロッパ!」という言葉は、この物語の主人公が敬愛するファンクの帝王、ジェームス・ブラウンの名曲『Get Up ( I Feel Like Being ) A Sex Machine』の有名な一節「Get up!」が、JBの独特な発音によって「ゲロッパ!」と聴こえることに由来するものです。

受付当日、朝9時の開始から「ゲロッパのチケット3枚お願いします」「4枚お願いします」と次々に電話が鳴り出し、テンポよくチケットが無くなっていきます。枚数制限は無く、受付側もお断りする心苦しさがありませんし、複数の作品が同時上映されるシネコンとは違い1作品のみの受付なので、混乱や手違いもありません。

午後に差し掛かったあたりでしょうか、かなり高齢のおばあちゃんの声で「ケロンパくんのチケット2枚お願いします」と言われました。

ケロンパ、くん…?

…聞き取った言葉は確かに「ケロンパくん」でした。もちろん、そのおばあちゃんは『ゲロッパ!』の告知チラシを見て電話をくれているはずです。ここで改まって指摘するのも野暮かと思い、通常通りの受付をさせて頂きました。

「ケロンパくん…」

人間の脳とは不思議なもので、初めて耳にしたそのふわっとした語感だけで、脳内に勝手なイメージを作り出そうとします。私の場合は、日本酒の黄桜のCMに出ている「かっぱっぱ~♪」の河童のような姿をしたキャラクターが現れました。しかも事もあろうに、あの曲の、

JB「ゲロッパ (Get up)!」→
レスポンス「ゲロエロッ (Get on up)!」のリズムで、

JB「ゲロッパ (Get up)!」→
ケロンパ「ケロケロッ♪」と、脳内で唐突にコラボレーションが始まったものですから、受付の真っ最中にも関わらず、私の笑いのツボに入ってしまいました。

なんとかしてその調子に乗ったケロンパを頭の中から消し去ろうとしましたが、ファンクの帝王に愛された河童はなかなか脳内から消えてはくれません。それから終日のあいだ、「ゲロッパ」が「ケロンパ」に脳内変換されるたびに吹き出しそうになるのを堪えながら、まさに苦悶のチケット受付となりました。

ちなみに、実は私は存じなかったのですが、『ケロンパ』は元々タレントのうつみ宮土理さんの愛称で、うつみさんがご出演されていた『ロンパールーム』という番組名と、ご自身のことを批判されてもケロっとしている様子とを掛けたニックネームだそうで、今回の記事を書くにあたり調べてみて初めて知りました。

とは言っても、うつみ宮土理さんは紛うことなき女性ですので、結局のところ『ケロンパくん』の本当の正体は今も謎のままなのです…。

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