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再会

名は知らない。しかし、毎日、会っていた人
 
①私は私立の女子中学に通っていた。私が朝、電車通学する時、いつも最寄り駅で出会う男子中学生がいたのである。だが、当時の私は、その人のことが気になっていたわけではなく、いつも会う人だとしか思っていなかった。ただ私には男の兄弟がいなかったので、年齢的に近い男性が身近にいない思春期を過ごしていたから、ちょっと寂しい想いもあった。

②私は、エスカレーター式に女子高に進んだ。やはり周囲には男性はいなかった。私を誘ってくる男の子も見当たらなかった。大学生になると、男性が誘ってくるようになったから、問題は解決したが……。

③社会人になって何年かが経過した。私は休日に、お出かけするために最寄り駅に行った。すると、中学生の時、毎日、出くわしたあの人がいたのだ。あの人は、私を見ると目を丸くして驚いた。私も驚いた表情をした(と思う)。あの人は、結婚している人が持っている、ある雰囲気を伴っていた。私は、今でも結婚していない。
それを最期に、あの人に会うことはなかった。中学生の時、あの人が、私に声をかけてきたら、私はどうしていただろうか、そんなことを思った。


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