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ゲシュタルト療法〜"今、ここ"で気づく〜

皆さんは、今まで生きてきた人生の中で、どんな体験をしてきましたか?きっと、数え切れないほどの思考や感情、感覚を味わってこられたと思います。

あるいは、これからの未来で、どんな経験をしたいですか?これまでの人生と同じことはどれくらい、違うことはどれくらい起きそうですか?

そして、今、この瞬間。
何を考え、感じていますか?あなたはあなたのままで、そこにいることができていますか?

私たちは、生きていく中で本当に多くの感情・感覚・考えと出会います。そして、時としてそのうちのいずれかの体験に囚われ、または拒み、または気づかずにいることで「私」を見失ってしまうことがあります

ゲシュタルト療法では、これらの体験をありのまま捉えなおし、統合することで、その全ての体験を持つ一つの人格としての「私」の獲得を促します。

図と地

「ルビンの壺」という絵をご存知でしょうか?
黒い背景に、口の大きな白い壺が描かれた、あの有名な騙し絵です。黒を背景、つまりとすれば、白い壺というが見えて来て、白をとすれば、今度は黒がとして浮かび上がり、向かいあった人の横顔に見えるというやつですね。

ゲシュタルト療法では、意識に上ってくるものを上記の騙し絵でいうところの"図"と呼びます。「今、〜を考えて(感じて)いる」と、自分でわかるもののことですね。
反対に、意識に上ってきていない考えや感情のことを、"地"と呼びます。
私たちは、この図と地の反転を繰り返しながら、柔軟に物事の優先順位を交代させたり、欲求を満たしたりしています。

子どもの頃、学校の宿題をしていたときのことを思い出してください。
今、意識に上っている「宿題をしなきゃ」という考えがです。ところが、しばらく宿題をしていると、おやつにドーナツが食べたくなってきました。

このとき、今まで無意識=地であった「ドーナツが食べたい」という考えが意識に上ってきて、"地"であった考えが"図"になります。
そこで宿題を中断し、ドーナツを食べることで、それまでの"図=宿題、地=ドーナツ"反転し、"図=ドーナツ、地=宿題"となるわけです。
そして、ドーナツを食べ終わり、宿題を再開するとき、反転していた図と地は再び元にもどります。

しかし、この図と地の反転が上手くいかなくなると、自分の欲求に応えられず、かといって優先順位の高い物事も手につかず、という、どっちつかずの状態に陥ってしまいます。深刻な場合では、自分が本当は何をしたいのか?したかったのか?がわからなくなっていくのです。

ホメオスタシス

ホメオスタシスというのは、生命維持のために身体が外界の変化に対応し、身体内部のバランスが常に一定に保たれるよう維持しようとする機能のことです。例えば、体内の水分が不足すれば、喉が乾いて水分補給がしたくなる、というのもホメオスタシスが働いているからです。

ゲシュタルト療法の生みの親であるパールズは、このホメオスタシスが精神的な現象の中にも存在することを提唱しました。
つまり、不快な経験をしたときに、怒りや不快感を覚えるのも、ホメオスタシスによるものであるということです。

私たちは、喉が乾けば水を飲みます。しかし、怒りや悲しみが生じたときは、しばしばその感情を抑え込もうとしたり、無かったことにしようとします。

もし、怒りや悲しみが精神的な健康を保つためのサインだとしたら、どうでしょう?
喉が乾いているのに水分補給を怠ると、熱中症になってしまいます。それと同じく、精神的な不快感を無理に抑え込むことも、心身の健康を損なうおそれがあるのです。

"今、ここ"での気づき

"図と地"、"ホメオスタシス"の観点から、ゲシュタルト療法では無意識に封じ込めた自分のありのままの感情への「気づき」を重要視します。

自分でも気づいていない自分の感情に気づくことで、無意識に沈みっぱなしだった心からのサインに応え、固まっていた図と地の反転をスムーズに行えるようにしていくのです。

しかし、この気づきというのは、過去に遡ったり、未来に飛んでいったりして得ることはできません。過去のことも、未来のことも、"今、ここ"で起こっているものとして体験するしかないのです。

そのため、ゲシュタルト療法では、過去に起きたことを追体験したり、未来に起こると考えていることをシミュレートしたりする様々な技法を用います。
全部解説するととんでもない長さになってしまうので(笑)、今回は割愛しますが、いずれも無意識に葬っていた自分の感情に気づき、見失っていた自分の全体像を再び取り戻すためのエクササイズです

本当の自分がわからない、自分の人生を生きていないという感覚は、もしかしたら図と地をしっかり認識できておらず危機を知らせる心のサインに気付いていないからかもしれません。

そして、その事実に「気づく」ことそのものが、ゲシュタルト療法の第一歩であり、ありのままのあなたで、自由に生きるための第一歩なのです。

見ないようにしてきた自分の本当の気持ちに、"今、ここ"から、目を向けていきましょう!



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