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10月16日、なんという闇。

なんという光。

あゝ!あたしはたうとうお前の口に口づけしたよ、
ヨカナーン、お前の口にくちづけしたよ。

ーーオスカー•ワイルド〈サロメ〉

今日はオスカー•ワイルド氏の
お誕生日なんですって。


1900年生まれの破天荒作家ワイルドの著名作といえば
自身の肖像画に狂わされる「ドリアングレイの肖像」
像の王子と燕の自己犠牲を描く「幸福な王子」

そして、「サロメ」
戯曲用に作られたお話です。

叔父にあたる王様にラブコールされた王女は、囚われの預言者ヨカナーンに一目惚れ!
王様がダンス踊ったら褒美をやるというから、ヨカナーンの首(※比喩じゃない)が欲しいと言ったら、ちょー怒られた。ムカつく!みんなもなんか怒ってっし!
ヨカナーンも嫌がってる!ぴえん!
でも本当に首くれた!首にチューしちゃおっ。

って話です。(ふんわり解説)
新約聖書「マタイ伝」を下地に作られた話題の問題作です。マタイ伝のお姫様はこんなサイコパスラブではないんですけどね。

出版後、本人の私生活が原因で揉めた炎上作家らしい作品です。(男色の罪で逮捕されたりする人として有名)
この人が絵本でも有名な「幸福の王子」の作者だと思うと、王子と燕の最期も何か皮肉なのでは?と感じます。


そんな問題作家の問題作「サロメ」の
倒錯的な愛と退廃的な表現、展開に後世の作家は魅了されています。
私が「サロメ」を知ったのは、そんな魅了された作家さんの小説との出会いなのです。

荻原規子さん「樹上のゆりかご」

そもそもこの作家さんのおかげで(せいで?)
私は日本神話を好きになった!そして海外古典が楽しくなった。日本語訳しかわかりませんけど!

西の善き魔女、レッドデータガールも面白い!
何より勾玉三部作!日本神話や歴史をうまく融合させこうもキュンキュン出来る作品ができる人ってほんとすごい。

古事記や日本書紀って「男神と女神がズキュンバキューン!」「スサノオは○×△□※〜〜〜」とか、見せられないよ!展開が多くてうへぇーってなるのに

学生の頃、勾玉三部作の次に読んだのが
「これは王国のかぎ」千夜一夜物語を土台にしたファンタジーでした。そのファンタジー世界で活躍した主人公の少女の高校生活を描いたのが次作「樹上のゆりかご」です。
ファンタジー要素はなく、実際の学園生活を主軸にした仄暗い作品。別作品と思うくらい主人公を取り巻く環境は別世界。主人公がモブい…。
そんな等身大の少女の青春が平凡な私と同じで心が痛かった…。そして妙に元気ももらった。

その中の不穏のメインに「サロメという、高校生には重たすぎる劇を演劇コンクールで行う」というものがあるのだ。

私がサロメを知った衝撃の作品。未読の方はぜひ!

そして、サロメ熱が再演するきっかけをくれた作品がこちら↓

原田マハさん「サロメ」

タイトルがずばりそのまま!
ですがこの作品の主人公はワイルドのサロメ、の挿絵を描いたペン画家ビアズリーとその姉なのだ。
タイトルの絵の人です。↑

サロメの内容にマッチする悪魔的な白黒のタッチは有名で、この絵がサロメの耽美な世界観をより引き立てている。
ビアズリーの挿絵でなければここまでワイルドのサロメは時代を超えて尚、熱狂的なファンがつくことはなかったかもしれない。

ワイルドはマネジメント力に優れていたのですぐに売れっ子作家になったが、サロメの慢性的な中毒性はビアズリーの功績が大きい。

しかし、ビアズリーとその姉はワイルドのスキャンダルにより、挿絵を描いただけでありながらワイルドと共に批判を受けビアズリーは失意のまま若くして病死する。
…実話ですって。

このワイルドと周囲の人間関係を、美術ミステリとして展開する物語はスピード感があり、とても惹き込まれてしまう。ワイルドって何で死んだの?実はね…。的な
(←※これはフィクションですよ!)

才能とワイルドへの盲信と裏切り、少し近すぎるきょうだい愛の歯車が噛み合ってしまった時、運命はドロッドロのドロッドロに陥ってしまう。

3人の運命やいかに!未読の方はぜひぜひ!

原田マハさん、それ以外にもたくさん美術家に焦点を当てた作品書かれていますよね…。私も他の本を読まねばですね!

今日はスキャンダル作家ワイルドさんのお誕生日にちなみ、2作品紹介してみました!

この記事の問題点は、
主役が脇役になっちゃった事です。
ワイルドさんごめんなさい。

みんな、ワイルドのサロメも読んでみよう。

お前の脣はにがい味がする。血の味なのかい、これは?
いゝえ、さうではなうて、たぶんそれは恋の味なのだよ。恋はにがい味がするとか……でも、それがどうしたのだい?どうしたといふのだい?あたしはたうとうお前の口にくちづけしたよ、ヨカナーン、お前の口に口づけしたのだよ。
一条の月の光がサロメを照しだす。

王〈振り返ってサロメを見〉殺せ、あの女を!

兵士たちは突き進み
楯の下に、エロディアスの娘、
ユダヤの王女、
サロメを押し殺す。

………手に入らないならいっそ。ってヤツ??

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