魯山人の渇き 愛なんていらねえよ 養父・福田武造の談1
飯の炊ける匂いで、その日目が覚めたんどす。
いつもより早いし、女房はまだ寝とりました。
まさか思て起きたら、飯炊いてたんは房次郎(魯山人のもとの名)どした。
尋常小学校に入学したばっかりの六つどす。
どこで飯の炊き方覚えたんや訊いたら、「見とった」言うんどす。
女房の飯炊くとこ、いつもじーっと見とったんは腹空かしてのことやとばっかり思てたら大間違いどした。
房次郎をうちに引き取ってから、ひと月も経たん頃どす。
そん前の養家でひどい目におうてたんを近所の人が見かねて、うちの養子