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[小説]アイロボ

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[小説]アイロボ

[小説]アイロボ

あらすじ

僕は、突然ホームレスになった。

そう、突然に。

そこで出会ったホームレスと僕は果てない旅に出る。

僕は生きる事の意味を探す。

生きる事の意味を。

たどり着いた答え、僕の過去。

僕が残してきたもの。

1章 アイロボ

++++++++この小説について+++++++++++

この小説は合計で400円で読める構成になっています。

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[アイロボ]1章1 アイロボ1

[アイロボ]1章1 アイロボ1

目を覚ますと僕は、そこにいたんだ。
ここが何処なのか、僕が誰なのかぼんやりする思考の中で僕は考えた。
でも答えは出てこない。
辺りは暗くここは、公園のような場所だった。
空を見上げると高層ビルが立ち並びその隙間から星が見えた。
それは不思議な光景だった。
「おい、おまえ」
星を見上げていた僕の視界を男の顔が遮る。

「何してんだよ。こんなとこで」
そんな事を聞かれても僕はわからない。
僕は、どうし

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[アイロボ]1章2 アイロボ2


チュン

チュン、チュン

おぃ

そうすけ

ゴン

僕は痛みと共に目を覚ました。
僕が見上げると目の前には、男がいた。
確かよしさんって名前だった筈だ。
「いつまで寝てる。起きるぞ」
そういって僕の手を取り起こした。
眩しい程に辺りは明るく周りには雀がいる。
そうか、ここは外だった。
眩しすぎる。
家の中で過ごしていた僕には眩しすぎる光量だった。
僕は時計を探してみると6時だった。

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[アイロボ]1章3 アイロボ3

「わかるかい?単身赴任の身なのさ」
「そりゃ寂しいでしょう?」
それを皮きりに世間話から身の上話になっていった。
会話をしながらもよしさんの手は動いている。
身の上話も盛り上がりつつある時にはもう靴は綺麗になっていた。
「ありがとう。またくるよ」
お客さんは、御代を払うと満足そうにその場を去っていった。
「あのお客さんは、営業マンだな。人情に厚いタイプで部下を大切にする人だろう。きっとあの人は出世

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[アイロボ]1章4 アイロボ4

そう短くいうとよしさんは、その場からまた歩きだした。
「あの人は、あんまり人と関わろうとしない人さ。そんな人はこの世界じゃ酷く生きにくい。それでもあの人はそういう人なのさ」
よしさんは、なんだか全てをわかったような口調でそういった。
よしさんはまだ何かいいそうになったが、言葉を飲み込んで黙って歩いた。
その間も顔見知りの仲間をみつけると声を掛け炊き出しの事を話したりしていた。
よしさんは、今夜の炊

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[アイロボ]2章1 アイロボ後半1

営業をはじめてから向いてないと思っていたんです。
飛び込みで売り込みにいって頭を下げて時には強引にものを売る。
僕は売る事よりお客様の気持ちばかりが気になった。
上司は、情を持ったら営業なんか出来ない、そう言いました
ノルマや会社や上司からの圧力が次第に僕を苦しめるようになりました。
だけど旨くいかないんです。
お客さんと接していても一蹴りにされてしまうか強引な条件を突きつけられてしまうんです

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[アイロボ]2章2 アイロボ後編2

屋根のある場所を探しているようだ。
階段の下を確保するとダンボールを引きビニールシートの上に毛布を引いてよしさんは寝袋の中に入った。
酷く静かな夜だった。
しんしんと降り続く雪は、全ての音を吸収して地面に落ちてるようだった。
あんなに賑やかだった宴会も終わってなんだか寂しい気持ちがした。
よしさんは、もう寝てしまったんだろうか。
寝袋だけで寒くないんだろうか。
僕はこの2日間を思った。

僕が全く

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[アイロボ]2章3 アイロボ後半3

「そうすけ、やってみろ」
そういわれてよしさんを相手に見様見真似で靴磨きをしてみた。
「なかなか筋がいいじゃねぇーか」
誉められて悪い気はしない。
「だけどなもっと丁寧に素早くやるんだ。俺のやり方をみろ」
そう言って僕はまたよしさんが仕事をする様子をみていた。
確かによしさんは、丁寧だが素早く作業をこなしていた。
あっという間に靴を仕上げていく姿は、職人のような自信が垣間見えた。
「ここにくる客は

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[アイロボ]2章4 アイロボ後半4

[アイロボ]2章4 アイロボ後半4

「じゃな、小僧。おまえはおまえで頑張っていけ」
男はそう言ってその場をあとにした。
僕は何を頑張ればよいのだろうか?
疑問に思いながらも次の客を待つ。
その時、1人の男が僕の目の前に座った。
黒のスラックスに濃い茶の厚手のパーカーに手を突っ込み黒のニットの帽子を被っている。
中肉中贅、短髪で50歳くらいだろうか?
男は座ると僕をみる目線は何処か鋭く僕をみたまま微動だにしない。
男の足元はスニーカー

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[アイロボ]3章1 財閥の男 美山

僕がはじめて行った雇い主はとある財閥の男だった。
その頃の僕はとても高価なものだった。
一般の人がとても買えるものでなく僕はこの男の元にやってきた。
男の名前は、美山幸彦。
僕がここにくる前にはじめに与えられた情報だった。
確か僕がきた頃は幸彦が70を少し過ぎたくらいだった筈だ。
それから僕は10年近くここにいる事になった。

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[アイロボ]3章2 財閥の男 美山2

私は死ぬ事は怖くないんだ。怖くないんだよ。
私が恐れている事は、誰にも求められなくなった時なんだ。
そして私の事を皆が忘れてしまう事なんだよ。
私は、ずーっと誰かの為に生きてきたんだ。
家族の為、会社の為、従業員の為。
会社をやめるまでずーっとそういう生き方をしてきたんだよ。
そう生きてきた私が今更自分の為だけには生きていけないのさ。
私は自分の為にどう生きたらいいかわからないんだ。
婆さんが生き

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[アイロボ]3章 アイロボ1

僕は、幸彦の話を終えた。
今も思い出すと胸が締め付けられる。
よしさんは、黙ったまま僕を見つめていた。
溢れ出す涙をふくことをしないでいつかのあの時の男みたいに。
「僕は今までそんな風に人の死と向き合ってきたんです。人の死は僕に何かを残していくんです。だけど出来ればそんな風に何度も人の死には僕は向き合いたくなかった」
僕の言葉によしさんは沈黙のまま、満月から少し欠けた月を見上げた。
沈黙が辺りを包

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[アイロボ]3章4 アイロボ2

「隆。この温もりを覚えておくんだ」
「よしさん?」
「俺達は、おまえの味方だ」
「…」
隆は無言のままよしさんの腕で声を押しこらえていた。
隆は、きっとこの温もりを忘れないだろう。
暫くして隆を引き離すと肩に手を置いて、頑張れよ。そう呟いた。
他の仲間も次々に隆の肩に手をやり言葉を残していく。
その度に隆の嗚咽は大きくなる。
僕も隆に近寄り握手を求める。
それが隆への言葉だった。
隆に強く握り返さ

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[アイロボ]4章1 孤独 優介

確か僕がこの家にきたのはまだ優介が2歳の頃だっただろうか?
その頃のロボットは一般家庭に普及し、僕は子育て機能がつけられてここにきた。
父親は、弁護士。母親は会計士。
なんとも堅物な組み合わせだ。
2人とも仕事が多忙で、優介は保育園に預けられていたもののかなりの時間を2人で過ごしていたんだ。
優介はここにきたばかりの頃は無邪気でやんちゃな男の子だったと思う。
走り回って声を上げて僕は手をやいた。

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