陽のある処に咲く花は陰れば枯れる2
次の日、スタッフの一人に話があると呼び出された。
ああ、この呼び方されるのダメってことだろうな、もうわかったよ。
ラインで一言で言ってくれればいいのに。
そう思いながらオフィスに向かった。
「役者やめようと思った」
話始めにそう言った。
暫く沈黙の後、スタッフの一人はこう言った。
「ちょっと、びっくりした。まさか、そう思ってるとは思わなかったから。
でも、もし本当にそう思ってるなら、今からいうことは
その気持ちに大きく関わってくるかもしれない。」
「選ばれたよ。」
私にとって、まさかの回答だった。
辞めたいと言った手前複雑な気持ちだった。
「でも、やるかどうかはすぐに決めないといけない。限られてる時間の中だけど考えてみて欲しい。僕たちは、普段から一緒にやってきたけど、長い討論の末に、贔屓なしに美帆がいいと思ったんだ。」
どう受け止めたらいいのだろう
夜通し考えた。
経験を積むためにフリーランスでも作品撮りを頑張った1年。
マネージャーやスタッフのみんなに支えられ乗り越えた大学との両立と、オーディションを受けまくった2年間。
親友を失っても仕事を優先してきた自分の努力全てを私は
魔女の言いなりになって
0にしてもいいんだろうか。
いい思い出だったと後悔なく言えるのだろうか。
台本をめくった。
私の役、鐘見百合役のセリフに目が止まった
「夢を追う人のそばにはいつだってそれを応援する人がいるんです。
たとえ本人が気付いていなくても。」
そのセリフにどきっとした。
そんな中で前々から予約をしていた演技レッスンに足を運んだ。
先生は、威厳がある見た目でハリウッドでも活躍されている方なのに、とても明るく気さくな方で現場での貴重な体験を教えてくださった。
「You have an emotion(あなたは感情を持っている)。僕がハッとした言葉だ。才能がないとか、何も持っていないと思っていても君は感情を持っている。演技はそれさえあればいいんだ。」
の言葉が響いた。
レッスンは今まで自分が背負ってきた演技というものとはまるで違って
楽しいと感じた。
最後に、生徒の皆で自分が出せる1番の声で目標を叫ぶというのをやった。
「チームのみんなで最高の作品を作りたーーーい!」
この言葉は何も考えずに出てきた言葉だ
これが私の本音なんだ。
自分で知って涙が出た。
「このレッスンに出られてよかったです。」というと先生は笑顔で言ってくれた。
「自分の思うようにやりなさい。君は自分の思うように自由にやるのがいい。応援してるよ。」
『夢を追う人のそばにはいつだってそれを応援する人がいるんです。たとえ本人がきづいていなくても。』
その日の夜スタッフの元にすぐに行った
「私やるよ」
こうして「午前0時、視えない声。」に挑むことになった。
「不格好でもいい、桟橋を歩き続けるんだ。」
「きっと道は続く。」
私はこの役に、先生に、今まで応援してきてくれた読者やSNSのフォロワーにもチームの人たちにも支えられてきたと知った。
そのあたたかい"視えない声"がその夢を諦めさせてはくれなかった。
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本日21時公開しました!
【あらすじ】
二週間前に起きたバイク事故。
現場にはライダーも、轢かれたはずの被害者もいなかった。
記者の誠二は、事故を目撃したという百合に出会う。
「轢いたのは、肇です」
彼女の恋人である肇は数日前から行方不明だ。誠二は百合とともに彼を探すことになる。
しかし、多田刑事の発言により事態は思わぬ方向へと動き出す。
新感覚【エモ × ミステリー】短編映画
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原作:
『ハッピーバースデイ』
元東京創元社代表取締役 長谷川晋一著 短編小説
クラウドファンディングは105%達成して終了!
ご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました。
https://note.com/aimiho/n/n33ceecc61a62
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