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住む街のこと

どんな街に住むか、ということを大事にしはじめたのは、前職の影響が大きい。
住宅情報誌の広告ディレクターをしていたので、必然的に住まいに関わる領域には、少しだけあかるくなった。

興味深いのは、家(とくに実利用のための家)を買う人はみな、家のこと以上に、その家が建つ街のことを気にしていたし、家を売る人(わたしのクライアント)も、その街の良し悪しをマーケティングの大きな指標にしていた。

でもそりゃそうだよね。ずっとそこにいることになるんだもの。我が家を抱えている街、日々を過ごす街、家族が育つ街。そこまで含めて「住まい」だよね。

というわけで、東京中のさまざまな街に出会い、そのおかげでわたしの街に対する目は、無駄に肥えてしまった。


どんな街を良い街だというのかは、ひとそれぞれだと思う。ひたすらに利便がいい街を希望するひともいれば、多少の不便さはあっても好きなお店がある街がいいひともいる、どうしても緑のゆたかな環境がほしいひともいれば、交通利便だけははずせないというひともいる。

百人百色な「良い街」だが、わたしは、「おすすめしたい行きつけがたくさんできる街」を、良い街と定義している。

行きつけにしたくなるお店が持つのは、味の良さや品物の魅力だけではない。例えば、その店とお客さんとの間で交わされるコミュニケーションの明るさと濃さ、その店やオーナーがもつ場の空気。
それらが、街に違和感なく存在している、溶けあっているようなお店が、行きつけにしたくなるお店だと思う。

そしてそういうお店は、やはりそういうお店を内包してくれる街に多くできるものなのだと思う。お店のオーナーが「ここにしよう」その場所を決める背景にあるのは、なにもマーケティング観点だけではないはず。お店と街が呼応しあう、そんな背景もきっとあると思うのだ。


幸いなことに、今住んでいる街には、胸を張っておすすめしたい行きつけがたくさんある。
いついっても美しくすこし変わったお花が並ぶお花屋さん、野菜をたっぷりつかったカレー屋さん、ヴィーガンのカフェとその2号店のベーカリー、愛犬をたっぷり愛でてくれるコーヒースタンド、フェミニズムについての本がたくさん並んだ本屋さん…
そしてそのすべてとの間には、やはりポジティブなコミュニケーションと、そしてすとんと街に馴染んだ空気を感じる。
それらのお店に行くたびに、良い街に住んだなぁと、うれしくなる。

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