生きてるうちにやろう
夏休みなので、ちょっと小説から離れた小話を。
私の主人は仏像の修復という珍しい仕事をしています。
大体はお寺からの仕事が多いんですが、たまに個人からの
仕事の依頼もあります。
個人で仏像を所有していて、
代々受け継いでいるというご家庭があるんですね。
で、年代物なので壊れてしまったりして、それを修理してほしいという話。
しかしこの個人からの依頼、
多いのが「死ぬ間際に依頼してくる」というもの。
「あー、代々受け継いでいる家宝の仏像が、
壊れてしまったけど、直そうかな、どうしようかな」
と思っているうちに年月が経ってしまうんですね。
先日依頼があった仏像は、実は10年前に修理したいと
思って工房を訪れたけど、迷っているうちに10年がたち、
入院して余命わずかとなってしまった、というご主人。
奥様が仏像を持って見積もりに訪れ、
その見積もり書を送ったところ。
「見積もり書が届いたその日、主人が亡くなりました」
そんな電話をいただきました。
「主人は死ぬ間際、どうしても心残りなことがある、
それは先祖代々から受け継いでいる仏像を
修理していないことだ、と言ってました」
そんなわけで、その仏像を修理することになりました。
うーん、ドラマティック!!
と私が感慨にふけっていたところ、
主人いわく「これで3件目だ」そうです。
つまり、みんな修理しなきゃと思いつつ、
なかなかふんぎりがつかなくて、もうすぐ死ぬかもしれない、
という時になって工房に持ち込んでくる……という。
そして修理の見積もりなどのやり取りをしている間に
亡くなってしまうということです。
いやあ、こういう話を聞くと
人生って有限なんだな、やれる時にやらないとダメだな、
って実感しますよね。
そのご主人も、本当は修理されて綺麗になった仏像の姿を、
生きてるうちに拝みたかったですよね。
その遺志を継いで、奥様が見届けることになりそうですが。
小説とは全然違う話ですが、
「生きてるうちにやりたいことをやろうよ」
というメッセージと受け取って、今回記事にしてみました。
そういえば主人つながりで小説といえば、
プロの小説家から、「仏像修復の小説を書きたいので、取材させてください」と話があって取材を受けた仏像修復師の小説が出版されています。
だいぶ昔の話ですが……。ご興味ある人はこちら ↓
漫画家さんからも取材を受けて漫画になった作品もあります。
一時、仏像ブームでしたもんね~。懐かしい……。
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