あなたの”呼吸”をアップデート!その2
「吐く」ことについて
さて、今回は息を吐くことについて。
息を吐くときは、肺の中にある空気が気道に沿って動き、やがて口(や鼻)から出て行くわけですが、この時の「空気の動く方向」を改めて考えてみたいのです。
口は肺よりも上にありますね(当たり前すぎてゴメンなさい…)。空気が肺から出て行くときは「下から上に」動いていき、やがて結果的に口から前に出て行きます。※図3
その際、空気を上方向に動かす役割を持つのが肋骨と骨盤の間にある腹筋群たち※図4、および脚の付け根と同じくらいの高さにある骨盤底筋群です。※図5
腹筋群が胴体の外側から内側へ、骨盤底筋群が下から上へと動いてくれることで内臓が上向きに動き、肺にある空気を上向きに押し出してくれます。
管楽器奏者は、しっかり楽器に息を入れて音を豊かに出したいという願望があるため「楽器にまっすぐに息を入れる」「息を前向きに遠くに飛ばす」「息を下向きに入れる」etc…といった指示を自分自身に出すことが多いですが、ここでぜひ一度「空気は上方向に動く」と思って音を出してみてください!
「息の支え」とは何か
「その1」からここまで、「息を吸う」時と「息を吐く」時においてそれぞれどういったことが身体で行われているのかをざっくりと紐解いてみました。
さて、ここで改めて管楽器演奏や歌を歌う時、すなわち「息を意図的にコントロールして吐き続けている時」にどんなことが起こっているのかを考えてみたいと思います。
この「息をコントロールして吐き続ける」時に必要なのがいわゆる「息の支え」と言われているものだと思います。
…悩ましいこの言葉。
私なりにできるだけシンプルに説明を試みます。
「息をコントロールして吐き続ける」というのは、肺の中にある空気を少しずつ、必要な圧力で体外へ押し出している状態と言えます。
ちょっとご自分を観察してみてください…。
この時は、「息を吸う時に働く筋肉」も「息を吐く時に働く筋肉」と同時に働かせていることになります。
もちろん、空気は体外へ排出され続けるので、肺の中の空気は減り続けていますが、この時「息を吸った時に働いた筋肉」を休ませて(ゆるませて)しまうと、肺の中の空気は一気に体外へ排出されてしまうでしょう。
このとき、この「息を吸う力」は「肺の中に空気をとどまらせておく力」となるのです。
そして「息を吐く筋肉」を状況に応じて適切に働かせていく。
「息を吸うための力」と「息を吐くための力」が両方働き、拮抗している状態。これが「息の支え」と呼ばれている状態と思われます。
素早く効率的に息を吸うには
「素早くたくさん息を吸うにはどうしたらいいのですか?」
…よくある質問です。
ここまでお話ししてきたように、息を「吐く」ための筋肉と「吸う」ための筋肉は別のものです。 そのため素早く効率的に息を吸うには、まず息を吐くための筋肉に素早く"休んで"もらう必要があります。 そして息を吐くための筋肉があるのは、その多くが胴体部分=お腹周り。
たくさん吸いたいときに考えたいのは、まず
「お腹休んで!!」
…ぜひお試しください。
息の柔軟なコントロールに必要なこと
より柔軟にパワフルに息のコントロールをするには、股関節や脚も常に自由に動ける状態であることが大切です。
前述した、空気を上方向に動かす役割を持つ筋肉「骨盤底筋群」は脚の付け根(股関節)の間あたりにあります。あまり感覚がない部分なので分かりにくいですが、息を吐くときに必ず動いてくれています。
また息を吸うための代表的な筋肉である横隔膜と、胴体と脚を繋ぐ大腰筋という筋肉は、脊椎においてとても接近しており、密接な関わりを持っています。
立奏、座奏ともに演奏時はいろいろな動きができますが、脚のことは忘れがちですね…。ぜひ意識の中に入れてあげてみてください。
長くなりましたが、ひとまず「呼吸のアップデート」シリーズはここまで。
お読みいただき、ありがとうございました。
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