見出し画像

大谷翔平はAIで再現可能か?【新時代の起業術】

毎週月曜日は「新時代の起業術」
AI革命により大きく変化した成功する起業の方法をお伝えします

前回は起業家がSNSを駆使してファンを作り出す方法をお伝えしました。

今回は少し立ち止まって、そもそもAI時代の起業家が「ファン」を持っておく必要性について考えてみます。大谷翔平選手と藤井聡太名人の事例から、AI時代の変化がもたらす市場環境の変化についてお伝えしていきます。

最後はAI時代に起業する人が理解しておくべき「総タレント社会」の概念を説明していますので、ぜひ最後までお読みください。

この記事を読むべき

・変化が激しい業界でAI時代に生き残れる自信がない
・AIの浸透で事業の前提が変わってしまうのではないかと心配。
・AI時代に起業して成功する方法を知りたい。



「シンギュラリティに達し、人間はAIに取って代わられる」

シンギュラリティは2010年代後半に盛んに議論されたテーマです。
果たして2024年現在、そのシンギュラリティに達する直前まで来ています。

ChatGPTを使えば、一部の仕事がAIにとって変わられることは自然なことだとすぐに分かります。しかも、AIの発展は非線形。非AIエンジニアの私たちから見れば突然ChatGPTのような存在が生まれたように見えます。

こうした背景から考えると今後、どのような仕事が正確に奪われるかを見極めることが難しいかもしれません。
一方で絶対になくならない仕事は予想することができます。

それは受け手側が「人であること」に価値をおくような仕事。

この点について理解を深めるために、現代における大谷翔平選手と藤井聡太名人の人気の構造について考えてみましょう。


大谷翔平は再現可能か?

大谷選手の現在の成績に、AIが関係していることはご存知でしょうか?現在の野球界はAIの利用が盛んになっています。

大谷翔平選手は特にその利用に積極的なようで試合前の相手選手の分析には大量の資料と共にアナリストの元に訪れるそうです。

以下の状況が現在の野球界(MLB)であると言えます。

試合前には対戦投手の球(ボールの回転軸、方向、リリース位置、球速)を再現したマシンでバッターが練習し、それをかいくぐるように投手がその試合のプランや打者の弱点を突く、といういたちごっこが繰り返されている

大谷選手の驚異的な成績はこうしたAIとの二人三脚の末に手に入れたものだったということです。

一方で、MLBの状況から考えるに大谷翔平選手はAIによって再現可能であると言えます。つまり大谷翔平選手と投手としてほぼ同等の球を投げ、打者としてそれを打ち返すことのできるマシーンはすでに実現している訳です。

しかし、私たちは大谷翔平選手を高く評価し、その活躍を観たいと強く感じます。これは大谷翔平選手はAIによって再現可能であるものの、一方で唯一無二の存在であり得ているということを示しています。

野球選手としての大谷翔平は再現可能でありながら、人間としての大谷翔平の再現は不可能であるということを意味します。この点を頭に留めながら次は藤井聡太名人についても見ていきましょう。


藤井聡太はなぜ生まれたか?

将棋の世界はAIが早めに導入された業界としても有名です。

2010年代には人間のトップ棋士と将棋AIが戦う電王戦が有名になりました。最終的には「人間はAIに勝てないことが分かった」という理由で終了となりました。


この頃、人間がAIに勝てなくなったことに絶望し、将棋というゲームの限界を訴える言説が多く見られるようになりました。

…しかし現在の将棋は活況に続いています。

それどころかAIとうまく共存することで「観る将」という存在が生まれるなど、結果として将棋ファンの裾野が広げる結果となっています。

前人未到の8冠を達成した藤井聡太名人の登場も、この将棋の人気に強い影響があることは容易に想像できます。

大谷選手と同様、藤井名人はAIと二人三脚で研究を進めることで今のレベルに達したといっても過言ではないからです。

このように将棋の世界もAIをうまく取り込むことでファンの獲得と競技レベルの上昇という2つのことを実現しました。「プロ棋士」がAIによって負かされるという絶望的な局面をうまくチャンスに変えた訳です。


大谷選手や藤井名人の事例はAI時代における次の2つの本質を示していると言えます。

AIと二人三脚で仕事をする能力が高い人物が、これまでの人間には不可能だったレベルの成績を上げることができる。
②AIによって人間の仕事が実現可能でも人は「人間がやっていること」に価値を感じる場合がある。


つまりシンギュラリティが到来し、人間をAIが超越した時代であっても、消費者は「人間の温もり」には価値を感じるということです。

実際に藤井聡太名人の存在や「観る将」の増加もあって、2023年度の将棋協会の経常収益は6億円増の過去最高の40億円と大台にのせています。MLBのリーグ総収益も116億ドル(※非公式情報)となっており、過去最高益となっています。


だから私たちは"コアファン"を持つべきである

さて「大谷翔平選手」と「藤井聡太名人」の考察から分かることは、AIによって "人間の温もり"が通うような仕事は奪われないということ。

より噛み砕いて言えば…

「人がやっている」ことに価値がある仕事は、なくならない。

例えば将棋やスポーツ、芸術などの文化的な仕事や一部の接客業などの仕事が挙げられます。こうした仕事は「人と人の真剣勝負」「人の優しさや温もり」などが商品価値になっています。

だからこそ、いくらAIが人間よりも強くなっても、AIによって再現可能なスキルであっても「人間がやっている」ことにお金を払ってくれるということです。

これは結局、最終的な買い手が人間であるという構造に由来しています。
そしてこの点こそAI全盛期の今の時代に起業をする私たちが理解しておくべきことであると言えます。


なぜ金融業から仕事が奪われるのか?

翻って、AIにより仕事が奪われる可能性が高いのは金融業界であると言われています。これは最終的な結果が「お金」という数値で示されるためであると考えられます。

こうした「合理的な結果」を商売としている以上、金融業界の多くの人間がAIによって仕事を奪われるという未来はほぼ確実であるといえるでしょう。


一方で「人の体温を感じられる仕事」は合理性を売りにはしていません。私たちが「藤井聡太名人の前人未到の記録」や「大谷翔平選手のホームランを見たい」と思う気持ちは、今後も不変でしょう。

それは私たち人間が「人間に興味がある」生き物であるためです。
これは人間が人間である以上、未来永劫不変のことであると言えます。


AIによって事業が置き換えられる危険性

さて私たちが生み出す事業の多くは残念ながら「便利」や「合理性」を売りにしています。そのため苦労して生み出した事業であっても、ある日突然AIに取って代わられることもあり得ます。

金融業は100年以上に渡って私たちの市場の中心に位置してきた産業です。それがAIによって置き換えられてしまうのであれば、私たちが生み出した事業もいつAIに代替されるか読むことは難しい訳です。

したがって、AI時代に挑戦をする起業家はこの矛盾を克服しなければなりません。

そして「ファン」こそがその答えだと言えます。


AIと仕事をし、「ファン」を作れる起業家が活躍する

ファンがその人物に抱いている「共感」や「憧憬」の気持ちは、割り切れません。大谷選手の怪我や藤井名人のタイトル陥落があったとしてもファンは応援し続けるでしょう。

むしろそのピンチからどのように立ち直るか、という物語にこそ胸を熱くします。

これと同じ構造を今こそ起業家は作る必要があります。まずファンを作り、そのファンと共に起業をする。もしもAIによって事業が塗り替えられていっても、ファンと共に再起を図る。

一方でAIを旺盛に取り入れ、起業家としての自分の能力を高め続ける方法も忘れない。

こそこそがAI時代の起業家のあるべき姿であると言えます。


鍵はキャラへの「信頼」

さて、今回の記事の核心に迫ってきました。変化が激しい市場環境の中で生き残るためには事業ではなく、起業家としての自分をタレントと見立て、これにファンをつけておくことが必要になります。

つまり「総タレント社会」の到来です。
この社会では以下のようなことを認識している人が人物が活躍することになります。

・「ファン」に自分がどのようなキャラとして認識されているか?
・自分の「ファン」はどんな人か?
・「ファン」は何を期待し、何をすると失望するのか?

これらを把握し、自分の「ファン」との関係性を強めていくことができる人こそがAI時代に活躍できる人材であると言えます。

これはまさに、これまでの「タレント」が得意としてきたことです。自分の「キャラ」を作り、ファンを育て、そしてファンと共に活動を成長させていく。

会社に属さず、社会と直接接する起業家や経営者には、早めにこの波が訪れることになります。

そのため、起業家や経営者は、これまでの芸能人やスポーツ選手と同じように、自分のキャラを身につけ、それをマネジメントしてファンとのコミュニケーションを適切に図ることが求められていくことになります。


次回予告

「新時代の起業術」シリーズでは起業家が「コアファン」と共に事業を成長させていく方法をここまでお伝えしてきました。特に前回の記事ではAIを駆使しながら自分の「キャラ」に合うファンとマッチングする方法をお伝えしました。

しかしマッチングをしただけではファンを事業の中核に据えるほどの存在(=コアファン)にはできません。次回より「信頼」を元にファンとの関係をより強固にし、事業の方向性を決定づけていく方法についてお伝えします。

更新は7月1日(月)
フォローをしてお待ちください。


合わせて読みたい


この記事が参加している募集

#AIとやってみた

28,024件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?