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早気

最近、ツルネというアニメを見たのですがドハマりしてしまいまいした。

『ツルネ -つながりの一射-』公式サイト (tsurune.com)

このアニメは弓道に関する作品なんですが、弓道のアニメって今まであんまり聞いたことないなーと思って知った当時は珍しいなと思いました。

僕は以前、弓道をやってた時期があったので、興味本位で見てみたんです。

ざっくり概要を説明すると、早気に悩む湊という男子高校生が周りの部員との関わりを通して、この早気を克服していくってアニメですね。(語彙力)

未経験者からすると、そもそも早気ってなんだよってところからですよね(笑)

経験者の僕としても、なかなかマニアックな内容だなと思いました。

早気について説明します。

弓道では弓を放つまでに幾つかの工程があります。

これを射法八節というのですが、矢を放つ寸前の工程をと言います。
射法について|公益財団法人全日本弓道連盟 (kyudo.jp)

この会の状態で心身を統一させて、次の離れで矢を放つんですね。

会の状態では、矢は口元まで引きます。

これを口割と言います。
※この口割の位置は教わる場所によって若干違うみたいですが。

早気というのは、この会の状態が極端に短い、もしくは口割の位置まで弓を引かずして離れに移ってしまう状態を指すんですね。

読んで字のごとく、早い気持ちと書くように、気持ちの焦りからくる症状です。

これは僕もなったことがあるので良くわかるのですが、結構根が深いんです

早く矢を放ちたいという気持ちが先行して、これが悪化すると自分でコントロールができなくなってしまうんですね。

本来は会で気持ちを静めた状態で離れに移るのですが、ここの自制が効かないため意図せずに早い段階で矢を放ってしまう症状です。

加えて、不安定な状態で矢を放つので結構危ないです。

しかし、この早気という症状は弓道に限った話ではありません。

合気道や他の武道でも通じる部分が多々あります。

合気道に限って言えば、相手を崩してやろうとか、自分の思い通りに動かしてやろうなどの心理状態は早気と似た症状です。

要は自制が効いてない状態なんですね。

合気道の場合では相手が存在していますが、自分自身をコントロールできていないという点で本質は同じです。

結局、自分の欲が先行すると相手(自分)と衝突が起きて上手くいかないんですね。

不世出の弓道家と言われた阿波研造氏という方は、自分で当ててるのではなくそれが当てているという表現をしています。

「それ」とは何かというのが凄く気になるのですが、これは合気道の植芝盛平先生が仰っていた、宇宙と一体になるという表現とほぼ同義だと僕は思っています。

要は自分の意志でどうこうしようとするのではなく、自然に身を委ねるということなのかなと思います。

詳しい内容を知りたい方は、弓と禅という本をぜひ読んでいただければと思います。
新訳 弓と禅 付・「武士道的な弓道」講演録 ビギナーズ 日本の思想 (角川ソフィア文庫) | オイゲン・ヘリゲル, 魚住 孝至 |本 | 通販 | Amazon

弓道は一見すると、ただ弓を引いてるだけのように見えますが、実はそんな表層的な世界ではありません。

その時の自身のコンディションに大きく左右されます。

自身では同じ射形だと思っていても若干、昨日と違ったり、そもそも心理的な状態も常に一定に保つのは容易ではありません。

毎日、過ごしていれば当然、気持ちの浮き沈みだってあります。

いかなる状態でも心の平穏を保ち、一定のコンディションを維持するというのは、それだけでも相当な精神修行になるんですね。

こういった武道の奥深さや、その修練の難しさを上手く表現してるなーと思い、とても素敵なアニメだなと思いました。

繰り返しにはなりますが、この内容は弓道に限った話ではなく、合気道や他の武道にも当てはまることだと思います。


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