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アニマルウェルフェア③ 日本魂

『アニマルウェルフェアの取り組みが世界的な潮流となる中で、日本は出遅れていますが、今後日本ではケージフリーは拡がっていきますか?』
取材に来た記者が私に訪ねました。私は以下のように答えました。
『日本が出遅れているとは思っていません。昔も今も変わらず私達は鶏を大切に思って飼養管理をしています。ケージフリーが拡がるかどうかについては、日本の消費者がこの問題をどのように捉え判断するかで決まります。どのようなたまごを求めるかによると思います。』

一部のマスメディアで、私達日本の養鶏家は鶏のアニマルウェルフェアを考えていない遅れた業界であると決めつけているような風潮がでてきました。欧米のやり方が最先端である、従来のケージ飼いはアニマルウェルフェアではない、欧米型ケージフリーや平飼いはアニマルフェルフェアだ、っというような単純なステレオタイプの考え方です。

私はこのような記事を読むと悲しくなります。日本の養鶏業界は世界の中で最先端だと思っているからです。たまごを生で食べる国は日本以外ほとんどありませんが、その文化を守るために世界一安心安全なたまごを生産する仕組みを創り上げてきたからです。そして、こんなにも栄養豊かな食品であるたまごを、安全をキープしながらも徹底的なコストダウンにより誰にでも食べられるリースナブルな食品に創り上げてきたからです。そしてたまごは、物価の優等生となり、1人1日1個を食べるたまご大消費国となりました。私達養鶏家は日本国民が求めたニーズを忠実に再現してきたと私は考えています。そして、私達日本の養鶏家は鶏のアニマルウェルフェアの向上を忘れたことはありません。採卵鶏は毎日たまごをお産する母親達です。私達はお世話係でありその役目は、彼女らがもっとも健康にすることなのです。空調を整え、フレッシュなエサと水を供給し、万病のもとである糞の接触をなくすことです。健康だからこそ、多くのたまごを産んでくれるのです。健康な鶏がおいしいたまごを産んでくれるのです。

私達日本人は、『(命を)いただきます』を唱える国民です。『鶏懇供養』を行う国民です。つまり命をいただく生き物に敬意を払う国民です。日本の魂を持った私達養鶏家はその精神をもって鶏の飼育をしています。

だからこそ、単純に西欧からきたアニマルフェルフェア論議を流行りのように捉え、それをもって日本の飼育方法を遅れていると判断するのは、とても危険だと考えています。

私は、平飼いやケージフリーがだめだとは一言も言っていません。むしろ、消費者の選択肢が増えることはとても良いことだと思っています。私自身いち鶏飼いとしていろいろな飼い方に非常に興味を持っています。

しかし、西欧のアニマルフェルフェアの論議は、ケージ飼いのネガティブキャンペーンと平飼いの良いイメージの植え付けから始まります。それは意図をもって、自分達の方向に持っていこうとしているからでしょう。国によってその思惑は違いますが、例えば、ビジネス主導権争いであったり、思想団体の目標達成であったり、政治闘争であったりします。私達日本人は賢い選択をする必要があります。選択肢を排除せず冷静にこのアニマルフェルフェア議論をすすめるべきだと思います。

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