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ロックダウン中のドイツにおける手厚い補償 -現金給付だけじゃなかった-

緊急事態宣言が日本で行われたことと関係してか、友人から「ドイツの補償はどうなっているの?」と聞かれることが増えました。手厚いというイメージはあるものの、よく知らなかったのでこれを機に調べてみました!

まず結論からいうと、
・連邦政府の支援とは別に各州が独自支援している!
・現金給付だけじゃない!
・雇用が失われないようにする様々な制度がもともと社会に浸透している!

ドイツでは政府による現金給付の判断がとても早かったこと、そして平常時から雇用を守る様々な制度が充実していることがわかりました。

連邦政府と州政府による現金給付

ドイツは連邦制をとっていて、立法・行政・司法で独立した16の州を連邦政府がまとめています。そのため州は日本の都道府県よりもずっと大きな権限を持っています。

新型コロナ対策においても、連邦政府が全ての州に共通した支援を打ち出し、それとは別に各州も独自に対策を行っています。つまり、現金給付と一言でいっても連邦政府が支援するものと州政府が支援するものの2つがあるのです。

ドイツ連邦政府による支援
ドイツ政府が3月22日に約500億ユーロ(5兆9千億円)の予算をつけたもの。3ヶ月分の緊急支援として、下記金額を一括で受け取ることができます。

・フリーランス・従業員5人までの企業や個人事業主
→最大9,000ユーロ(約105万円)/3ヶ月
・10人までの企業
→最大15,000ユーロ(約175万円)/3ヶ月

用途は申請後3ヶ月間の事務所や店舗の家賃、ローンの返済、従業員の人件費など、ビジネスの維持費に限られます。ロックダウンで営業できなくなっているレストランや商店などにとって必須の補償ですね。

4月24日追記:ドイツ政府は4月23日に100億ユーロ(約1兆1600億円)の追加経済対策を発表しました。詳細はこちらのニュース記事を!

州政府による支援
ドイツ政府が上記補償を打ち出す前に、ベルリン州がフリーランスと小規模ビジネス経営者に対してひとりにつき5,000ユーロ (約59万円) を給付しました。用途は自身も含む人件費/生活費です。この補償に関しては日本でもかなり話題になりました。ベルリン州はフリーランスや小規模ビジネス経営者がドイツ国内で最も多いため、このような手厚い補償が州の財源から出されたようです。
私たちが住むバイエルン州では、3月16日の州首相の会見で10億ユーロ (約1,170億円) の予算を用意したという発表がありました。この予算で中小企業の支援や文化機関等の保障を行うほか、連邦政府とは別に様々な経済支援が行われています。

現金給付だけじゃない休業補償

現金給付だけみてもかなり手厚い支援を行っているドイツですが、この他にも従来の休業補償があるので紹介します。

ドイツには、操業短縮手当制度という制度があります。営業を一時的に短縮しないといけない企業や従業者を支援する枠組みで、従業員のお給料減少分の60%(子供がいる場合は67%)を国が企業に払ってくれる制度です。企業はその支援金を使って従業員に給料を払い続けることができるのです。
例えば今回のロックダウン対策でレストランが閉鎖している期間、従業員のお給料の60%を国がレストランに払うことで、レストラン側は従業員をクビにすることなく雇用し続けられます。

本来は、こんな理由で作られた制度でした。

1. 会社の経営が悪くなると、会社は従業員をクビにする
2. そうすると失業者がたくさん出る
3. 有能な人材を会社が手放してしまうことになり、もったいない

操業短縮手当制度は、このような状況を回避するために、会社の経営状況が悪い間に一時的に政府がお金を出すことで雇用を守り、経営危機を脱した会社がもともといた従業員とともにV字回復を達成できるというものです。

この制度自体はなんと1969年にできたようです。2008年のリーマンショック後に更新され、今回新型コロナ対策としてさらに改善。驚くことに正規社員だけでなく、派遣社員も対象です。手厚い。。

ドイツにはこういった制度を長い間運用してきたノウハウがあり、企業や国民も制度について知っているので、申請の簡素化も進み、今回のような緊急時に素早く対応できるのです。
緊急時に新たな制度を作るのではなく、平時に緊急時を想定した準備をしておくのがすごく大切だと思いました。

労働時間を貯めておける!?

次に、補償じゃないですがぜひ紹介したい制度です。

ドイツでは、労働者が残業をした場合にその残業時間を銀行口座のように貯めておき、後日休暇などで相殺する「労働時間口座」が、労働者全体の6割に普及しています。これが労働時間口座制度という制度です。
この制度を使用することで、新型コロナで休業しなければならなくなった企業は、従業員を失業させずに休暇扱いにし、後日残業をしてもらうことで休暇分を回収できるんだとか。
ちなみに、貯めた労働時間は転職して会社が変わった場合に引き継げることもあるそうです。

なお、ドイツでは1960年代からフレックス制度が導入されています。そして1990年代には、生涯にわたり労働時間を貯めることができる「長期労働時間口座」の考えが定着したそうです。
フレックス制度すらあまり浸透していない日本の企業で働いていた身からすると、腰を抜かすような制度です。日本の何十年先をいっているんだ。。。

日本政府もいち早く補償を!

実は、ほかにもドイツ政府は新型コロナ対策として
・保育施設の閉鎖で会社に行けなくなった人への補償
・家賃を滞納しても、それを理由に家を追い出すことを禁止する法令
などを打ち出しています。

今回はより基盤となる政策/制度に焦点を絞って書いてみました。

ドイツは日本と違って支出よりも税収が上回るお金持ち大国だからな、と片付けるのは簡単ですが、国民・働く人が手厚く守られているドイツから日本が見習うべきところはたくさんあるなと感じました。

ドイツは、いい意味でも悪い意味でも国民は遠慮しません。自分の権利だと思えば声高に主張し、権利を獲得していきます。紹介した様々な制度も、ドイツ国民が過去に権利を主張して獲得していったものです。

今回の新型コロナ対策で日本政府はとてもバタバタとしている印象を受けます。最初の支援は融資のみ、商品券の話が出たと思ったら消えてマスク2枚が急浮上、現金の給付になったかと思えば対象や額が変わり、そして給付時期もかなり遅くなる見込みとのこと。

自粛・休業要請と補償はセットで行うべきです。自粛要請で収入がなくなっている多くの人たち、生活のために感染に怯えながら営業を続けなければいけない人たちなど、必要としている人に必要な支援が早く届くように願っています。
また、今後また来るかもしれない緊急時のために、日本でももっと国民と経営者、労働者が守られる制度が整うといいなと思います。

参考

最後に、紹介したドイツの制度などについて書かれている記事を紹介します。
https://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2020/03/germany_01.html
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00030/040800093/
https://www.jil.go.jp/foreign/labor_system/2016/12/germany_01.html
https://berlin-gurashi.com/for-those-whose-parenting-time-has-increased-due-to-corona
https://courrier.jp/news/archives/196471/

※ヘッダーは近所の八重桜の写真です。ドイツにも桜は咲いていて、桜並木もあるんですよ~!!

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