嫌いになった記念日 ~#同じテーマで小説を書こう~

貴方がこの家を出てもう3ヶ月。

「ただいま」

と家に帰る、嬉しそうに出迎える姿はない。同棲して1年経った癖はなかなか拭えないようだった。
2人分のご飯をよそって、食卓に持っていき向かい合わせに並べる。食べ始めて1人だった事に気づく。涙を混ぜながらご飯を口に頬張っていた前までの私、今では涙も出てこないや。

どうしてなんだろう

何がいけなかったのだろう

ちょっとしたすれ違いは少しずつ溝が大きくなった。積もり積もった思いが「別れ」という決断に結びついてしまったのだ。

この1年、たくさんケンカをした。貴方を罵って、人格否定ともいえる暴言を吐いた私はどんなに醜く見えていただろう・・・大事な人を失って初めて気づく。
どんな私も受け入れてくれると多寡をくくっていた。ケンカをしても最後には貴方から「言い過ぎた、ごめんね」と言ってくれると信じていた。

貴方の優しさに寄り掛かっていた

1人になったのは全部自分のせいだ。今頃気づくなんて・・・


そんな事を考えながら夕食を口に運ぶ。ブロッコリーとベーコンのパスタ、いつも仲直りした時に決まって作ったレシピ。一緒に暮らし始めたころはお金がなくて、毎日数百円でどれだけ美味しく料理できるか挑戦していた。160円の冷凍ブロッコリー、90円のハーフベーコン、110円のスパゲッティー。味付けは塩コショウ、私たちには何よりのご馳走だった。

そんな小さな事でも毎日が幸せだった

ある程度稼げるようになっても、定期的に作るのは原点を忘れたくない思いをお互い持っていたから。どちらからともなく話が始まり、私は貴方の話を聞き、貴方は私の話を聞きそれだけ。何のアドバイスでもなくただ聞いているだけで楽しかった。あの頃には確かに絆があった。1人の今も同じ味、悔しいくらいに。

次の恋するのはいつになるのか分からない、まだ私は貴方に恋をしている。想いが風化して新しい恋に踏み出した時には、今度こそは尊敬する事を忘れないようにしよう。自分の気持ちばかり優先せず、相手を思いやろう。愛を置き去りにせず、育んでいこう。
思い出の詰まったパスタをこの日から卒業した。


スーパーでブロッコリーを見ると少し苦く甘酸っぱい思いになる。卒業したあの日から食卓から消えた。野菜に罪はないのにね(笑)
何も思わず食べれるようになったら、きっと大きな自分になっていると思う、それまで待ってって。いつかそんな日が来るから。


悲しい「別れ」ほど人を成長させる

何かの本に書いてあった、本当にそうだと思う。
貴方とは別々の道を歩む選択になったけど、無駄になったわけではない。辛い事も泣きはらした日も大切な記憶だ。こんな私を好きになってくれてありがとう。貴方と過ごした私は少しだけ子供だった、いつか再会したら伝えよう

”幸せになってね”って


この企画に参加しています。しほさん、ありがとう。





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