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悔やんだ時間を笑い飛ばせるように

たくさんの後悔がある。

あの時こうしとけば、どうして気が付かなかったのか。

いつも自問自答を繰り返す。

鬱になった時もそうだった。もっと早く危険信号を発していれば休職する事もなかったのに。考えをまとめるのに時間がかかる性分の私はいつも大事な事を後回しにしてしまう。今では復職しているけれど目に映る風景、感情は変わってしまった。昔は自分の感情に素直に行動していた、間違っていることは間違っているといえる人だった。今は間違っていても何も言えない、誰かの助言がないと行動できない人になってしまった。突っ走る勇気はどこかに置いてきて、いつも何かにおびえる日々。

どうしてこんな風になったんだろう・・・。

答えが出ない問いを何個も抱えて生きている。

本当は何もかも投げ出したい、逃げてしまいたい。でも、働かないと食べてはいけないから毎日職場に向かっている。いつも人間性が問われる職場、周りの同僚がはるかに能力の高い人間に見えてくる。

欠陥品になってしまった私は普通ではないから。

働けば働くほど自分の不甲斐なさに苛まれる。それでも歯を食いしばってしがみついているのは、この場所しか私の生きる道はないから。
どんなにみじめでも、どんなにあしらわれてもいつ情緒不安定になるか分からない私には転職する道は険しいに違いない。ちょっとした事で仕事中涙が出たり、パニックになったりする・・・もう前みたいにバリバリ働くことはできない。

いつになくネガティブになっているのは、この間の夜勤での出来事があったから。




今の職場は正社員であれば必ず夜勤をしなければいけない、看護師として業務に携わっていたとはいえ2年間ほど夜勤をしていなかった私には不安があった。夜勤し始めて3か月経った今も夜勤に入る緊張感は拭えないでいる。日中落ち着いている患者さんはなぜか夜間、状態変化する事が多かった。経った二人でそれを乗り越えなければいけない・・・また長い夜が始まるのである。

先週の夜勤、日付が変わるころ

「じゃあ先に入ってくるね、3時間いこうか。」

相方の同僚がいつもの調子で話す。朝までは1時間毎の見回りだけで変わりなければ落ち着いた時間、交互で休憩に入る。カルテに記録を終えられないでいる私に気を使って先に入ると言ってくれた。

「何かあったら、いつでも呼んでね」と言い、先輩は休憩室に入っていった。

これからは1人の時間、少しの不安を抱えながらも自分のちっぽけな手のひらに患者さんの命がかかっているのだと感じると、うなだれて座っていた背筋がシャンとなった。

0時、1時とちょうどの時間に病棟をラウンドする。1つ1つの病室に入り、呼吸しているか確認をする。落ち着いた呼吸で寝息を立てている患者さんを見て安堵しては次の病室に向かう。同じ行動を繰り返し最後の部屋へ、入院したばかりの患者さん。日勤さんの申し送りでは、死期が近くお看取りの方だった。家族に付き添いを説明したが、一旦帰って準備をしてから次の日から付き添いの予定だった。それも、コロナの影響で面会禁止となり家族であっても制限がかかっていることも付き添いを躊躇する材料になっていた。病院内に入ってしまったのなら、食料を買いに外出する事さえも最小限となり付き添う家族は半隔離の状態になってしまう。それ相応の準備が必要になるのだろう。病状の変化があった時にはすぐに連絡すると伝え病院を後にした。

0時には呼吸が少し早かったのだけど、穏やかな顔で眠るその人。大丈夫かなと思いながらナースステーションに戻り残りの仕事を片付ける。1時に様子を見に行くと険しい顔で胸を押さえている姿があった。

これは、急変かも

血圧を測るも測定できない。数秒の中でみるみる内に変化していく状態。以前より呼吸も浅くなっていた。

「どこか痛いんですか?」の質問に

私の目を見て頷かれる。鎮痛剤を使用する事を伝えると再び頷いたので投与する。その間にも検温をしたりと数分1人で格闘した。1人で対処できないと悟った私は申し訳ないと思いながらも、休憩中の先輩看護師に声をかける。

「すいません、○○さん痛みが出てきて鎮痛剤投与しましたが。呼吸が止まりそうなんです」と説明する。

「家族に連絡した?」との質問に

「まだ連絡してません」と告げる。

休憩室から出た先輩に起きたことの詳細を報告する。
「0時の時点で呼吸状態が変化していたみたいだから、その時家族に連絡するべきだったですね」

冷静に、淡々と言ってきた。

私は上手く対処できなかった。家族が到着した時にはすでに呼吸は止まっており生きているうちに会うことは叶わなかった。

もっと早く判断して連絡しておけば・・・
変化があったうちに先輩に相談しておけば・・・

後で悔やんでも結果論にしかならない。

数日経った今でも後悔の思いは消えない。いつまで悔やんでいたってどうしようもない。それでも私の心には色濃く残ってしまう。私じゃない人が携わっていたらこんなことにならなかったんじゃないか、私はこのまま夜勤をし続けてもいいのだろうか・・・?
後ろ向きな考えが頭中を駆け巡る。

仕事をしている以上たくさんの失敗をしながら成長する。失敗しない人などいない。分かっている、だけど誰でもない私が私を許せない。

”こんなことくらいなんで出来ないんだ”

誰よりも厳しい心の中の自分がそう叫ぶ。



たくさんの後悔がある

あの時こうしとけば、どうして気が付かなかったのか。

いつも自問自答を繰り返す。

明確な答えが出るのはもう少し先の未来。それまで誠実に生きていくしかない。普通の人よりも理解するのに時間がかかる私には核心を見出すのは至難の業。失敗しても挫折してもみっともなくても必ず明日は来る。どうやって心を立て直すのか分からないままだった。それでも太陽は昇って沈んでいく。
後悔がやがて意味のあるものになったら心が晴れるのかもしれない。その日が訪れてはじめて「葛藤」という壁を乗り越えることが出来るのだろう。


いつか笑って「こんな悩みもあったっけ」と明るく話せる日が来たらいいな。


最後まで記事を読んでくれてありがとうございました!