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『ドラゴンボール』と『北斗の拳』で学ぶ奥義の神髄とAI制御

 1960年代から1970年代は、生物兵器や核兵器によって人類が絶滅することをテーマにした小説が多く、1980年代にはコンピュータをテーマにしたディストピア世界を描いたSF小説や映画の傑作が多く登場しました。

 小松左京1964年に小説として発表した『復活の日』は、1980年に映画化されてヒット作になりました。小松左京や星新一の作品は、英訳されて世界的に知られている作品が多数あります。

 映画『復活の日』の英題は『Virus』で、新型コロナウィルスの世界的な流行を背景に、2020年に入ってから再び現実味を帯びた作品として脚光を浴びることになりました。

『復活の日』にはMM-88と呼ばれるウイルス兵器が登場し、ウイルスが活性化しない南極と原子力潜水艦の搭乗員を除いて、人類の大半が滅亡してしまいます。そしてこの映画の後半では、米国大統領を含むアメリカ住民全員がウイルス感染により死亡した後、アメリカ軍の自動報復システム(ARS)が地震を核攻撃と誤判断し、米ソ間で人類不在のまま全面核戦争に突入する展開が続きます。ARSは架空のシステムですが、原作が書かれた1960年代から相互確証破壊(Mutual Assured Destruction:MAD)は稼働しており、現在も稼働中です。

 核兵器は地上のミサイル発射基地から発射するものもありますが、ミサイル発射基地は攻撃の第一ターゲットであり、破壊される可能性が高いので、核兵器保有国は核兵器を常にトラックで移動しながら捕捉し難くする方法や、大陸弾道弾(ICBM)が撃墜される可能性に備えて、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)などもあります。
 
 広島に投下された原子爆弾は『リトルボーイ(濃縮ウラン)』、長崎に投下されたのは『ファットマン(濃縮プルトニウム)』です。これらはB29戦略爆撃機から投下されました。現在でも核兵器は爆撃機に搭載可能で、さらに巡航ミサイルにも核兵器が搭載されています。

 COSMOSでカール・セーガンが紹介したことで、日本でも有名になった1947年に創設された世界終末時計(Doomsday Clock)の残り時間は、2023年時点がこれまでの歴史上最悪の状態で、90秒前になっています。これは実際に90秒で人類が滅ぶのではなく、人類史を24時間で捉えると、人類史はあと90秒で滅ぶリスクがあるという意味になります。 

 近年問題となっているのが、AIによる相互確証破壊の再構築と、キラーロボット(完全自律型兵器)の実戦配備問題です。

 AIには意識も感情もなく、単に計算して、計算結果を出力して、その出力データに対して、様々なデバイスが反応しているだけであることは、このブログでは何度も説明している通りです。
 
 制御系AIのことに詳しくない方は、デバイスとはディスプレイ、スピーカー、マイク、カメラやビデオ、通信機器、記憶装置などのことだと思っている方が多いです。ところが、デバイスには、様々なセンサー(温度、湿度、照度、電磁波、震度、風速、水流、放射線、音響、糖度、塩分計測など)、ロボット制御装置、自動車のブレーキ装置、ミサイル発射装置など非常に多くのものが含まれています。

 前述の小松左京原作の『復活の日』では、震度計センサーに反応して全面核戦争が始まるという設定になっていますが、実際には、震度、温度、放射線、電磁波など様々なセンサー情報や、人工衛星からの情報などから、AIがどの国から攻撃されたかを判断して、攻撃してきた国に対して報復攻撃をするのが、AIによる相互確証破壊システムです。

 キラーロボットと聞くと人型のロボコップのようなロボットを想像する人も多いですが、キラーロボットとは完全自律型兵器の俗称であり、人間の意志の介入が無いまま、AIの判断で殺戮や破壊を実行するシステムの総称です。

『意識が無い状態』の意味がわからない人がかなりいるので補足すると、意識がない状態とは、恐怖感、罪悪感などの感情が無いという意味です。人間の場合は、戦場の恐怖感に駆られて銃を乱射してしまうような問題もありますが、AIや機械の場合は、所定の条件を満たすか、誤動作すると、躊躇なく全面核戦争や生物戦争を開始してしまうという問題があります。

 ここまでが表題の『ドラゴンボール』と『北斗の拳』に学ぶ奥義の神髄の前振りで、以下より本題に入ります。このブログの読者は、何故かアニメファンが多いので、最近はアニメのタイトルから、様々なAI倫理問題をアニメに例えて解説しています。

『ドラゴンボール』における無意識の攻防

 ドラゴンボール・シリーズにおいて、孫悟空は子供のころは尻尾があり、満月の光を浴びると巨大な猿に変身し『理性を失い』破壊行為を行ってしまいます。理性や感情がない状態は、コントロールを失った暴走状態と言えます。

 その後、孫悟空はフリーザとの戦闘で、フリーザによって親友のクリリンが殺され、フリーザに茶化されたことでの『怒りの感情』から、スーパーサイヤ人に変身します。スーパーサイヤ人になっても、意識は僅かに残っていたので、フリーザを殺さずに助ける意向を示しますが、その後、フリーザの反撃により、正当防衛の結果、フリーザを倒します。

 孫悟空はその後も強敵が現れるたびに修行により、スーパーサイヤ人2、スーパーサイヤ人3と極限まで強くなっていきます。
 
 その後、破壊神ビルスと戦う際には、五人の善良な心を持つサイヤ人の儀式によって、スーパーサイヤ人ゴッドとして宇宙を破壊できるほどの力を手に入れます。この状態は後にスーパーサイヤ人ブルーとなりますが、理性を保っています。
 
『ドラゴンボール超』においては、孫悟空はスーパーサイヤ人ブルーの状態でも勝てないヒットを相手に、20倍の界王拳を使います。その後、最終的には全宇宙最強のジレンを相手にした際、サイヤ人の状態とは関係のない『身勝手の極意』という技を使えるようになります。『身勝手の極意』とは、意識と肉体を切り離し無意識に任せる攻防のことです。要するに、無意識の攻防が最強であるというのが、ドラゴンボールにおける最強に対する考え方です。

『北斗の拳』における無意識の攻防

 北斗の拳ではケンシロウの兄で拳王と呼ばれるラオウが『無想陰殺』という奥義を使いますが、この奥義は無意識無想に繰り出される必殺の拳で、ここでも無意識に躊躇なく攻撃することが、最強ということになります。

 ケンシロウが自らよりも圧倒的に強いラオウと戦うときに繰り出した奥義は、『無想転生』と呼ばれます。この奥義は北斗の拳の長年の歴史においても極めることが困難な技ですが、この技は、相手の攻撃を無意識で回避すると同時に、対戦相手が防御不能な無想の拳を浴びせる攻防一体の奥義です。つまり、北斗の拳においても無意識の状態が最強ということになります。

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