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建築とソーシャルディスタンス

新型コロナウィルスの影響で、これまで私達が過ごしてきた日常生活は急激な変化を余儀なくされました。
多くの人の意識を速やかに変えるためのわかりやすいキーワードとして、「ソーシャルディスタンス」という言葉が広まり、テレビやラジオなどでもよく聞くようになりました。

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人と人が距離をとって生活をするのは意外に難しく、また、飲食や音楽や観劇、スポーツ観戦など、人との距離が親密であることで、より楽さが増すことも多く、応急的に一律どのような場合でもソーシャルディスタンスを心がけて、一定期間我慢をすることは出来ても、冷静に考えて、これから先、今のような状態が長期的に日常化するということについては現実的じゃないと考えている人は多いのではなでしょうか。

日常が変わればそれに伴って生活の場である様々な場所も変化してゆく必要がありますが、何が正解かというその答えについては、今後少しずつ見つけてゆかなければならないと思っています。
コロナ以前にも、日本の住宅は、時代とともに変化を続けてきました。
私が生まれてから今までの、この40年程度の短い間だけでも、個室を多く設ける間取りから、個室よりも家族みんなが集まれるスペースを優先した間取りを選択する人が増えてきているように感じます。
特に、都市部でマンション住戸をリノベーションする場合は、弊社が手掛けた全てのケースにおいて、リノベーション前よりも個室が少なくなり、LDKを間仕切りのない一体のスペースとして広くつくりなおしています。

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都心で利便性のよい場所は、地価が高く、また、戸建住宅を建てるスペース自体が少ないので、近年では中古マンション住戸を購入してリノベーションをする人が増えてきていました。
限られたスペースを長期的に有効活用したいと考えた時、つくりすぎないことも一つの選択肢となります。
壁をつくり、部屋を多くつくることで、家族一人一人に個室をあてがうことができますが、その分家族全員で過ごすLDKは狭くなりますし、マンションの場合は戸建住宅のように自由に窓を設定することができないので、部屋によっては窓がない、あったとしても日当たりが悪い等、環境の差が生じやすくなります。

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家族団らんのスペースを削ってまで、まだ幼い子供に部屋を用意するよりは、子供が幼いうちは、できるだけ家族全員で過ごす場所を豊かなものにして、子供部屋はつくらず、将来的に確保できるように考えておくという選択肢もあります。
以下は、そのようなケースのリノベ前、リノベ後のプランと、完成後の写真です。

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リノベーション前のプランでは、洋室A、洋室B、和室の3つの個室がありましたが、後では個室は寝室一つだけとなり、その分LDKが広くなっています。

AIDAHOの事例を見返してみると、マンション住戸のリノベーションに限らず、戸建て住宅のリノベーションでも、この事例と同様に、壁を減らし、将来の変化に対応できるような余白を残した計画が多くあります。

ふかさわ

ただ、それらは全て新型コロナウィルスの感染が世界的に広がる前に実現したものなので、今後もこのような間取りを選択する人が増えていくのかどうかはわかりません。

このようなプランは、壁が少ない分無駄な費用がかからず、また、住んでから実際の生活に合わせて変えてゆけるという点でも、無駄がなくて良い選択肢だと感じる人も多いのではないかと思います。
ですが、家族が新型コロナウィルスに感染した場合を考えてみると、個室が少なく、家族が多くの時間を一つの部屋に集まって過ごすことを前提とした家は、個室の多い家とは違った対応が必要となるかもしれません。

これから先の住まいの形がどうなってゆくのか、すぐに答えを出すのは難しいかもしれませんが、これまで自分たちが建築に携わってきた経験を基に考えていってみようと思います。


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