『文殊の知恵』/掌編小説
にわにわにわにわとりがいた。
青空のもと、うららかな昼下がりの公園で二人の男が激論を交わしていた。
「なんで鳥が四羽なんだ! 庭には二羽鶏がいたんだから、鳥は二羽だろうが!」
「いいや違うね。にわにわにわにわ、とりがいたんだよ」
「何をいっているんだお前は」
「だから丹羽二羽、仁和二羽、鳥がいたんだよ。あわせて四羽だ」
「……お前、丹羽も仁和も、どこにある地域かも知らないだろ」
かの有名な早口言葉を勝手に改変してこようとする男に、何を可笑しな屁理屈を。滅茶苦茶だ。と呆れていると、
__「ちゃう」
話を聞いていたらしい通りすがりの男が立ち止まり、鋭い声で口を挟んだ。
「鳥なんかおらん。ワニが二匹や。庭には2ワニ、羽鳥が言った」
「は?羽鳥って誰よ?」
急に話に入ってきた第三の男に警戒しながらも反射的に返事をしてしまった。
「ワシや。知らんのか」
いや、知らんけど。
その後、鳥の数は間をとって三羽ということになった。
意気投合した三羽烏もとい三バカは、寄り集まってもんじゃを食べに公園をあとにした。
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