第2夜👀ペット産業動向　“延びるペットの寿命と最新の猫の健康対策”

2023年9月24日 15:44

230110_更新 230924

23年1月7日の産経新聞の記事で「ウサギを飼う人が増加、コロナ禍ブームで中高年層　虜」という記事がありました。
うさぎ年の今年にあやかってか？うさちゃん人気だそうです。
一方、アメリカ、ニューヨーク州では24年12月からペットショップでの犬、猫、ウサギの販売が禁止される法案が成立したそうです。

犬、猫に交じって“ウサギ”が⁉　
なぜ、ウサギ？が入っているのか？これは、不思議ですよね。
アメリカでは、春を告げるイースター祭（復活祭）の後に、捨てウサギが急増するそうです。
ウサギは、“イースター・バニー”と呼ばれ、復活祭で目にするイースターエッグを運ぶ役目があります。
復活祭にウサギが登場し、その後に捨てウサギが急増してしまう。
そんな残念な現実があるそうです。

●コロナ禍でペットの数が急増

さて、コロナ禍の巣ごもりの日々。　世界中の人々は、その癒しをペットに求め、ペット数は急増しました。

22年3月の経済産業省が発表した「ペット産業の動向」ではコロナ禍でも堅調なペット」とありました。

家計におけるペットの支出は拡大傾向。
2人以上世帯調査でコロナ禍に入った2020年は前年比2割アップです。21年にはわずかに減少していますが、コロナ前の19年比では12.4％アップとやはり増加です。

ペット数は、少し前の2020年調査になりますが、
犬の登録数は約609万頭、そして猫は犬より多い(民間調査）という
データがあります。
（猫は狂犬病などの登録がないので公的統計はありません）

例えるならば、東京都人口が約1369万人なので、
犬はおよそ2人に一匹飼っているイメージ。
更に、人口と犬の数で例えると約半数が犬って事になります。
結構な多さが、イメージされますよね。

そしてペットの家族化により動物病院へ行く人も増え、ペットの寿命も伸びています。

この調査では、今後も単身世帯の増加や、世帯人数の減少により、生活の中でペットの存在が重要な位置を占め、家族どうようの存在となる傾向が一段と強まるのではないでしょうか。と、まとめていました。

今夜は、“延びるペットの寿命と最新の猫の健康対策”について調べてみました。

●最近のペットの寿命

一般社団法人ペットフード協会　調査「2022年全国犬猫飼育実態調査」によると、犬と猫の寿命は以下となっています。
　　　犬の平均寿命は14.76歳
　　　猫の平均寿命は15.62歳　

そして、この30年で寿命が約2倍も延びたといわれています。

1994年犬の平均寿命は11.6才、猫の平均寿命は8.9才です。
自分の事で振り返ってみると、近所の犬や猫は10歳を過ぎると長寿という感覚でした。

一方、私たち日本人の寿命は
　　2019年　女性　87.4才　、　男性　81.4才　　
約30年前　
　　1990年　女性　81.9才　、　男性　75.9才　

約30年で平均寿命は＋5.5才です。

つまり、私たちの感覚以上にペットは急激に長寿化したとい事ですね。
私たちが今までの感覚で一緒に暮らし始めると、ペットたちを残して私たちの方が先に旅立ってしまう可能性があるということですね。

●長寿化の3つの要因

長寿化の3つの要因（一般社団法人ペットフード協会）
①    室内飼いが増え、事故やけんかで命を落とすリスクが減ったこと
②    ペットフードの質が向上したこと
③    病気の予防が浸透してきたことや、薬や治療方法が発達したことなど

こうして寿命が延びるのは嬉しいのですが、ペットも年をとれば、人間と同じように病気がちになります。高齢犬や高齢猫の病気や介護が、飼い主にとって最大の悩みとなっていますね。
一方、平均年齢が上がっても、「老化」は「老化」！
その年齢に合わせた食生活が大切となります。猫は7歳以降になると徐々に老衰症状となるので高齢猫用フードに切り替えがおススメ、だそうです。

●認知症に腎臓病と、人間と同様に悩みを抱えるペットたち

ペットの認知症　犬は13才、猫は15才で急増

高齢になるに伴い、認知症を発症する犬や猫も増えています。
犬は13才で急増するそうです。そして犬種では日本犬（雑種、柴犬）が多いという報告がありました。
猫は15才を超えると発症が増えるそうです。高齢以外にはストレスも認知症の引き金になることもあるそうです。

●猫の認知症の場合

症状：「これまでと違う状態になる」というものがほとんどです。

例えば、
１）食欲の異常
・食べ物の好みが変わり、これまで好きだったフードを食べなくなる
・食事をしたのに更に他のものを食べようとするなど
２）異常行動
・狭いところに入り込んだまま出られなくなる
・同じ場所を徘徊するかのようにウロウロするといった行動が現れる
３）トイレを失敗するようになり、違う場所で粗相をすることが増えくる
4）いきなり大きな声で鳴く行動　
・特に夜鳴きもするようになり、高齢になるほど鳴き方も大きくなる
5）関心や反応が無くなる
・飼い主が名前を呼んだときや、これまで遊んでいたおもちゃなどにも
　関心や反応を示さなくなる
・逆に飼い主を攻撃したり、物を破壊する行動に出る猫もいる

ただし、これらの症状が一度に出るわけでは無く、最初は1つぐらい当てはまるものがあるくらいで、段々と増えていくというケースが多いそうです。原因としては、高齢による脳や自律神経の衰え。中には人間同様にアルツハイマー型痴呆症と同じく脳が病変したケースもあります。　

●覚えておこう！　猫の健康と15才　

猫の平均寿命は約15才で、15才になると認知症が急増する事をお伝えしました。そしてこの「15才」は猫の死因の上位である腎臓病にも注意が必要な年齢なんです。

2014年の論文では15歳以上の猫の81%が慢性腎臓病と報告(J Feline Med Surg. 2014)があります。

出典　EPARKペットライフ（動物病院、サロン、ホテルを紹介）　
　　【監修医】岩尾琢/センターきた動物病院（神奈川県

私の相棒猫も慢性腎臓病が原因で旅立ちました。9才でした。

腎不全の初期症状は多飲多尿、体重減少や嘔吐、けいれん発作などです。

●猫の死因ランキング

腎臓病は猫の死亡原因の第2位。第1位はがんです。
癌が38％　3匹に1匹が癌とは、驚きですね。
そして、北米の統計でも3匹に1匹ががんで亡くなっているという事でした。がんは猫にとって身近な病気です.

参考までに、ヒトの死因は、1位はヒトも同じく癌。
そして、3位は老衰。老衰は、2001年から上昇傾向です。

●猫の寿命を30年に延ばすことも可能な「AIM」の発見

2016年にAIMが急性腎障害の治癒を促進する要旨の論文がNature　Medicine誌に発表されました。
この論文を発表したのが東京大学大学院教授の宮崎徹さんです。
宮崎さんは、22年3月に東京大学大学院医学系研究科を退職。翌月の4月より一般社団法人AIM医学研究所（https://iamaim.jp/　）を立ち上げ、その代表理事・所長として活動をスタートしました。宮崎徹さんは、なんと獣医ではなく、人間のお医者さんなのです。

そして、22年5月から*エルムスユナイテッド動物病院グループとAIM製剤の薬事申請に必要な臨床試験研究の共同研究をしています。

＊エルムスユナイテッド動物病院：専門性の高い獣医師を有する統括医療センターを中心に、全国で10病院を展開。また、奄美大島において、2017年より絶滅危惧種・アマミノクロウサギの保護啓発活動等も行っている。
代表　荒川弘之氏　_東大大学院農学生命科学研究科（獣医学専攻）卒、博士（獣医学）

●猫用の医薬品の承認目標は2026年

現在、2026年を目標に猫用の医薬品として農林水産省の承認を得たいと、
研究を重ねられています。(参考：読売新聞オンライン2023年7月3日）

●AMIは、“体内のゴミを掃除する”タンパク質

AMIは“体内のゴミを掃除する”タンパク質です。
宮崎徹さんは、この血液中のタンパク質「AIM（apoptosis inhibitor of macrophage）」が急性腎不全を治癒させる機能を持つことを解明しました。猫は、このAIMが正常に機能しないために腎臓病にかかることもわかったのです。
この AIMは猫の腎臓病の予防になり、猫の寿命が大幅に延び、現在の猫の平均寿命である15歳の2倍である、30歳まで生きることも可能であるとされています。

そして、宮崎さんは「猫の死亡原因の1位はがんで、2位は腎臓病。だが、がんで死んだ猫を解剖すると腎臓はぼろぼろ。直接死因はがんが多くても、猫の腎臓病の罹患りかん率は100％とも言える」と説明します。

●人間にも効果をもたらすAMI

さらに、AIMは、猫だけでなく人間にも効き、また腎臓病だけでなくアルツハイマー型認知症や自己免疫疾患など、これまで〈治せない〉と言われていた病気にも活用が期待されます。

ＡＩＭ ＝人やマウスなど動物の血中にあるたんぱく質。スイスのバーゼル免疫学研究所（当時）の主任研究員だった宮崎さんが発見し、1999年に論文で発表。白血球の一種「マクロファージ」を長生きさせる性質が最初に見つかり、その性質を意味する英文の頭文字から命名した。

●切掛けは獣医の友人との食事

参考：医学書院「ネコと腎臓病とAIM研究20/2の対談」より　
https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/y2020/PA03357_01

獣医の友人と食事をしたのがきっかけでした。AIMと腎臓病の関連について話をしたところ，ネコに腎臓病が多発すること，その原因は不明で確固たる治療法もないことを教えてくれたのです。

獣医の間では一般的な知見とのことだったが、宮崎さんはその時初めて知ったそうです。

調べていくと、根本的な原因はAIMの働きにあったのです。急性腎障害が生じると、尿細管にゴミ（細胞の死骸）がたまります。ヒトやマウスの場合は，AIMが発動してゴミが取り除かれ，腎機能が改善する。言わばトイレの排水管が詰まったら即座に掃除するようなものです。でもネコの場合はAIMが発動しません。それで“詰まり”が解消できないまま腎機能が低下するのです。

ネコはAIMを有しているにもかかわらず，AIMが欠損している状況と同じ症状の経過となるそうです。

ライオン、トラ、チーター、ヒョウも最期は慢性腎不全になる。全てネコ科の動物で，同じようにAIMの機能に問題があるようです
なぜネコ科に限られる？のかは、判らない。進化論的にも理屈に合わないし，不思議ですよね。最近は動物園とのかかわりもできたので，AIMの観点から動物の進化について調べ始めました。おかげで「カワウソも腎不全が多いらしい」とか，ヒトの臨床とはかけ離れた知識ばかり増えています（笑）

進化論的に理屈が合わない事を、別の視点からとらえて研究を進める
宮崎徹さんの姿勢が、”AIM”の機能を解明し猫と私たちの生活に素晴らしい大きな変化を与えてくれるようです。

2026年といわず、少しでも早い医薬品の承認を期待したいですね。

●まとめ

・コロナ禍で、ペットと暮らす人は急増しました。
・ペットの寿命は、私たちの感覚をはるかに超え長寿になっています。
・その要因は、医療や食べ物が向上、そして家族化した事にあります。

だからこそ、お互い長く寄り添いながら年を重ねていく準備を、飼い主は早めに考える必要があります。
犬の平均寿命は14.76歳、猫の平均寿命は15.62歳。
お互いの限りある命を見通しながら、ハッピーライフを考えて行きたいですね。

ご紹介した対談はこちらになります。
看護師をされている宮子あずささんとの対談です。医療系のお2人が私たちに分かり易い言葉で伝えてくれています。ぜひ、ご参照ください。

さらに、宮子あずささんはnoteでも執筆されています。
こちらもご紹介しておきます。

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