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緑にゆれる(ロングバージョン)

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長編小説「青く、きらめく」の十五年後の物語。大人になったカケル、美晴、マリのそれぞれの愛の行方は――鎌倉周辺で取材で撮った写真と共にお送りします。
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#海

【連載小説】「緑にゆれる」Vol.29 第四章

  そう、遠い初夏の日。東京で、安くて古いアパートに圭と二人で生活していた頃。  無認…

清水愛
2年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.59

 玄関を出ると、カケルさんがうきうきした調子で言った。 「さぁ、これからどこを連れまわそ…

清水愛
1年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.60 第七章

 途中で国道沿いの歩道から外れて、中の住宅街へ入った。水筒も、何も持ってない。歩き続ける…

清水愛
1年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.61 第七章

 しばらく、また海岸沿いを歩いた。向こうに江の島が見える。  いつの間にか、カケルさんは…

清水愛
1年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.62 第七章

 たくさんの階段を上って、頂上までたどりついた。  遠くに水平線が見える。表の神社は、も…

清水愛
1年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.69 第七章

 空には、いつの間にか、たくさんの星が出ていた。  二人で、テントの外の砂の上に寝転んで…

清水愛
1年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.70 第七章

 気がついたら、朝だった。  初めての寝袋は、かしゃかしゃして感触がおもしろくって、もっと楽しんでいたかったのに、包まれたらすぐに眠りに落ちた。  隣の寝袋を見ると、空っぽだった。寝袋からはい出してテントから顔を出すと、海が朝の光を浴びて、きらきら光っていた。 「おはよう」  しゃがんで海を見ていたカケルさんが、振り返って言った。 「いい朝だ」  浜辺では、犬の散歩をしている人がいる。少し離れた小高い砂山の上で、ヨガのような体操をしている人もいる。ただぶらぶらと、歩いて

【連載小説】「緑にゆれる」Vol.80 第八章

 空は、薄い青から、だんだん紫に変わっていく。 「そう言えば」 ふと、湿っぽい空気をたち…

清水愛
1年前
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