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緑にゆれる(ロングバージョン)

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長編小説「青く、きらめく」の十五年後の物語。大人になったカケル、美晴、マリのそれぞれの愛の行方は――鎌倉周辺で取材で撮った写真と共にお送りします。
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2022年6月の記事一覧

【連載小説】「緑にゆれる」Vol.31 第五章

   第五章  クラシック音楽が好きだったのは、自分ではない。別れた元妻の里伽だった。 …

清水愛
2年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.32 第五章

  けっこう長い間、彼女を見つめてしまったと思う。あの、と少し照れた表情で眉をひそめて、…

清水愛
2年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.33 第五章

   その日も、深夜近くまで事務所にいた。今日も遅い? まだかかる? と里伽からメールが…

清水愛
2年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.34 第五章

 この簡単なメールを打つのに、五分ぐらいかかった。送信ボタンを押すと、まるで一仕事終えた…

清水愛
2年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.35 第五章

  肉体労働をしていた時期があった。  大学三年生のとき、親からの援助が全くなくなり、学…

清水愛
2年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.36 第五章

 平日、夜というには少し早い時間のバーは、ほとんど客がいなかった。久しぶり、と言ったあと…

清水愛
2年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.37

 畳に寝ころがって、もう一度、企画書に目を通してみる。それ以上、何も見えてこない。  思えば、昨夜はダブルパンチをくらったような夜だった。企画のことと、過去の失った愛のこと。こちらからアクションを起こしてみたのに、足元をすくわれた。そんな日だった。  里伽が投げかけてきた数々の言葉が頭の中をめぐる。そして、彼女が最後に言った言葉。甘えることが、愛すること? いや、そんなバカな。企画のことを考えていたはずなのに。  カケルは、いつの間にか顔からすべり落ちていた企画書を握りつ

【連載小説】「緑にゆれる」Vol.38 第五章

  カウンターの隅に座って、ぼんやり彼女の所作を眺める。  少し背伸びをして、コーヒー…

清水愛
2年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.39 第五章

 カップを手放したのとほぼ同時に圭に気づいた美晴は、今までと全く違った声の調子になって言…

清水愛
2年前
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