【連載小説】「青く、きらめく」Vol.31 第五章 波の章
学内の木立が、冬じたくを始めている。マリは、色づき始めたイチョウの木のてっぺんを見上げた。涙が目の奥に吸いこまれていくように、と願いながら。
「おい、おいってば」
ふいに声をかけられて立ち止まる。
そこに、カケルが立っていた。なつかしさと恋しさで、思わずかけ寄って抱きつきたい衝動にかられた。カケルは、二歩、三歩と歩んでマリの前まで来た。
何と切り出していいのか、言葉を探しているようだった。この間の傷ついた表情、とまではいかないまでも、そこには傷つくのを恐れているような