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「熱湯甲子園」

春の日差しが丁度いい気候の日、熱湯甲子園が始まった。参加者たちは一様にやる気満々の表情を浮かべている。しかし中でも一人、内気そうな少年、タツヤがいた。彼の参加理由はただ一つ、初恋の相手、ミホへの思いを伝えるためだ。

ミホは彼の小学校からの幼なじみで、何をするにも一緒だった。しかし、彼女が熱湯甲子園の大ファンであることを知った彼は、自分も参加することを決意した。当然、彼の熱湯への耐性は皆無だった。だが、彼のミホへの想いはそれを超えていた。

甲子園が開始され、試合は熱を帯びる。参加者たちは次々と熱湯に倒れ、早くも戦闘不能者が出始めていた。その中でもタツヤは頑張って立ち上がり、熱湯に耐えていた。

そんな彼を見て、ミホは心配そうに彼を見守っていた。タツヤはミホの心配そうな顔を見ると、より一層力が湧いてきた。彼は自分の思いを伝えるために、そしてミホを心配させないために、試合に勝つことを決意した。

試合が進み、ついに最終戦が始まった。相手は前回の王者、イワオだった。彼の熱湯への耐性は異常で、まるで熱湯が彼にとって快適な温度であるかのようだった。タツヤは彼に挑む決意を固め、試合が始まった。

タツヤとイワオの戦いは白熱し、観客は息を呑んで見守っていた。そして、最後の熱湯が投げられ、タツヤが倒れた。

観客の息も止まる中、タツヤは床にうずくまった。しかし、彼は決して諦めることはなかった。彼は必死に立ち上がり、自分の思いを叫んだ。

「ミホ、俺はお前が好きだ!」

一瞬、会場は静まり返った。そして、驚愕から目覚めた観客たちが一斉に拍手を送り始める。タツヤが目を上げると、ミホが涙を流して彼を見つめていた。彼女もまた、タツヤのことが好きだったのだ。

その後、試合はイワオの勝利となったが、最も輝いていたのはタツヤだった。なぜなら、彼はただ勝つためではなく、愛する人に自分の思いを伝えるために戦ったからだ。

そして、その日、甲子園は二つの勝利を祝った。イワオの試合の勝利と、タツヤの愛の勝利だ。

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