泣きながら震える娘の姿を見て、眩しいと思った
11月に引越を控えている。それに伴って、5歳の娘は幼稚園を転園する予定だ。
夏休み中に、新しく通う幼稚園を見学した。こぢんまりとしたアットホームな園で、そこにいた先生たちはとても暖かく迎えてくれた。
「〇〇ちゃんが来てくれたら、みんな、めっちゃ喜ぶわ〜!」
担任になるであろう先生もいて、うちの娘は一瞬で懐いた(しゃべりまくっていた)。そのおかげもあってか、娘は引越先での生活を楽しみにしている。それこそ「早く新しい幼稚園に行きたい!」と言うほどに。
8月末、2学期が始まった。久しぶりに会ったお友達と思いっきり遊べるのがうれしいのか、
「入ーれーて!」
を自分から言えるようになった。これは大きな成長だ。以前は自分から声をかけるなんて、到底できなかったから。
休んでいる子がいたら「風邪かな?大丈夫かな?」と心配し、「さみしい」と嘆く。そんな様子を見ていると、幼稚園での楽しい時間が目に浮かび、こちらの気持ちも緩んでくる。
「よかった。」
周りについていくだけで精一杯だった1学期よりも、居心地が良さそうだ。そう、慣れてきたのだ──。
秋に引越をするとママ友に伝えたとき、「ちょうど慣れてきた頃やなぁ」と言われたことがある。
それが、今になって身に染みる。園でのリズムに慣れて、お友達との距離がグッと近づいた頃……それが「ちょうど慣れてきた頃」なのだ。
「お休みの日に車で会いに来るよー!」
引越の話が出るたびに、娘が言うセリフだ。これは彼女にとって本心に違いない。けれども、実際には頻繁に会いに来られる距離ではないのだ。
引越で今のお友達と離ればなれになってしまうことに、あまりピンと来ていない。そういう想像力は、まだ持ち合わせていないらしい。
これは実際に会えなくなるまで分からないのかもしれない。会えなくなってはじめて実感するのかもしれない。新しい幼稚園で何かうまくいかなかったとき、懐かしい時間を思い出してさみしく感じるのかもしれない。
そんな風に思っていた日の夜、娘が急に泣き出した。
「お引越しても、今の幼稚園のお友達のこと、忘れたくない……!」
驚いた。子どもはいつだって、親の予想をこえてくる。枕を濡らしながら「忘れるなんて嫌だ」と言う娘は、震えていた。
今が楽しくて大切だから、それを忘れてしまったらどうなるのか、不安になったのだろうか?
「忘れるわけない、大丈夫。」
私は、そう言って抱きしめることしかできなかった。
娘が寝た後、帰宅した夫にそのことを話した。
「それは悲しいね。でも、俺はうれしいよ。」
私も同じ気持ちだ。
「今の幼稚園が楽しい」
「お友達のことが大好き」
そう感じるからこそ、生まれた葛藤なのだから。
泣きながら震える娘の姿を見ていると、こちらも胸が締め付けられてくる。それでも、あなたのことを眩しいと思ったよ。
「いつの間に、そんな感情を味わえるようになったの?」
ってね。
引越までの時間も、その後の時間も……かけがえのない瞬間を取りこぼさないように、大切に過ごしていきたい。
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