見出し画像

遺してくれた言葉を肚に。

我慢・辛抱・忍耐



結婚してからのこの数年で、
何度も聞いた言葉だ。



何度も聞いた言葉だが、
最後に、ふり絞る声で放たれたこの言葉は
重みが違った。全然、違った。






「雅樹くん、君は自分の周りの人たちを、とても大事にするね」




「そういう人は滅多にいない」




「でも、もっと大事にしなくてはいけない人がいる」









「それは、雅樹君、君自身だよ」





かすれた、今にも潰れて消えそうな声で、
そう話してくれたのは、義理のおじいちゃん。




画像2

手を握りながら、僕にそう話してくれた。




声を出すことさえ、とてつもなく、しんどいはずなのに。




5分。10分。




話し続けてくれた。




僕は、あなたと出会って、まだたったの5年足らず。


それなのに、必死に言葉を遺して下さった。






会話の半分以上は、聞き取れなかった。

でも一言一句聞き逃さぬよう。忘れぬよう。

必死で聞いた。


あなたが、必死に、話してくれたから。






必死になって会話をした あのわずかな時間は

5年という時間や、義理の家族という枠を

確実に超えた。



だからだと思う、

こんなに悲しくて、切なくて、恋しいのは。







「死んだ人は、生きている人に何か残すんだってさ。」






誰かがそんなことを言っていたけど、

その意味が改めて分かったような気がする。



あなたが口癖のように、僕に伝えてくれた

「人生で大事なことは、我慢・辛抱・忍耐だよ。」

この言葉を、僕はきっと忘れない。









そして、会話の最後




「もう、話すことがしんどいな」




「ほんとは、もっと話したいけど、ごめんよ」




痛みに耐えながら、ちょっとだけ笑みを浮かべてくれた。





「最後に、何か、言いたいこと、ある?」






そう聞かれ、僕は言った。


「〇〇(嫁の名前)のこと、必ず大切に、幸せにします。」


「そして、おじいちゃんが教えてくれた、我慢・辛抱・忍耐」


「この言葉を肚に落とし込んで、僕は生きていきます。」


「なので、安心して、ゆっくり休んで下さいね。」











「こんなに、良い返事が、聞けるとは、思わなんだわ。」



そう言ったおじいちゃんの右目には



1粒の小さな光がにじんでいた。







もうすぐ、三男が産まれてくる予定。

あなたの名前の一部を、継がせて頂きます。



おじいちゃん、安らかにお眠りください。

画像3
画像4
子供



この記事が参加している募集

名前の由来

あなたから頂いたサポートのお金は「誰かを応援する資金」に充てさせて頂きます。