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第102回 赤と白とロイヤルブルー(2023 米)

 さて、今年も4月4日がやってまいりました。オカマの日、もといLGBTの日です。

 というわけで、毎年恒例のガチホモ映画レビューでお送りします。今回はどなたでもお気軽に観られるところでAmazonプライム専売の『赤と白とロイヤルブルー』でお送りします。

 ストーリーはいたって単純で強烈。アメリカ大統領の息子と英国の王子様がデキちゃうだけです。後の要素は枝葉に過ぎません。

 この露骨にして明快なコンセプトが腐の皆様に与えた影響は相当に大きかったと思います。こんな分かりやすいホモはそうあるものではありません。

 しかし、本レビューは枝葉の部分にもちゃんとこだわっていきます。なにしろ日本を舞台にこういうのをやると命の危険があります。だからこれ幸いに私も張り切ります。

赤と白とロイヤルブルーを観よう!

Amazonプライム独占配信です。

真面目に解説

やんごとなくどうでもよく

 映画は英国の皇太孫殿下の結婚式にアメリカ大統領の息子のアレックス(テイラー・ザカー・ペレス)が招かれるところから始まります。

 まず注目すべきは、アレックスがメキシコ系であるという事です。これは現実のアメリカが未だに成し遂げていない事であり、今後もかなり難しいとされています。南部の白人はメキシコ人候補には絶対に投票しないのです。

 そして、大統領はアレックスの父親ではなく母親であるというのもやはり注目すべき点です。つまり、この映画はポリコレを100%守る方向で作られています。それでちゃんと出来良く仕上がっているのだから大したものです。

 ポリコレを重視する人は君主制が好きではないと思いますが、パーティーの主役であるフィリップ殿下(トーマス・フリン)の弟でありメインヒロインのヘンリー(ニコラス・ガリツィン)も果たしてそう思っていて、婚約パーティーごときに莫大な経費をかける王室の在り方に疑問を持っています。

 ここでこの2人に共通点が浮かび上がってきます。どっちも一見すると国家の顔のような存在ですが、実際にはなんの権限もないのです。

 作中でも指摘されるところですが、アレックスは結局のところ何の権限もない大統領の息子に過ぎず、更に言えば母親が大統領になる前は単なる労働者階級のあんちゃんでした。

 一方、ヘンリーは王族とは言え次男坊であり、王位を継承する可能性はかなり低く、その立場を「スペア」と自嘲しています。

 鬱憤をためたイケメン2人。この時点でむんむんきます。私の好物の臭いです。

スーパー攻め様×スーパー攻め様

 この人気者ながら微妙な立場の2人はたまに公務で顔を合わせるだけですがそりが悪く、下らない口喧嘩の末に巨大なウェディングケーキを倒して下敷きになってしまい、それがインスタで拡散して大騒ぎになります。

 アレックスの母のエレン(ユマ・サーマン)は国際問題を心配し、アレックスをロンドンへ送り返して手打ちを試みます。冷静に考えれば、シーシェパードのタニマチのユマ・サーマンが大統領というのは不安にさせますね。

 嫌々ながらロンドンへ飛んだアレックスは、ヘンリーと一緒に記者会見や公務に励みますが、本質的にメキシコの労働者の倅であるアレックスと、生まれる前から王族としての宿命を背負っていたヘンリーではやはり根本的に価値観が違い、ちくちくと喧嘩ばかりです。

 しかし、慰問先の小児病院で銃声が聞こえたのでこれまた大騒ぎになり、物置に2人して押し込まれたせいで急に風向きが変わります。

 つまり、アレックスはヘンリーと初対面した時に悪態をつかれたのでヘンリーを嫌っていたのですが、それは誤解だと物置での会話で知ったのです。

 これによってアレックスは急激にデレ始め、たちまちチャットで毎晩下らない会話をする仲になります。

 ここからはもうラブラブワールドの極致で、一緒に居るんだか居ないんだか分からない演出が行われ、ホモ一直線の有様です。どっちもあまりにチョロ過ぎます。

 しかし、インスタだのチャットだの、映画の世界にもハイテクが入ってくる時代なのだなと感じさせます。

ホモのサラブレッド

 ここからはもうあっという間で、アレックスの年越しパーティーに招待されたヘンリーは年越しパーティーは嫌いだなどといいつつ飛んできます。思えば実に航空燃料を浪費する恋です。

 若くて派手な姉ちゃんがうじゃうじゃしているにも関わらず、ヘンリーはやはり英国紳士なのか、あまり興味なさげです。

 しかし、何の事はありません。ヘンリーはガチホモなのです。驚くことなど無いでしょう。英国貴族の歴史は同性愛の歴史です。ヘンリーの遺伝子には男への欲望が組み込まれているのです。そもそも、英国貴族などというのはホモの海賊が片手間に女と寝てできた子供の子孫です。

 年越しの瞬間に女とキスしたアレックスを観てヘンリーは嫉妬に狂い、アレックスを砂浜まで連れ出して唇を奪い、困惑しながらも受け容れてしまうアレックス。つまり、アレックスにも実はそっちの気があるのです。

当て馬女♂

 アレックスのお相手はなんと政治記者です。記者が取材対象とそういう仲とは感心しませんが、そういう道ならぬ恋に興奮しちゃうのが人間です。

 記者のミゲル(ジュアン・カスタノ)はかつてアレックスと挿入はしないまでもジャグジーで裸でいちゃちゃした仲で、プレスルームでアレックスとスペイン語で秘密の会話とかしちゃいます。

 ギリシャ語ならともかく、スペイン語では暗号強度がかなり低いので迂闊だと思うのですが、愛は盲目なのでしょう。

 ミゲルは仕事抜きでアレックスにマジです。ところがアレックスはヘンリーとどんどん深みにはまっていきます。

 そしてミゲルはホモのジェラシーに狂い、アレックスへの妨害を行うようになるのです。

 これに関して言えば、やはりこの映画はポリコレの影響力に引っ張られ過ぎです。ゲイの貞操観念をノンケと同じ物と考えている点はポリコレ的です。貸し借りや3Pが普通にアリなのがリアルなのです。

女は皆腐女子

 アレックスとヘンリーの仲は徐々に周囲にバレていきますが、女性陣は基本的に応援してくれます。やはり作者が腐女子なので、登場する女性も大体腐女子なのです。

 特に副大統領の孫で大統領のスタッフでもある黒人のお姉ちゃん、ノーラ(レイチェル・ヒルソン)はアレックスとヘンリーがそういう仲になったと知って大はしゃぎし、いずれこうなると思ってたとまで言い切る有様です。

 ノーラはレベルが高すぎます。いくらイケメン同士でも、知り合いのナマモノを楽しめる腐はそう多くありません。更にはアレックスはミゲルとの過去をもノーラに話し、ノーラは大興奮です。

 一方、ヘンリーサイドにもこういう理解者が居ます。ヘンリーの妹のビーことビアトリス(エリー・バンバー)です。

 ビーは兄のセクシャリティと恋を全面的に応援する姿勢を明確にしていて、自分から仕掛けておいて躊躇するヘタレ気味のヘンリーの後押しをしてくれます。

 やはり英国上流階級の女は腐女子でないとやっていけないのでしょう。現実的に考えても、夫が玄関先で男とキスしていてもブラックジョークくらいで済ます器量が必要です。

嗚呼パブリックスクール

 というわけでアレックスとヘンリーの仲はどんどん進展していき、大統領の晩餐会では逢引してシークレットサービスの姐さんに見られてドン引かれ、パリでのポロ大会ではついにヘンリーがアレックスの股間のスティックをしゃぶり、ついにはエッフェル塔を望むホテルの一室で本番と相成ります。

 実は最後までした事が無いアレックスは慌てますが、ヘンリーが「僕はパブリックスクールに入ってた」と無茶苦茶心強い励ましをします。

 私は事あるごとにパブリックスクールはホモ養成所であると力説してきました。この説が私の妄言でなく、俗説であるとしても広く受け入れられている事をこの映画は証明してくれました。実にありがたい事です。

 しかし、いざ始まるとヘンリーが受けなのが笑いどころであり、尊い展開です。ヘンリーはまさに最強クラスの受け様なのです。

青くぬれ!

 このカップルが似ているようで違う所は、ヘンリーは自分の無力さに甘んじてしまう所がありますが、アレックスは母親の再選の手助けを試み、最終的には自分も議員になろうとする野心的側面があるとことです。

 この辺りはやはり世襲である王族と、選挙を避けて通れない政治家の違いなのでしょう。

 アレックスは故郷であるテキサスに目を付けます。当然ながらエレンは民主党ですが、テキサスは共和党の絶対的牙城です。もし大統領選挙でテキサスを民主党が取るとすれば、それは歴史が変わった瞬間です。

 というわけでアレックスはテキサスへ行き、100万人を新たに選挙人登録させることでテキサスを切り崩そうと言うキャンペーンを行います。

 これはかなり地に足の着いた戦術です。実はテキサスは近年ヒスパニックの人口が激増しているので、共和党が負ける日は意外に近いのではないかとされています。

来ちゃった

 想像は付くでしょうが、ヘンリーはキャンペーンに奮闘するアレックスに会いにテキサスに来てしまいます。そしてエレンにバレてしまうのです。

 ところがエレンは意外に理解があり、ヘンリーとの関係を応援してくれる方向です。やはりこの世界には女は腐女子しか居ないのです。

 しかし、アレックスがエイズ予防の為にコンドームが必要だと知らないのには驚かされます。日本の性教育は遅れている遅れていると言われますが、だとすればジョージタウン大学に通っているアレックスがこんな事さえ知らないのはどういうわけなんでしょうか。

 まさか科学より聖書の方が正しいと言い張るような学校で大統領の息子が教育を受けたとは思えませんが、そうとしか思えません。メキシコ人はカトリックですし。

 そもそも、エレンがそこに着目したという事は、アレックスがそれを見落としていると気付いたからです。

 下品な話になりますが、臭ったんでしょうね。アレックスが攻めですから。

地雷系王子

 とにかくキャンペーンを成功させたアレックスは、ご褒美に父親のオスカー(クリフトン・コリンズ・Jr)と一緒に別荘へ遊びに行きます。

 勿論ヘンリーも一緒で、オスカーも歓迎してくれます。何しろオスカーは男でもファーストレディーなので、女は皆腐女子というこの世界の法則に従っています。

 友達のパーシー(マルコム・アトブラ)とノーラも交えて別荘でエンジョイするヘンリーは王子様の身分を投げ捨てて実に楽しそうですが、アレックスとプールでいちゃいちゃしている最中に突然おかしくなり、別荘を去って逃げ帰ってしまいます。

 ヘンリーはこれ以上突き進むのが怖くなってしまったのです。カラオケで「ドンド・ストップ・ミー・ナウ」なんて歌っちゃって絶好調だったくせに。

 ヘンリーのメンヘラぶりは物凄く、アレックスは宮殿まで押しかけてくると痴話げんかの末に訳も分からぬうちに心変わりし、閉館後の美術館に忍び込んで一緒に踊って仲直りする有様です。

 思うに、ヘンリーの先祖が近親交配をし過ぎたのではないでしょうか?やはり血の濃い競走馬は気性が荒いとされるので、人間も同じでしょう。だけど、アレックスはそういう地雷を踏み抜いていきます。地雷原でタップダンス踊っちゃう漢アレックスなのです。

ホモは嘘つき

 しかし、ここで別の地雷が大爆発します。ミゲルがホモのジェラシーの挙句アレックスの携帯をハッキングし、ヘンリーとの関係を暴露してしまいます。勿論世界は大騒ぎです。

 国王ジェームズ三世(スティーヴン・フライ)は宮殿と外部の通信をシャットアウトし、後継者のフィリップと一緒にヘンリーに御国の為とは言え最悪な意地悪をします。

 アレックスもヘンリーも連絡を遮断されて爆発寸前の有様でしたが、ここでエレンがいい仕事をします。

 エレンはヘンリーの侍従とデキていて、それを頼みにアレックスとヘンリーの連絡をつけ、2人は国王の制止も聞かずにカミングアウトして関係を続けていくと表明し、それを世間は大歓迎。更にはエレンはテキサスを陥落させて再選を果たし、万々歳で映画が終わります。

 とどのつまり、この世界ではホモはホモなのにケツの穴が小さく、女は皆腐女子でカプ厨なのです。

 ビーが英国のあちこちの都市で人が出て大騒ぎになっていると嬉しそうですが、列挙される都市の中にスコットランドのグラスゴーウェールズのカーディフはあるのに、北アイルランドのベルファストが無いのが個人的注目ポイントです。

 ポリコレ的には北アイルランドはアイルランドに帰属すべきという事なのかもしれませんが、私はアイルランド人には「イングランドのオカマ王子なんて縛り首にしちまえ」とか言ってウイスキーを飲んでいてほしいのです。さらに言えば、テキサスが民主党の手に落ちる所は見たくなかった。

 私は真の多様性とはこの種の人間も許容される社会だと信じているので、こう言うお約束は破って欲しくないのです。

BL的に解説

アレックス/ヘンリー

 濡れ場はアレックス攻めでしたが、ここはゲイリアルを尊重してアメリカンスタイルでお送りします。絶対アレックスも受けを試したはずです。

 このカップルの美味しい所は、ヘンリーの方がかなり強引に水を向けてきたにもかかわらずその実は誘い受けであり、いざそういう関係になるとと今度はヘンリーがヘタれ、深みにはまったアレックスが攻め様的に関係に執着し始める精神的リバにあると思います。

 むしろヘンリーは「初めて会った時からこうしたかった」とか言ってましたし、この大西洋を挟んだ愛のシーソーは明らかに旧大陸側に傾いていたのです。

 一方、メキシコ人の兄ちゃんからあれよあれよと大統領の息子になってしまったアレックスは初公務で緊張していました。しかし、ヘンリーの方は公務に慣れていてもうんざりしているので、ファーストコンタクトは完全なすれ違いの末の失敗でした。

 この現象をアレックスの側から見れば、公務童貞の自分を生まれる前からこの種の公務に慣れているヘンリーにリードして欲しかったのですが、ヘンリーに意地悪されてしまったわけです。

 一方ヘンリーの側から見ると、公務に音を上げているところへ突然理想のオスが飛び込んできて動揺してしまったというのが本当でしょう。

 映画の前半部分はこのようにして友達になれたはずなのに険悪な2人が急激に仲直りし、友達を通り越してホモ達になってしまう描写に費やされます。

 しかし、2人してケーキの下敷きになってクリームまみれになるのは物凄く意味深です。クリームパイは英語では何とは言いませんが物凄く卑猥な意味を持ちます。そう、アレックスはコンドームを使っていませんでした。

 ここには神意さえ見て取れます。私だってアレックスと同じバイなのでこの際はっきり言いますが、片思いしたノンケが実は男もイケるなどとは、天文学的確率の奇跡です。言い換えれば、理論上しか起こり得ない事なのです。

 しかし、年越しパーティーに来た時点でヘンリーはかなりヘタレです。アレックスが女にキスしたのを見て激しく動揺するのはあからさまなジェラシーですが、ゲイとしての分を弁えていない行為でもあります。それくらいヘンリーはアレックスに参っているのです。

 あまつさえ海岸にアレックスを誘い込んで唇を奪うなどというのは、一歩間違えば外交問題レベルの暴挙です。民主党政権だからいいような物を、共和党政権なら戦争になる可能性さえあります。

 つまり、この瞬間ヘンリーは王族としての立場を完全に放棄し、一匹のオスとして欲望に走ったのです。まさに王冠をかけた恋。ウィンザー公は両刀と専らの噂なので、御家柄という奴なのでしょう。

 ここから先は攻め受けが華麗に入れ替わって私をどきどきさせちゃいます。アレックスが晩餐会で逢引を前に「これからがっつりいけない事をする」などと言うのは、古き良き90年代BLの趣を感じさせる攻めアングルです。

 一方で、「僕は鍵を持っていない」「王子に空けられないドアはない」という意味深な会話には、ヘンリー攻めの片鱗が感じられます。少なくとも、侍従や下僕はケツを差し出せと言われれば逆らえないのが英国の王子です。

 一転してパリのポロ大会ではアレックスがヘンリーにしゃぶらせて攻めに転じたかに見えましたが、いざ最後までやろうとなると、そこまで履修していないアレックスは童貞丸出しの醜態をさらし、ヘンリーの「僕は寄宿学校に入ってた」がぶち込まれます。

 学歴がこれほどあてになる分野がこの世に他にあるとは到底思えません。テキサスの生んだ本物の大統領のバカ息子がイエール大学を卒業している野を考えれば、ホモこそが真の学歴社会に生きていると言っていいでしょう。

 そしてヘンリーは「身をゆだねて」とか言ったくせに受けます。私はまさかと思いました。つまり、平民が王子様を掘る事が許されるのがパブリックスクールなのです。

 しかし、肉体的にはA/Hなのに精神的にはH/Aです。この心身同軸リバには驚かされます。作者はただ者ではありません。

 とは言えアレックスが受けだったのはここまでで、一皮むけたアレックスは漢になり、思い人に身を許したヘンリーは完全にメスになっていきます。

 マスコミの目を交わしてテキサスまで来ちゃったアングルをかましておきながら、別荘のプールでアレックスといちゃいちゃしている最中に急に怖気ついて逃げ出すというのはかなりヤンホモを感じさせます。

 だって、昨日は「ドント・ストップ・ミー・ナウ」を高唱していたのです。あんなところをパパラッチに見られたら、それがミゲルでなくてもヘンリーはホモだと思うでしょう。

 宮殿での痴話げんかに至っては、私は解説を放棄します。ここに余計な解説を挟んでも無駄です。

 しかし、ヘンリーの暴走とミゲルの暴走が重なり、ついにこの大物ホモカップルは白日の下に晒されます。

 アレックスはホモで何が悪いと言わんばかりの漢な演説で民衆を黙らせた一方、ヘンリーは宮殿に軟禁されてフィリップやジェームズに意地悪されてショック死寸前です。

 しかし、最後に勝ったのはアレックスとヘンリーの関係を祝福する民意でした。大統領も王様も民衆あればこそです。民衆がいいと言えばいいのです。

 世論を味方につけた2人を妨げるものはもはやありません。アレックスはもう大統領一直線です。史上初のゲイでロイヤルファミリー兼任の大統領になる将来は約束されているのです。

アメリカ/イギリス

 ヘタリアなんて目じゃありません。こう言うテーマに挑まなければ、私がレビューする甲斐が無いじゃありませんか。

 アレックスとヘンリーの関係は攻め受けがめまぐるしく変わるわけですが、これはまさにアメリカとイギリスの関係と同じだなと私は思うわけです。

 そもそもタイトルが国家BLしています。星条旗もユニオンジャックも赤と白と青で構成されているのは御承知の通りです。ここへ英国王室の公式カラーであるロイヤルブルーを足したわけです。国と国とが一つになっているのです。

 そして、御存じの通りアメリカはイギリスの植民地でした。この時点では完全にアメリカ受けです。イギリスに居場所がなくなったホモのホモ嫌いの清教徒が逃げ込んだのが新大陸だったのですから。

 しかし、イギリスはアメリカ植民地に重税を課すようになり、宗主国のオラつきに嫌気がさしたアメリカは独立を欲して独立戦争が始まります。リバの試みです。

 ここで重要なのは、ジョージ・ワシントンがホモだという説が当時から根強い事です。リンカーンはもっと強い疑惑があるのですが、これは別の機会にしましょう。

 とにかく、アメリカは独立戦争に勝利し、完全なリバに成功します。しかし、それは表面上の話に過ぎません。

 当時のイギリスは産業革命にいち早く成功した世界一の大国であり、この時点でのアメリカは独立したとは言っても未開の地が広がる名ばかり独立国に過ぎません。肉体的にはアメリカが攻めでも、精神的優位は未だにイギリスにあったのです。

 しかし、アメリカは徐々に逞しい男になり、20世紀にもなると完全に世界のスーパー攻め様として振舞い始めます。

 2度の世界大戦だって、アメリカの参戦が結果を決めたと言っても過言ではありません。この現象はアメリカ人に言わせれば「俺達が騎兵隊だ」という事になりますが、イギリス人に言わせれば「アメリカ人はいつも遅刻する」という事になります。

 しかし、世界大戦が終わるとイギリスは植民地も失って完璧に落ち目になり、一方でアメリカは筋肉モリモリマッチョマンの大国となって、あまつさえイギリスは「アメリカ51番目の州」と呼ばれる有様です。この称号は日本だけの物ではないのです。

 この段階に至ると完璧にアメリカ攻めになったかのように見えますが、まだまだイギリスには優位な点が残っています。そう、アメリカには歴史がありません。こればかりはどうしようもありません。

 ともすれば、歴史ある王室の一員であるヘンリーと、移民の息子であるアレックスの目まぐるしいリバBLは、アメリカとイギリスの複雑な関係を投影しているのです。

アレックス×ミゲル

 脇のキャラもやっていきますが、何故ミゲルに限って/ではく×なのかとお思いでしょう。

 これにはちゃんと根拠があります。ミゲルの行動は受けでないと説明がつかないのです。

 ミゲルは時間と距離においてヘンリーよりも有利な立場にあるはずでした。いけない関係なのはお互い様です。大統領の息子が記者と関係を持つのは好ましくありませんが、王族と関係を持つのも本来好ましくありません。

 逆説的ですが、バリネコはケツの穴が小さい場合があります。つまりネコ、BL的に言えば受けの男は、往々にして精神まで女性化してしまい、ヒステリックな行動を取りがちなのです。

 例えば、刑務所では攻めをカッパ、受けをアンコと呼びます。刑務官によると、危険なのはカッパよりアンコです。

 つまり、他の囚人や看守に馬鹿にされたとか、相方と引き離されたとかされたときに、暴力事件を起こす割合は圧倒的にアンコの方が多いのだそうです。いざとなると女性の方が大胆なのです。

 そう考えると、ミゲルは完全にメスです。嫉妬に狂ってアウティングなどというのはミゲルの中にオスが残っていたらやりそうもありません。

 重ねて言いますが、ゲイの貞操観念はノンケと違います。むしろゲイならばアレックスにヘンリーとの3Pを持ち掛けるくらいが本当です。寄宿学校に入っていたヘンリーがこの取引に応じないとは考えにくく、夜のTPPが簡単に締結されて万々歳です。

 そうならなかったという事は、ミゲルがゲイではなくメスとしての在り方を追求する純粋なタイプのバリネコだったという事なのでしょう。

 この映画を見た御腐人は一様にミゲルを嫌いますが、それはちょっと早計でもあります。

 というのも、結果として2人の関係をお膳立てしたのはミゲルです。ミゲルが居なければアレックスとヘンリーの関係はブロークバックな方向に進んだ可能性も否定できません。

 そもそも、アレックスがテキサスを陥落させるという難題に挑んだのは、プランをミゲルがリークしたからです。

 この時点ではミゲルはアレックスを純粋に愛していて、ヘンリーとの関係を知る由もありませんでした。つまり、ミゲルは単にアレックスの格好良い所が見たかったのです。

 しかし、これによってアレックスはミゲルを疎ましく思うようになり、テキサスの酒場で水を向けられても拒否。そしてミゲルはアレックスを追いかけてヘンリーが来た事に気付き、全てを悟ります。

 これはアレックスに問題があります。結果として上手くいったのですから、ミゲルにしゃぶらせてあげるくらいはするべきでした。その代りにNTRとは、ミゲルが嫉妬に狂って暴走するのも無理はありません。

 そして、私が思うにアレックスとヘンリーの関係を民衆が祝福してくれたのは、ミゲルのおかげです。

 というのも、ミゲルはアレックスとヘンリーの愛のメールを流出させたからです。あんな尊いものを見せられたら、ホモフォビアでも面と向かって悪口を言うのは憚られるでしょう。

 もしミゲルが確実にとどめを刺したかったのなら、政治記者を辞めてパパラッチになり、アレックスをつけ回してホモっている所を写真にとれば良かったのです。

 この映画のストーリーには神意さえ感じられるとさっきも言いましたが、とすればミゲルはユダだったのです。

 ユダは嫉妬に狂ってイエスを裏切りました。しかし、神が全知全能であるのなら、それもやはり神意であり、神はイエスをキリストにする為にユダを裏切らせたという説があります。

 とすればこれはもう『ジーザス・クライスト・スーパースター』です。ミゲルはコンドームどころか香油、もといローションだったのです。

ジェームズ三世女王説

 トリは意外なところでお送りします。私は正直言って、ジェームズ三世の振る舞いが一番気になりました。

 というのも、このケツの穴の小さい王様は病的なホモフォビアです。21世紀にもなってゲイの孫に汚らわしい欲望などという言葉を使う人間はむしろ珍しいと思います。

 そもそも、英国貴族などというのはいままで絶滅しなかったのが不思議なくらいホモだらけです。英国王室にホモが一人も居なかった時代は、恐らく存在しません。

 とすれば結論は一つです。ジェームズ三世はホモのホモ嫌いなのです。自分が実はホモだからこそ隠そうとして必死になるし、ホモを謳歌している孫が許せないのです。

 それに名前がジェームズなのが意味深です。やはり英国王室で一番有名なジェームズと言えば、欽定訳聖書で知られるジェイムズ王でしょう。

 ジェイムズ王は中世におけるホモヨーロッパチャンピオンです。もっとも、日本ランキングに入る事は不可能でしょうけれど。

 ジェイムズ王は処女女王と呼ばれたエリザベス1世の後に英国国王になったのですが、当時からガチホモで有名で、「キングメアリーの次はクイーンジェイムズだ」と馬鹿にされたといいます。

 閑話休題、ここで注目したいのはジェームズを演じているのがスティーブン・フライである事と、アレックスを前にして垂れた説教の内容です。

 第二次世界大戦の折り、MI6が虚偽の情報を敵国に流す作戦を行ったという故事をジェームズは引用します。

 これをテーマにした映画を既にレビューしました。ホモセクシャルのアラン・チューリングが主人公の『イミテーションゲーム』です。

 そして、チューリングを演じたのは我らがベネディクト・カンバーバッチであり。カンバーバッチと言えばホームズであり、そして、フライはゲイリチ版ホーモズ、もといガイリチ版ホームズのマイクロフトであり、フライはオープンゲイです。

 そう、全てが繋がりましたね。そして、MI6が当時頭を悩ませていたのが、パブリックスクールでの男遊びをネタに貴族を強請るKGBの暗躍であり、それを描いたのがかの『アナザーカントリー』です。

 思うに、ジェームズは寄宿学校に入っていた頃の火遊びをネタにKGBに強請られたのではないでしょうか?こうなればもうジェームズ・ボンド出動案件です。だとすれば、ジェームズは自分のセクシャリティを恥じ、孫にそれが遺伝した事を異常に恐れるのも無理はありません。

 大団円の後のEDではなんか悔しそうにしているジェームズの姿が映し出されます。あれはきっと後悔しているのです。あんなに歓迎されるんなら、俺もカミングアウトしとけばよかったと。

お勧めの映画

 独自の統計(主観)に基づきマッチング度を調査し、本noteから関連作品並びに本作の気に入った方にお勧めの映画を5点満点にて紹介し

4月4日のガチホモ映画レビュー
『ブロークバックマウンテン』(2005 米)
『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』(2014 米)
『フィリップ、きみを愛してる!』(2009 仏)

今までのレビュー作品はこちら

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