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先行公開:「ちいさくはじめるデザインシステム」(BNN刊) はじめに

ここでもSmartHR Design Systemについて言及する記事を書いたこともありますが、2023年3月15日に「ちいさくはじめるデザインシステム」という書籍をBNNさんから出版することになりました。私は編集と著者として参加しており、執筆陣はすべてSmartHR Design Systemの運営メンバーです。

ここでは特別に、この書籍の「はじめに」の原稿を先行公開させていただきます。これを読んでちょっとでも気になった方は、書店で見かけたら手にとってみてください。

デザインシステムの書籍といえば、これまでは翻訳書の”赤本”しかありませんでした。そこから学んだ人も多いと思います。

私たちの本が特徴的なのは、執筆陣がプロダクトデザイナーだけではないことです。ブランドコミュニケーションを担うコミュニケーションデザイナー、ライティングを担うUXライターも執筆に加わっています。ライティングガイドラインやtextlintについて言及しているという点は、かなり珍しいのではないかなぁと、この書籍の企画に3人のUXライターを引きずり込んだ張本人である私は、個人的に大満足しています。

さて、前置きが長くなりましたが、「はじめに」をご覧ください。


スタート地点は「何もわからない」

「デザインシステム」ってなんでしょう? 私は、デジタルマーケティングエージェンシー在籍時代、大手クライアントのウェブサイトやアプリ制作に携わっていました。その時、ブランドガイドラインやスタイルガイド、用字用語を参照することはありましたが、「デザインシステム」というものがあることすら知りませんでした。

「デザインシステム」は一般的に、「デザインの再現性を高め、一貫した製品体験を効率よく表現すること」を目的に導入される「ドキュメントやリソース群のこと」と説明されます。今では、「デザインシステム」についてウェブで検索するとたくさんの記事が見つかり、いろんな人が考えるデザインシステムの定義や在り方、立ち上げ事例に触れることができます。また、公開されているデザインシステムの中には、「お手本」とされているものがいくつかあります。

しかし、それらを見ても、今の自分たちに必要なのか、作れるのか、そして運用できるのか、疑問は尽きないでしょう。

この本は、人事・労務領域の業務アプリケーションSaaSを提供しているSmartHRのデザインシステムの立ち上げ前から、現在までの取り組みをケースとして扱いながら、デザインシステムについて解説したものです。

この本でお伝えすること

「ルールやナレッジを体系化、明文化し、データを整理・共有することで、あらゆる立場のメンバー、遠隔のスタッフ、パートナー会社などが速やかに業務に取り組めるようになる」。デザインシステムについて語られるとき、それは理想郷のようにも聞こえます。だからこそ、私たちは懐疑的にならざるを得ません。「1 デザインシステムについて考えよう」では、「デザインシステムはなぜ必要なのか? 本当に取り組むべきなのか?」ということについて掘り下げます。

「SmartHR Design System」は2020年6月に公開しました。立ち上げ準備から今日まで、どのように「デザインシステム」とつき合ってきたかを振り返ってみて気づいたことがあります。「2 デザインシステムを作るコツとステップ」では、どうやって始めるか、どうやれば続けられるかを、紹介します。

私たちは、学生時代からインターネットにウェブデザインやコーディングを教わったり、好きなものと出会ったりして育ってきました。SmartHRにはウェブからの恩恵をたくさん受けてきた社員が多くいます。なので、ごく当たり前に、デザインシステムもほぼ丸ごとウェブ上で公開しています。「3 デザインシステムに何をどうまとめる?」では、デザインシステムに掲載しているコンテンツと合わせて、背景にある考え方や一般論について説明しています。

「4 デザインシステムを続けやすくしよう」では、デザインシステムにどうやってコンテンツを集めるのか、再配布していくのか、システム構築や運用体制について説明します。プロダクト開発におけるtextlintとFigmaの運用についての言及は、珍しいかもしれません。

組織の数だけ、その目的の数だけデザインシステムの在り様はさまざまです。「5 デザインシステムの正解は1つじゃない」では、デザインシステムを運用している13の組織に対して、21の質問をしてみました。事業もフェーズも異なる組織ごとのデザインシステムに関する考え方の共通点や違いからは、得られるものがたくさんあります。

悩みながらたどり着いた軌跡

最後に。この本には5本のコラムも収めています。SmartHRという急成長する環境に身を投じた人はそれぞれ「志」をもって集まっています。コラムでは、デザインシステムを通して、個人がどのように課題を見つけ、取り組んだかにスポットを当てています。ちょっと前の私たちの姿は、今のあなたに似ているかもしれません。この本が、少しでもあなたの背中を押せたらと、願っています。

SmartHR UXライター 大塚亜周


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