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海外真珠養殖3原則~真珠にまつわる法令達~

真珠で法律と聞くと何が思い浮かぶでしょうか?宝飾品に関わりの深い特許法等知的財産法関連をイメージされるでしょうか?『宝飾品』という広い括りで真珠に関連する法律は意外とあるように思います(特許法、商標法、古物営業法や質屋営業法、景品表示法等)。

しかし、どれも『宝飾品』の一分野として間接的に真珠が関わっている法律で、真珠をメインに置いた法律ではありません。

そう、直接真珠について定めた法令ってあまりないんですよね。今となっては、真珠に直接関連する法令と言うと、何年か前に出来た真珠振興法という法令くらいかなーと思います。

かつては、『真珠養殖事業法(昭和27年法律第9号)』のように母貝生産に対する助成や真珠の輸出検査制度を定めた法律や調整組合制度(カルテル)と密殖改善措置を定めた『真珠養殖等調整暫定措置法(昭和44年法律第96号)』等真珠産業を振興・保護する法律って意外とあったんですよね(『あった』というのは、真珠養殖事業法については平成11年に『真珠養殖事業法を廃止する法律』が施行されたので、もうないため)

真珠の本とかを読んでいたら、『真珠養殖事業法』『真珠養殖等調整暫定措置法』という文言を見かける事はあると思うので、興味ある方は制度概要や施行令・施行規則・規則等を調べてみても面白いかもです。

この2つの法律(真珠2法とでも言いましょうか)については、まぁ何となしに法律のタイトルで「こんな事を定めた法律なんじゃないかなー」というのをイメージできるかと思います。

しかし、真珠関連の本や論文を読んでいると、よく名称を見かける割に内容について触れられていないものもあります。私的には下記の2つが『よく名称を見かける割にどういう内容が書かれてたのか知らないなー』というものになります。

『海外真珠養殖3原則』『新海外真珠養殖3原則』

『いや、3原則って言うけど、その原則の内容を書いてよ』って本に突っ込んだこともしばしば・・・・。

正確には『海外における真珠養殖事業について(昭和42年12月19日 水産庁長官通達)』とかになります。

この通達の第一(基本方針)に書かれている1~3を指して、『海外真珠養殖3原則』と表現します。

具体的には、①技術の非公開、②海外で生産された日本が関与する真珠の全量輸入、③計画生産になります。

ちなみに、この海外真珠養殖3原則について定めた通達は、元々白蝶真珠の宝石的価値及び日本独自の白蝶真珠養殖技術の確保のために定められたようで、当初は白蝶真珠の養殖を対象としておりました。そして、後に諸外国でアコヤ真珠養殖事業化が行われだしたことから、その対象を他の真珠貝に拡大しつつ、アコヤ真珠を母貝とした養殖について日本の事業者による海外進出を規制する文言を追加した『新海外真珠養殖3原則』が発出されました。

その『新海外真珠養殖3原則』の概要は、以下の通りです。

海外における真珠養殖事業について(昭和42年12月19日水産庁長官通達)
 海外において真珠養殖事業を営もうとする者に対する指導方針を下記のとおり定める
 これに伴い昭和35年11月11日付三十五水漁第5227号「海外真珠養殖事業について」および昭和38年6月17日付38水生第1288号「海外における真珠養殖事業について」は廃止する。

 (基本方針)
  第一 海外における真珠養殖事業の進出については基本的に次の三原則を堅持する。
   (一)真珠養殖技術は公開しないこと
   (二)生産された真珠は全量を日本に輸出し、販売権は日本側が取得すること。
   (三)生産量は、品種別・形態別に一定の範囲内で行うこと。
  海外における真珠養殖事業の進出については、前項の三原則を堅持した場合においても、あこや貝を母貝とするものは認めないものとする。
 第二 海外における真珠養殖事業への進出は、相手国の政情が安定しており、かつ、母貝資源の実態が把握され、企業化の見通しが確実であって、国内真珠事業との競合が懸念されない場合であること。
 (適格性)
第三 海外における真珠養殖事業に進出しうる者は、次の各号のすべてに該当する者であること。
  (一)第一の三原則を守ることができると認められる者
  (二)真珠養殖事業について経験、信用および資力を有する者
  (三)斯業相互間の協調に積極的に努力する者 
  
(提携の形態)
第四 役務契約による提携を原則とすること。
 (生産計画)
 第五 生産品のサイズ別等の生産計画について必要な場合は指示することがある。

かつて真珠は貴重な外貨獲得手段であり、水産庁としても非常に重宝していたのかなーということが、この通達から読み取れるかと思う次第です。

まぁ、今となっては、これらの法令は廃止されたりしてる訳なんですが、真珠産業の背景にある法律や判例を知るとその当時の真珠産業の状況を知ることにも繋がるので、歴史好きという方はこういう方面から真珠に入っていくのもありかと思います。

真珠を観察するだけが真珠好きという訳じゃないと思うので、色々な真珠好きが増えたらなと思う英虞屋です(真珠標本を作ってる人間が言う事じゃないかもですが)。

それでは、また次回お会いしましょう!

※補足:冒頭で触れた真珠振興法に関することですが、その規定により各都道府県では『真珠振興計画』を定めることができるとなっています。

「自分の都道府県にも真珠振興計画とかあるのかな?』と気になった方は調べてみるのも面白いかと思います!(確か、三重県と兵庫県、長崎県は定めてたはず)

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