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みんなと私の『動機づけ面接』ーークライエントとの同行二人指南(13) 『俺は何にビビッてる?』


「…好きではないです」


これに対する、共感的な応答として


「好きじゃない」


という応答は、クライエント中心療法を学んだカウンセラーならよくやるだろう。とても自然な単純な聞き返しである。だがさらに優れた対応例について、前回挙げた。

それをもう少し詳しく、そのやりとりに至るまでの一連の流れを書いておく。実はテーマが不倫であった。


Cl:(涙)・・・。断る勇気を持てなかったです。男性の気持ちが離れてしまうんじゃないかって。自分でも本当に情けないです。
Co:回りからみれば、それはてめえの都合だよってことなんだよね。でも好きになったらそうなのよ。(複雑な聞き返し)


本当に複雑な聞き返しかどうか微妙な点もあるが、自然な対応だと思われる。さて、個人情報は守りましょうね。


Cl:多分ブレーキかけられるポイントがいくつもあったのに、かけられず。
Co:・・・・・・・・・今、ベツキーは好き?
Cl:・・・・好きじゃないです。
Co:・・・・・・・好きじゃない・・・・・・・。
Cl:・・・・好きではないです。
Co:あ、そう・・・・・。・・・・・・・・すっげえ好きだったんだね・・。


おっと、名前を出してしまった。


…下世話な芸能ネタが苦手な人がいるかもしれないが、公開された情報であることだし、なによりこの中居くんの対応が神だと業界では話題になったのでやはり挙げておいた。



アンビバレントへの共感

「やろう。いや、やめよう」これが両価性(アンビバレント)だ。チェンジトークと維持トークの両方が、一人の人間の中にはある。


相矛盾する思いを抱くこのアンビバレントに対して、どう共感するか?


1.  動機づけ面接において、共感は「聞き返し」によってなされる。

2. 動機づけ面接の最重要概念の章に述べたように、聞き返すのは維持トークではなく、チェンジトークのほうがよい。

3. だから、両価性(チェンジトーク+維持トーク)にはチェンジトークの聞き返しを!


うーん、これだと、アンビバレントなどという面倒な言葉をわざわざ出す必要もない。「維持トークではなくチェンジトークを聞き返せ」という原則を別の言葉で言い換えただけだ。



次の症例を考えてみよう。少年は、先輩たちが学校の中でピンチに陥っているとき、とある男に学校の前で「ここにいろ」と待つように言われた。たしかに死を恐れるべき状況であった。

一方、亡くなった祖父には「お前は強いから人を助けろ」と言われていた。


助けに行くか行かないかで葛藤をしている少年に、「ああ、おじいさんには人助けをしろと言われたと」と聞き返しをすることが、高い共感なのだろうか?

改めて「共感」という言葉のイメージを考えてほしい。


ちなみにこのケースの元ネタは、もうお判りかもしれない。他に「鬼退治の生活をするか否か」とか「海賊王になるか否か」といったアンビバレントで少しの間迷う人たちも有名である。ヒーローたちは、冒険物語のごく初期にアンビバレントを体験し、見事に乗り越える。

我ら凡夫はしばしばこのアンバレントに長く苦しめられる。


さて、どう共感をしたらいいだろう?


ちょっと今日は短めに、前回の種明かしと新たな問題だけを出して終わる。


2021/7/1 Ver.1.0


前回はこちら


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