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みんなと私の『動機づけ面接』ーークライエントとの同行二人指南(15) 『確かにね でもさ』

「何言う通りにしてんだ 俺は」


『呪術廻戦』の虎杖悠仁が、呪いを退治する生活に飛び込む直前の、葛藤シーンの独白だ。怖がって震えてもいる。アンビバレント(両価性)な状態の例として挙げた。学校の中ではなにやらとんでもないことが起きていることだけは判り、伏黒という少年に「ここにいろ」と言われて外で待っている。

亡くなったばかりの祖父からは

「オマエは強いから人を助けろ」

と言われたばかりであり、そのことがずっと気になっている。


この虎杖悠仁のアンビバレントに共感するならどんなことを言えばいい?

1. 「ああ、おじいさんには人助けをしろと言われたと」

2. 「怖くて震えてしまう」

どちらも聞き返しにはなっているが、2は維持トークへの聞き返しであるから動機づけるにはあまり好ましくない。じゃあ1がいいのではないか、ということになる。それについて疑問を呈したところで前回は終わった。次の対応はどうだろう?

3. 「人の危機を放っておけるようなキャラじゃないって、自分でも気づいてるよな」


隣に友人が立っていて、主人公を突き動かす一言は?と考えてみた。うん、「主人公の背中を押す脇役」の名ゼリフ、という観点で考えると、動機づけ面接というのはうまくいくかもしれない。




喫煙者の例を考えてみよう。タバコを吸っている人は「タバコを吸いたい」し「やめたい」。

じゃあ、そのどちらを共感するんだ、もちろんチェンジトークだ、いや手強いときは維持トークからのほうがいい、いっそ両方か?などと考えるのはすでに共感から離れて「聞き返し」という技術に走っているように思う。


「共感」というのは相手とともに、同じ絵を心に描くことである。その中でも、どう「感じ」ているかはとても大事なものだ。


嗜癖、ダイエット、治療するか否か、といったアンビバレントで迷う人たちは、とにかく苦しんでいる。相矛盾する思いに、引き裂かれているのだ。

共感をするのはそこではないだろうか?


「吸い続けると、お子さんの喘息を悪化させるかもしれないと。吸いながらも、そんなことをどこかで思っていて、後ろめたくはあるわけですね」


アンビバレントはある。そこの共感から始める。動機づけ面接はその相矛盾する思いのバランスを変える面接ではあるが、それをするためにはまずはアンビバレントを正確に理解することである。


(ちなみに『呪術廻戦』の「呪いを退治する生活に飛び込むか否か」というテーマは、呪術高専の入学面接でも問われる。ぜひ『呪術廻戦』をそういう目で読んでみては)


2021/7/8 Ver.1.0

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