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いつでもどこでも、歩けばそこがワンダーランド!『散歩する女の子①』 【マンガクロスボーダーvol.1】

ひたすら散歩するだけのマンガ、
それが ! こんなに !! 面白い !!!


『散歩する女の子』とは、Twitter上で連載されているマンガ作品である。講談社シリウス編集部が贈るマンガ発信アカウント、ツイシリにて定期更新中だ(2023年7月は休載、8月に再開予定)。Twitter上には作品の公式アカウントもあり、そちらでも読むことができる。

『散歩する女の子』、過去の掲載回が一度すさまじくバズっていたので、Twitter住人のマンガ好き各位においては「あーーーこれ知ってる!!」という人も多いのではないか。ここでひとまず、既読の人も未読の人もちょいと眺めてみよう。なぁに、すぐ読める、2ツイートで6ページの作品だ。クリック!


最っっっっっ高では ???


じゃあついでにちょっとこのへんも……



好き……


好きィ…………


好きィイイイイイイイイイイイイイ

こういう、こういう街中の、当たり前の景色の中に点在する妙、そこに気付いた瞬間から回り出す空想とひらめきのワルツ、止まらない知的好奇心は超特急、未知なる世界に思わず口元がにやけ時にはたまらなく興奮を覚える性癖を持つ人間たち!いるだろ!!わたしも!!!大好きだーーー!!!!



いやあ、何度読んでもたまらないこの味わい。
では改めて、『散歩する女の子』について語ろうぞ。

登場人物は、基本的に表紙のふたりだけ。
散歩好きの、穂ツ木(ほつき)にほ。
にほの友達、唯野(ただの)まよい。

ストーリーはタイトル通り、にほがひとりで、時々まよいがひとりで、それ以外はずっとふたりで、散歩する道中を描いていく。散歩。そう、決して車でドライブでも自転車でポタリングでもない。歩く速度で観測できる範囲だからこそ発生する、とっておきのレジャー体験。

例えば、コミックスの目次から引用すると、

・生命を与える散歩
・死んでる水飲み場を探す散歩
・剥がしアートを鑑賞する散歩
・街にある言葉で俳句を詠む散歩
・離れた街でしりとりする散歩
・RPGのキャラクターを探す散歩
・最高のおにぎりを食べる散歩
・手軽にご来光を拝みにいく散歩   etc…

一体どんな散歩なんだと興味深いタイトルがちらほら。アイデアひとつで日常の秘孔を突いて、身近な景色が色を変える。

例えばこの回とか↓


ウワーーーやってた!
この空想、わたしも幼き頃からやってたし未だにやってしまう。

我々が気付いていないだけで、日々そこら中のビルの上から上へと能力者は飛び移っているし密かに敵と戦っている。強い風が吹いたならそれに紛れて攻撃が放たれ、鳥がたくさん飛び立ったなら良からぬ存在が接近している合図だ。……といった空想が脳内デフォルト設定されてしまったのは、わたしの場合、完全に思春期にCLAMP大先生の『X』を読んだ影響である(先生続きはいつ世に出ますか)。


……と、そんなほのぼのとした平和な散歩回もあれば、突如SFに満ちた散歩が始まる回もある。

↑ この『街に擬態する虫』の回、すごくね??

いつものゆるい散歩モードかと思いきや急転直下でめくるめくSFの世界へ突き落とされ、ゾックゾクする。いやもう本当に身震いしてしまった。わずか10ページでこの読み応え、ストーリー展開、ほんわか可愛い絵柄から滲み出る不穏の匙加減、すごくね?????

『街に擬態する虫』、【世にも奇妙な物語】で実写ドラマ化してほしい。してほしすぎる。近年の【世にも〜】は短編マンガを原作とする物語が割と頻繁に発生してるので、可能性は存分にあるはずだ。頼むフジテレビ、頼むぞ講談社シリウス編集部……!!!

『散歩する女の子』は、散歩の新たな面白さを開拓する物語として稀有な存在だが、もうひとつ、重要な側面がある。

上記で引用した3つの回は、そこが顕著に表れていると思う。そう、にほとまよいの友情も、実に大きな物語の基盤なのだ。

にほは、まよいから「散歩の変態」と評されるレベルの散歩狂。そして、まよいは、にほの良き理解者だ。にほが持ちかける散歩のお誘いがどんなに素っ頓狂な内容であろうとも、まよいは否定せずに受け入れる。そして一緒に散歩を楽しみ尽くし、散歩が終われば心から次の散歩を待ち侘びる。時にはまよいの方からも散歩を提案し、にほと共に楽しむ。

ふたりの間には嘘も遠慮も駆け引きもなく、それでいて相手の発想や視点に対する敬意がある。何より、相手が楽しそうにしていることを嬉しく思う、純度100%の愛情を互いに持ち寄っている。その描写が至極ナチュラルで、読んでいてとても心地良く、愛おしい。

まよい「特別な友達って感じでいいね〜」
にほ「そういうのそのまま言うなよ〜」
まよい「そのまま言うよ私は」


最高最高最高オブ最高の会話。

「散歩する女の子』は、散歩の新発見物語であり女の子同士の友情物語でもある。どっちも美味しい、超絶ボリューミー満腹マンガなのだ。


連載媒体がTwitterなもんだから、いくらでも引用できてしまって歯止めが効かねえや。全話引用したいくらいだが、ここらでそろそろストップしよう。発売中のコミックス①巻には、Twitter上ではアップされていない描き下ろし2本&おまけページ大量&あとがきが追加され、大満足大充実。間違いなく幸せになれる内容だ。

作者のスマ見氏は、人気Webメディア【オモコロ】のライターさん。『散歩する女の子』の連載前に発表していたマンガ作品各種が、オモコロの個人ページにまとまっておるので、こちらも是非読んでみてほしい。

どの短編マンガも、『散歩する女の子』と根底に通ずるものがある。視点の非凡さと確固とした作家性、あまりに面白くて味わい深くて噛み締めてしまう。まじで全部傑作。


にほとまよい、ふたりの空想と好奇心にかかれば、見知った街は未知なる世界へと姿を変える。いつでもどこでも、ひらめきを手に散歩へ繰り出すのみ。

日常のそこかしこに、新しい世界は広がってる。この愉悦は気付いたもん勝ち。にほとまよいに触発されて、出会おうぜ!新感覚のときめきと。

しかも、年内には②巻が出るらしいぞ!
散歩ブーム来い来い。

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