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らっきょうの瓶 毎週ショートショートnote

「単純な事件だ。さっさと済ませて引き上げだ」警部補が誰にとはなしに怒鳴った。
事件当時はちょうど食事中だったらしく、食卓とその周りにご飯、みそ汁、秋刀魚が散らばっている。

犯人は父親と向かい合って食事をしていた長男と思われた。進路について話すうち、激高した父親が怒鳴りつけ、口論になった。長男は食べようと手を伸ばしたらっきょうの瓶を父親に投げつけ、家を飛び出したのだ。
父親の致命傷は頭頂部への一撃だったが、長男は父親のどこに瓶が当たったのかは知らないと供述した。

現場をつぶさに検証していて、ついに見つけた。壁に少々らっきょうの汁が飛び散っていた。長男の証言が本当なら、瓶の蓋は締まっていたはずだ。らっきょうの汁が飛び、らっきょう自体は落ちていない以上、瓶は半開きではなかったかと考えられる。

後日、家を出ていた内縁の妻が自首してきた。床に転がっていた瓶を取り上げ、中身を確めたと彼女は語った。それを夫の頭に振り下ろしたのだ。
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たらはかに さま
裏お題もよろしくお願いします。
ご無理をなさいませんように。


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